第6話 夜凪景のその後を君は知りたいのか①
2023/02/25
第6話 夜凪景のその後を君は知りたいのか①
アクタージュの、夜凪景に、私が似ている、と気づいたのはいつだろう。
あまりにも共通点が多すぎる。
あの話は、本当だったんだな、と思ったんだ。
つまり。
水戸でしか活動したことがないわたしが。
東京でも知名度を得ていたと言う話である。
もう舞台に、正確には第一線から退いて20年以上経つので、さすがにもう私の声覚えている人もいなければ、私の演技を見た人もいないと思うので、そういった前提でこれから書く。
もしわたしが、17歳でデビューしていたら。
夜凪景と同じ年齢で、デビューしていたら。
もし大人になってからデビューしていたら、ある程度分別がある歳から、年齢から仕事していれば。
子役になるじゃなかったと、一瞬、いや、子供の頃から舞台に立っていないと生きていられない。
稽古場じゃないと、居場所がない。
家族もいなくて、友達もいなくて、別に私がいなくなっても、誰も困らないという前提条件で生活していたので、もしも演劇がなければ、私はとっくの昔にこの世にいない稽古場じゃないと、居場所がない。
家族もいなくて、友達もいなくて、別に私がいなくなっても、誰も困らないという前提条件で生活していたので、もしも演劇がなければ、私はとっくの昔にこの世にいない。
演劇は、不要不急だと、誰もが言うが、それは自分みたいに、演劇なしでは生きられない人間がいるってことを考えないで、そんなことを簡単に言えるんだろう。
上級国民と言うやつは、いや、演劇を見ないでも芝居見ないでも生きていけてある奴がいるんだろう。世の中には。
私にとって、演劇は生きる希望だし、それは死ぬまで変わらないし、立ちたいから芝居をするのであって、たとえファンが誰もいなくても、爆撃で命が危なくても、役者だろう、演じるのは止められないと私は思う。
文化大革命で演劇は死んだか。
ペストで役者は死んだか。
応仁の乱で、能は滅んだというのか。
風姿花伝が、なんでいまだに残っている。
シェイクスピアの台本は、誰が守ったんだよ。
広島の原爆で、劇団員を亡くした、俳優が亡くなったことを知ってるんだろうか。
満州で、旅公演をおこなった歌舞伎役者は?
道頓堀の下に沈んでいる役者が何人いると思ってんだ。
なんで役者が今、道の真ん中を堂々と歩けるのか考えて欲しい。
本来であれば車の1番そば、1番危険な場所が、役者の場所であって、日の当たる存在でも何でもない。
そういったことを伝える人間が、20世紀末とか、昭和の頃にはごろごろいたが、そういった連中が全員墓場の下に潜っているので、いちいち伝える必要があるのかと思うと気が滅入る。
14歳で、わたしは、
稽古場で、最下層に落ちた。
今でもはっきりと覚えている。
今から、20年以上前、異常なことは、分岐点、気がつけば、世界は、変わっていた。
チケットノルマが正義となった。
売れれば正義。
売れなかったら、それは、役、セリフが削られることを意味した。
23年前、わたしは子供で、世の中の流れに、潮目が変わったことに気づかなかった。
握手会、というものが。
金さえ払えば、芸能人と触れ合える時間が買える時代が、やってきた。
つまり、コミュニケーション能力と、いつでもニコニコ、ロボットのように機械的に笑える人間を、大衆が求めていることに、わたしは気づかなかった。
その頃、わたしは、舞台の神様に誓った。
厨二病ってやつ?
だから、それから、
誰とも付き合いません、
あなたと結婚したから、
誰も好きになりません。
だから、芝居が。うまくなりますように。
でも、ダメだった。
当たり前だ。
舞台の神様に誓ったのに、
好きな男の子ができたのだから。
罰は、思いもかけない形で、やってきた。
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