第5話 魔物駆除(1)

 さて、ギルドから王国周辺の魔物駆除を引き受けた訳だが、魔物は勿論リザードマンだけでは無い筈だ。

 囲まれない内にさっさと一体ずつ撃破しよう。

 どうもこの世界の敵は強い。いや、めっちゃ強い。この世界の人達が平然と戦えるのも不思議なくらいに。

 だから、今の俺に二体以上の魔物を同時に相手できる自信が無い……。


 一体目のリザードマンを撃破後俺は、Lvが1265にまた一気に上がった。そして新スキルまで習得。ここまで一気に上がると新スキル習得条件が、レベルなのか俺の行動なのか判別が付かない。まぁ、この先もきっと同じだろう。


 俺は先ず強そうな魔物を分析から選び、先に倒そうと思う。強い魔物を倒せば漏れなくレベルが急激に上がる。

 と言ってもレベルアップの実感が無い程に敵が強いから、楽になるなんて分からないけど、少なくともリザードマンよりウルフの方がレベルが低く弱い。つまり気持ち楽に倒せる筈。

 だから、先にレベルを上げておけば何かと後処理が楽になるかもしれないからだ。


 魔物達は基本近づき過ぎないのと、こっちから攻撃を仕掛け無い限り、襲って来ない。

 それを頭の隅に置いといて、俺は視認可能な魔物を片っ端から分析して行く。

 そこで、リザードマンより一つ上の魔物を見つける。

──────────────────

名前:スケルトンナイト

Lv:34

スキル:

・攻撃力上昇【Lv32】

・剣術【Lv28】

・忍耐力【Lv50】

・不死体【Lv8】

・抵抗力【Lv20】

──────────────────

 なんか俺の持ってるスキルに似てんな。と言っても本体レベルとスキルレベルの差が意外とバランスが良い。

 ただ、忍耐力がほぼ俺と同じ。ダウンし辛くなると言うスキル。つまり、リザードマンの様に馬乗りは望めないって事だ。


 さて、俺の分析レベルも15だ。相手のスキル効果くらい分かるんじゃねぇの? てかサポートに聞いてみるか。

 この不死体ってスキル何?


『スキル【不死体】とは、身体が粉々に砕けても何度でも復活可能です。スキルレベルによって復活時間が異なります』


 復活回数じゃなくて時間に関係するのか……。うむ。なかなか厄介な相手だ。復活不能になるまで粉々に砕けば……?


 じゃあ行くか! 実戦あるのみ!


 俺は相手を決めると、早速スキル【移動速度】で超高速に助走を付けると、強烈なドロップキックをスケルトンナイトの頭部目掛けてかます。


「カカッ!?」


 骸骨だから当然なのか、筋肉の無いスケルトンナイトは、頭に被せた鉄製の兜ごと、頭が吹き飛ぶ。そして俺は追撃。首が吹き飛んで防御が皆無になった首の断面から、身体を縦真っ二つにするべく、手刀打ちを繰り出す。

 しかしあくまでも人間では無いスケルトンナイトは首の無い状態でも上半身動かす事は可能で、片手剣でそれを受け止める。


 ガキイィン! と金属音が鳴り響くが剣自体は折れる気配は無い。

 俺の手刀とスケルトンナイトの片手剣が鍔迫り合いになる間に、スケルトンナイトは俺に蹴りをかます。

 スキル【攻撃力上昇】のおかげがそんな蹴りだけでも俺は一気に後退してしまう。


「チィッ……!」


 だがその程度で俺は諦めない。リザードマンの様に鋼の剛体を持たないスケルトンナイトは、鎧という防具を着ているが、それだけでは弾く事は出来ない。

 こちらはそれを壊して仕舞えば良いのだから。


 俺はスケルトンナイトの蹴りによって退かされると、すぐ様地面を蹴り付け、手の平を真っ直ぐ伸ばした手刀状態で、【移動速度】を利用した一点突きをする。

 スケルトンナイトは、その一撃で思いっきり後ろへ吹き飛ぶが、吹き飛んだだけにスキルの【忍耐力】は、ダウンを許さずに綺麗に着地させる。

 それによって、吹き飛ばされた頭部に近づけた事でスケルトンナイトは頭部を自分の首にくっ付ける。


 あれほどの一撃をくらっても、鎧には傷一つ付かない。スキル効果には装備の強化もあるのだろうか? それとも、鎧がただ硬いだけ?


 んー、硬い。忍耐力もあるけどただ硬い。魔法は撃てないの? ステータスに魔力って見えるんだけど。


『魔力は魔攻撃の威力を示します。魔法という概念もありますが、現在の貴方は魔法を習得していません。物理攻撃に魔力を込めてみましょう』


 いや、そう言われてもだな。どうやれば良いのやら。


『魔攻撃は、スキル発動と同じ方法です。感覚次第で発動します』


 感覚ねぇ……。


 俺は言われた通りに、感覚的になんとなく発動してみる。先ず【攻撃力上昇】で力を込め、【魔力解放】で魔力を拳に纏わせる。

 そして燃えろと念じると、その結果は表れた。拳が激しい炎で燃え始めた。

 不思議と全く熱くない。これが魔攻撃の元だろうか。


 俺はその力を信じて、もう一度スケルトンナイトに突進、ガードされる事を想定しながらそれを無視して、ストレートに胴体に殴り掛かる。

 予想通り、スケルトンナイトは俺の攻撃を片手剣の腹で受け止めようとする。


「カタカタ!」

「燃えろ!」


 骸骨は火に弱い。RPGでは骸骨タイプは火か光に弱いという俺の偏見があった。恐らく此処でも有効だろうと考えてでの炎攻撃だ。

 拳と刃が勢い良く衝突する。

 すると、俺の拳からは爆炎を撒き散らし、一瞬にしてスケルトンナイトの身体を包み込む。


「こんにゃろおおおぉ!」


 俺はそこからスケルトンナイトの鎧にしがみ付き、更なる追撃をする。

 爆炎は更に激しさを増し、次には俺をも巻き込む。


「カタタタ!」

「このまま灰にしてやるよおぉ!!」


 最初は爆炎、次に火達磨、そして俺の炎は火柱となって遂にスケルトンナイトの骨が欠け始める。

 完全に燃え尽きるまでそう時間は掛からなかった。暫くすると鎧もドロドロに溶け、骨はサラサラな灰と化していた。


『レベルアップしました!』

──────────────────


Lv:1810

称号:魔物狩りのサラリーマン

攻撃:1670

防御:1720

敏捷:1450

魔力:500


スキル:

・移動速度【Lv69】

・攻撃力上昇【Lv64】

・忍耐力【Lv58】

・攻撃範囲【Lv60】

・魔力解放【Lv16】

・分析【Lv19】

・獣の咆哮【Lv30】

──────────────────

 うぉっ、獣の咆哮が飛び級したな。というか、分析と魔力解放だけ他よりなんでこうも成長し辛いんだ?


『魔力解放は、魔力の上昇量によって上がる速度が決まります。更に強い魔物を撃破し、更なる急激な成長があれば、格段に上がるでしょう。

 分析は、貴方の知識欲が関わります。知りたいと思えば思うほど、分析レベルの上昇はそれに応えてくれるでしょう』


 魔力解放は分かったけど……分析は知識欲!? やっぱりスキルレベルの上がり方は俺の行動にも移ってたんだなぁ……。


 まぁ、今のところ無理して戦う必要も無いし、知りたい事も特に無いし、いつも通りにやるかぁ。


 俺はこうして次の魔物を探す。

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