第9話沖田、病院へ行く
「いやあ、僕が車に乗るの一番乗りですか」
沖田は言った。初秋ではあるがまだまだ残暑が厳しい。沖田はポロシャツとジーンズ、本人たっての希望で下駄。
「無事に帰って来いよ」
土方が声を掛ける。大丈夫、大丈夫ですよと明るく返事をして祐介の運転するステップワゴンに乗り込んで行った。
「これは重度の結核ですね」
医師が診断した。即入院になった。
「祐介さん結核とは?」
「
小野田家では既に車に入院の準備が乗せてあり、こうなる事は明らかであった。
医師の言う所二カ月は入院し、服薬を続けないといけないとの診断だった。予め祐介は肺結核の入院施設を調べていて、このあたりは予想通りだった。
「沖田さん、現代では労咳は不治の病ではありません。しっかり養生して体力をつけて、お薬を飲んでください。きっと良くなります」
この好青年は池田屋事件の時、吐血をし、一気に症状が悪くなり、死亡する。歴史への干渉を決意した小野田家の最初のアクションだった。
「みんなと離れるのは寂しいなぁ」
流石に不安になったのか、沖田から珍しく弱気な言葉が出た。
「今度隊士の皆さんをお見舞いに連れてきますよ。医師の言う事を良く聞いて養生してくださいね」
あてがわれた個室を出て、小野田家に帰って来た祐介は近藤以下、隊士にやはり労咳で、二カ月の入院が必要と伝えた。その後祐介は書斎に入り、「新選組隊士図鑑」を開き、沖田のページを開いた。そのぺージには沖田が労咳で死亡するという記載が消えていた。沖田は新選組末期においても生き延びた、という事になる。
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