第3話差料

「成程あいわかりました」


チヨはそう答えた。


「貴方が新選組の局長、近藤勇だとするならばお見せ頂きたいものが有ります」


「それは何ですかな」


差料さしりょうを拝見」


近藤を名乗る男は床に置いてある刀に手を伸ばした。もし本物の近藤勇ならばその刀は長曽祢興里虎徹ながそねおきさとこてつである。チヨは刀装を見た。黒の鮫皮に包まれた鞘、意匠の行き届いた鍔、柄に目を配った。これほどの物は現代ではなかなか目にできない。鞘から刀を抜く。反り浅く新刀の作風。チヨは手際良く目釘を抜き、柄を取り外した。数珠刃、銘が飾り気無く長曽祢興里虎徹と彫られている。もう一度持ち上げ、刀身を眺めた。贋作がんさくが多いとされた虎徹ではあるが、これは間違いなく虎徹であった。


「はい、有難うございました」


刀装を組み立て男、近藤勇に返した。


「どう思われましたかな」


「間違いなく虎徹です」


「贋作など差料にするはずはないでしょう」


近藤は自信のある表情を浮かべた。


「少し席を外します。茶をもってきます。楽にしてください」


チヨは詩織に茶の用意を指示し、小野田家一同を居間まで戻した。


「ありゃ本物だよ、間違いない、見事な虎徹だよ」


どうしたものかねぇ、とチヨは言った。

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