京大入試と2つの解法
数学研究部ではこれまで京都大学、東京大学、大阪大学、灘中学、開成中学などの名門大学、中学入試問題を解いてきた。東大のn乗数問題は証明が不十分だが難易度的に完璧を目指すのは諦めた。
「安藤、ちょっといいかい」
ふいに成宮に呼ばれた。今日も大学入試解いてるんだろうな、この過去問マニアは。
「どうした」
「この問題、解いてみてくれないかい? 答え合わせがしたいんだ」
「解答見ればいいだろ」
「そう言わずに……もしかして自信ないとか?」
こんな軽い挑発に乗るほど俺は短気ではない。ただ、問題の内容は気になる。
「どんな問題だ」
成宮はスマホをスクロールさせて問題を見せた。今回は京都大学か。
自然数a、bはどちらも3では割り切れないが、
「これ、難易度はどれくらいなの?」と愛華。
「5段階で評価すると3かな。難関大の入試では標準的だと思う」
「基準がよくわからない……」
難しいか否かは置いとくとして、まずは
a、bはどららも3の倍数ではないから、a+bと
a+b=3のときに考えられる組は(1,2)と(2,1)だけ、
「和人、どこまで進んでる?」
「ちょっと待て。今考えてる途中だ」
「進捗状況だけでも教えて」
俺は面倒だと思いながらも問題を解く方針を簡潔に説明した。
「なんでaとbが3の倍数じゃないから、a+bと
「それはない。もし
「あ、そっか。だから3の倍数なんだ」
「そういうこと」
a+b=3のときに解がないことは確認済み。次はa+b=9の場合を考える。
「a+b=9のとき、考えられる組み合わせは(1,8)、(2,7)、(4,5)、(5,4)、(7,2)、(8,1)の6組ある。(1,8)、(2,7)、(4,5)と(5,4)、(7,2)、(8,1)はaとbを入れ替えただけだから実質同じだ」
「(3,6)と(6,3)は?」
「問題をよく見ろ。『a、bはどちらも3では割り切れない』って書いてるだろ」
「あ、そうか」
候補は6組だが確かめるのは最初の3組だけでいい。
a=1、b=8のとき 1-8+64=57
a=2、b=7のとき 4-14+49=39
a=4、b=5のとき 16-20+25=21
よって、どの組も題意を満たさない。結果をノートにまとめる。
「おっ、結構進んでるっぽいね。ラストスパートって感じ?」
「まあな」
a+b=27のとき、
候補は(1,26)から(26,1)までの26組。さっきと同じ考えで行くと確かめるのは(1,26)から(13,14)の13組……違う。(3,24)、(6,21)、(9,12)、(12,9)が含まれているから計算するのは9組でいい。さっきは3組だからまだよかったが、これは計算量が多すぎる。
さっきの結果を見ると、2数の差が小さくなるほど
a=13、b=14として、
1+8+3=12より、183は3の倍数。
「はい。終わり」
「もう解けたとか早すぎ。あっ、成宮君はどうだったの?」
「値は一緒だよ。でも、解き方が微妙に違うね」
「どういうことだ?」
もしかして因数分解せずに解いたのか? 因数分解せずに解くのは遠回りのような……。
俺は成宮にノートを見せてもらった。確かに式が違う。俺は
「基本的な考え方は安藤と同じだよ。でも、僕は計算をほとんどしていない」
「なんで」
「式を見ればわかるさ。
「ちょっと待て。余りが同じなら81の倍数でなくても式は成り立つだろ」
法を81として、 (a+b
「ごめんごめん、説明を
「ああ。
「じゃあ、a+b=3として考えると、
なるほど。上手く考えたな。a+b=27ならば(a+b
「あとはabの値が最も大きい(a,b)の組を見つければいい」
「え、どういうこと? 求めるのは最小の組でしょ」
「求めるのは
「あ~、なんとなくわかったかも」
あとは(1,26)から(13,14)までの9組を計算すればいい。いや待て。成宮はほとんど計算をしていないと言ってたな。冷静に考えたら9組も計算して確かめるのは効率が悪い。
例えば、a>bとして2数の差がk(kは自然数)のとき、b=a-kよりab=a(a-k)
問題は解けたのになぜか悔しい。まさか成宮の奴、この解答を見せるために俺に問題を解かせたのか? あとで本人に訊いてみるか。
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