赤いバラ
敷居麻衣
初日のお部屋
これは私が社会人一年目に体験したお話です。
今日から念願の上京。
東京駅の洗礼を受けながらもくたくたになりながら新居へ足を運ぶ。
ろくに下見もせずに決めてのは二部屋ある新社会人にしては豪華なお部屋。
その割には値段はそんなにせず、今までバイトでコツコツ貯めていたお金でも無理なく入居ができるところだった。
面白いことに、周りの部屋はここよりも家賃が高く田舎ではこういうことは滅多にないので田舎者に東京の事は理解できない。
ろくに下見をしてないせいか、疲れているはずの身体を休ませるよりもこの部屋を隅々まで見たいという好奇心に負け探索することに。
家賃が他より安い割には内装も特に問題なくとても綺麗でまるでリフォームしたばかりのようにも思える。
逆にそこが何かを隠そうという魂胆が見え隠れしており一層真っ白な壁が寂しく感じられた。
そう、何時間も探索をする程元気は残っておらず数十分もしないうちに眠気が襲い東京の友達に頼んでおいて運んでもらったベットにそのまま寝そべる。
東京の洗礼に真っ向からぶち当たった身体は思いのほか疲れていたようで数分もかからないうちに意識は天井から遠のいていった。
はずだった、しばらくしたら意識は朦朧ながらも眠りから遠のき現実と夢の間。
少女はいた。ぼんやりとしておりシルエットしかわからないが背丈が小さい
その子が私に向かってずっと囁く、囁く。
「赤いバラください。」
「一輪だけでもいいから。」
怖いのか、驚いているのか今の自分の感情がわからない。
それでも、目の前の少女がとても気になる。
見ようにも意識が朦朧で現実なのか夢なのかさえ区別がつかないほどに。
赤いバラを求める少女は明け方カーテンからほんのわずかな光が差し込むあたりになったら自然と消えていった。
赤いバラ 敷居麻衣 @shikiimai
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