第6話 魔物駆除(2)

 俺は王国のギルドから引き受けた魔物駆除の為に、引き続き魔物を倒して行く。


 次に倒すべき魔物は……。片っ端から関係の無い魔物に気付かれないように分析を掛けて行く。


 そこでまた一つ。スケルトンナイトより、いや、ここ周辺の中で最も強い魔物だろう。レベルもそうだが、スキルの多さが格が違いな魔物が引っかかった。

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名前:ローグハンター【大剣タイプ】

Lv:55

スキル:

・筋力増加【Lv46】

・攻撃力上昇【Lv51】

・忍耐力【Lv48】

・攻撃速度【Lv40】

・攻撃範囲【Lv45】

・魔力解放【Lv20】

・抵抗力【Lv25】

・狂化【Lv5】

・逆境の境地【Lv2】

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 うわぁ……また新しいスキルあるよ。サポート、狂化と逆境の境地って何?


『【狂化】とは、自身の怒りを暴走させ、一時的に全てスキルレベルが擬似的に二倍に跳ね上がります。

 【逆境の境地】とは、体力が一定以下まで低下した時、【狂化】と同じ効果で、此処では実質的にスキルレベルが跳ね上がります』


 いやいやいや、此処から二倍って、特に【攻撃力上昇】とか100超えんじゃん……。これ、マジでやべえぞ?

 それにそもそもコイツ魔物じゃねえ! 人間だ……!


 アイツは倒すべきなのか? ローグハンターとは書いてあるけど……。


 そうして俺はローグハンターを視界に入れながら倒すべきか悩んでいると、ローグハンターが俺の事を見つけたのか、突然叫び襲って来た。


「うおおおおぉ!!」

「だぁーっ、やっぱり魔物と変わんねえ!」


 ローグハンターは、大剣を軽々と片手で持ち上げると、俺に向かって振り下ろす。

 俺はそれを真横へローリングして避けるが、避けた大剣は俺のすぐ横の地面を容易に裂いた事に少しビビる。


 嘘だろオイ!? 俺の力も大概だけど、大剣一つでこの威力かよ!


「俺の邪魔をするなぁ!! お前も殺す!!」


 こうなったら俺も武器で対応しないとなぁ! ずっと使って無かったけど、一応鉄剣は持ってるんだよぉ!


 俺は自身にスキル【移動速度】と【攻撃力上昇】を掛け、鉄剣の切っ先を真っ直ぐローグハンターに向けると、勢い良く地面を蹴り、突進する。


「オラァァ!!」


 ローグハンターはその攻撃を避けようともせずに、真正面から俺の鉄剣をまともにくらい、剣は深々とローグハンターの腹へ刺さる。

 しかしローグハンターは呻き声一つも出さず笑って見せる。

 すると、ローグハンターは、片方の素手で俺を突き放すと、すぐ様大剣を俺の腹に貫通させる。


「ぐはっ!」


 痛ってえええええぇ! 【忍耐力】じゃあ抑え切れないっ!

 俺はぐさりと腹に刺さった大剣を抜かれないように必死に押さえ付けるが、ローグハンターは、俺の腹に刺した大剣を引き抜こうとはせず、上へ持ち上げ、後方へ、地面に叩きつける。

 先程の地を裂いた大剣の一撃が、背中から全身に、尋常では無い痛みが走る。

 そこからローグハンターの更なる追撃。地面に叩きつけられた俺が起き上がる前に、大剣を更に深く、抜けない様に俺の腹を貫通させながら、地面へ突き刺す。


「ぐあああぁぁっ!!」


 畜生おおおぉ! この世界に来てから、こんな痛みを味わうなんて!

 俺はこの時に無意識に【獣の咆哮】を発動する。


「こんな物おおおお!!」

「……!? ぐううぅ……」


 そして俺は【魔力解放】を発動し、拳に氷を纏わせ、仰向けの姿勢のまま俺の腹に地面まで貫通した大剣に向かって、一発殴る。

 その一撃で大剣は一瞬にして刃が凍り、更にもう一発。

 鉄の大剣は、真ん中辺りで勢いよく折れる。


 そして【攻撃力上昇】で腕力を上げ、両手で大剣の刃を挟む様に掴む。


「このやろおおおお! こんな物で、俺がああああぁ!!!」


 俺はゆっくり、ゆっくりと折れた大剣を腹から引き抜いて行く。

 滅茶苦茶痛いけど! こんな所でのたれ死んで居られねえんだよおぉ!


 そうして遂に俺の腹から大剣を自力引き抜き、腹に大穴が空いた状態でよろよろと立ち上がる。


「はぁ……はぁ……はぁ……!! 死ねええええええぇ!!」


 俺は引き抜いた大剣の刃を拾うと、思いっきりローグハンターに向けて、槍投げの要領でぶん投げる。

 槍は真っ直ぐローグハンターの頭、眉間に命中。刃は完全にローグハンターの頭を貫通した。


 ……。

 終わったと思った。が、いつまでもレベルが上がらない事に俺は嫌な予感がぎる。

 まさか、まだ生きているのか?

 

「ゔっ……! ゔぅぅ……」


 ローグハンターは倒れた姿勢のまま、頭に大剣の刃を貫通させたまま、呻き声を上げる。

 そして……突然叫び出した。


「ゔうぅ……ゔあ"あ"ああぁぁ!!!」

「まだ生きてんのかよ!?」


 ローグハンターはのっそりと立ち上がると、頭に刺さった刃を軽々と引き抜き、体に真っ赤なオーラを纏わせる。

 俺はこれが【逆境の境地】であると確信した。


「コロス……ぶっ殺すううぅ!! ああああああ!!!」


 俺は咄嗟に分析を一瞬だけ掛けると、スキルレベルが二倍に上がっている以上に、まるで全く違う生き物である事が分かった。

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名前:ローグハンター【大剣・狂化】

Lv:110(×2)

スキル:

・筋力増加【Lv92】

・超攻撃力上昇【Lv2】

・忍耐力【Lv96】

・攻撃速度【Lv80】

・攻撃範囲【Lv90】

・魔力解放【Lv40】

・異常効果無効【LvMAX】

・逆境の境地【発動中】

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 本体のレベルも二倍になってんじゃねぇか! こんなの勝てんのか!? でも勝てばレベルが……。

 っていうか、死ぬ!!! 腹に穴空いてるし!?


 分析で人間だったローグハンターが化け物に変わっていた事に勝てる自信をなくしたが、それ以前に腹に大穴が空いていた事を俺は思い出し、また激痛が襲ってくる。


「がぁはっ!? ああああああぁ!!」


 血の塊を口から吐き、腹を抑えようにも、抑えようとする手が空を切る事に叫ぶ。

 回復魔法とかが有ればとこんな時に思う。

 ただ、こんな大怪我をすれば普通は死んでる筈。なのに暫く時間が経っても、気を失う様な感覚は無い。


 恐らく決してダウンを許さない【忍耐力】が関わっているのでは無いかと考える。

 ただ何故高レベルの【忍耐力】を備えているローグハンターが頭貫通の刃を食らって、生きているのにぶっ倒れたのか。

 まぁ、普通に考えるに100%を負ったからだろう。

 

 じゃあ俺は死ぬ程のダメージじゃないってか? ハハハ……。

 これが早く死にたいって気分かあああああ!!!

 なんなら死ぬ気で戦うしかねえええ!!


 俺は【魔力解放】を発動し、全身に電撃を走らせる。そして【移動速度】と【攻撃力上昇】を掛けてから突進。

 その突進は今までの突進より速く、正に雷の速さだった。


「うおおおぉ!!」


 突進から正拳突き。ただローグハンターの【忍耐力】はその一撃で怯みさえも許さなかった。

 が俺はそこから何度も、雷の力を利用して高速で殴り続ける。


「このやろおおおお!!」

「ウガアァアア!!」


 一切怯む気配のローグハンターは痺れを切らしたのか、俺の頭部を掴みそれを静止する。


「あがっ! あああぁ!!」

「ウウウウ……ウガアァアア!!」


 ローグハンターの頭を掴む力は急激に強くなる。【超攻撃力上昇】を使ったのだろうか。俺の頭がミシミシと鳴るのが分かった。

 俺はその腕を掴み返し、腕の中に電気を通す。俺の体とローグハンターの全身に電気が流れるが、ローグハンターの【異常効果無効】はそれさえも防いだ。


「てめぇも……俺と同じにしてやるよおおおぉ!!」


 俺はその状態から更に【魔力解放】を発動し、雷の力を強める。重ね掛けすればスキルレベル関係無く倍々になると考えた。

 俺とローグハンターを纏う電気は更に更にと強まっていき、遂にローグハンターは呻き声を出し始めた。


「ウ、ウウウウ……」

「ううおおおぉぉ!!」


 俺はその呻き声を聞き逃さなかった。スキルの重ね掛けは通用するのだと。一筋の勝利の光が見えた。


 それから何度も何度も【魔力解放】を重ね掛ける。


 そして……ローグハンターに雷が落ちる。


「ッ!? ガアアァァァ!!!」

「死ねええええええ!!」


 その雷撃は、ローグハンターの全身を燃やし、痺れさせ、斬り裂く。

 まるで紙吹雪の様に血と電気が混じり合い、吹き飛んだ。

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インフレ率がめっちゃ高いのに敵が強すぎる件 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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