【ここだけのあとがき】池梟リョーマ


橙乃ままれ先生の小説『ログ・ホライズン』。

この一月からアニメシリーズ新作も放送される予定。まさに大ヒットシリーズです。

この本に収録されているのは、そのスピンオフ小説。

物語の大枠として、ソーシャルゲーム版の一部シナリオを参考にしていますが、それはあく

まで下敷き。ですので読者の皆さんには、ゲームのことは置いておいて、『ログ・ホライズン』シリーズの新作小説として読んでいただければと思います。

そのうえで……。


こんにちは。池梟リョーマと申します。

ゲームのシナリオなどを製作するエルスウェアという会社に所属しており、ソーシャルゲーム『ログ・ホライズン 新たなる冒険の大地』をはじめ、あれやこれやのゲーム、オーディオドラマ、アニメ、で文章を書いています。

僕がソーシャルゲーム版『ログ・ホライズン』に携わるようになったのは、二〇一五年の下半期頃からです。以来、ゲーム内のシナリオを他のライターさんとともにまとめたり、あるいは自分でつくったりといったことをしています。

多くの設定をもつ『ログ・ホライズン』のシナリオ作業は、一筋縄ではいかず、とくに滑り出しの頃は苦労の連続でした……いや今も現在進行形で苦労してますケド……。

でも、おかげさまでユーザーの皆さまや監修の桝田省治さまから後押しをいただき、こうして小説版を書かせていただける運びとなりました。正直、この仕事については裏方のつもりでしたので、こうした機会をいただけたのは望外の喜びです。

お話をいただいたときは、本当にびっくりしました。

人生、なにがあるかわからないものですね!


さて、小説版が出ると決まってから、まずTwitterで「小説化してほしいシナリオ」

を投票するアンケートが行われました。そうして人気のシナリオをリストアップし、一冊の本にまとめるためにさらに厳選されたのが、本書の四編です。

表題作「新たなる冒険の大地」の下敷きとなったのは、「悠久の英雄」という題名

のイベントです。ゲーム製作では話のネタだし、プロット作成、シナリオ作成を別の人が行うことがよくありますが、このシナリオについては僕が終始一貫して手がけました。そのうえ、まさか自分でノベライズすることになるとは思いもしませんでした。

イベント「悠久の英雄」は直継が主役をはる物語でした。いえゲームにはゲーム版のプレイヤーキャラクターがいるわけですが、「…………」しかしゃべらない性別不詳の寡黙な人物。この話では見せ場も直継に譲っています。しかし小説化するにあたって、この無言の傍観者を、本当の意味での主人公に仕立てなおすことになりました。これは当初の予想以上の難題でした。おまけにゲームシナリオはシステムあってのものですから、あらためて小説になおすとなるとなかなかうまくいかず「この話、誰がつくったの!?僕だった!?」と頭を抱えてしまったり……。

そうした七転八倒の末、「ギルメンが意思を代弁する」「性別不詳の人物」という属性を踏まえて産まれたのがユーマという主人公です。ちょっと内気な上、ピンキーに対する態度は内弁慶気味ですが、きっといい子です。ルックやツガルMUSIC♪といったゲーム生まれの兄弟姉妹ともども、『ログ・ホライズン』の仲間として、皆さまに受け入れてもらえればと願っています。

他の三編につきましては、ゲーム版でも執筆していただいている大ベテラン、木村航先生にノベライズをお願いしました。キャラクターを主軸にした短めのエピソード、サイドクエストの中からチョイスした軽快な物語。表題作とは異なる〈冒険者〉たちの日常を、楽しんでいただけるのではないかと思います!


最後に謝辞を。本作に対する自分の貢献は、わずかなものと言えます。

もうひとりの著者である木村航先生。物語を素敵なイラストで彩ってくださった尾崎智美先生。原作の橙乃ままれ先生。いつもゲームシナリオに対して厳しいご指摘をくださり、またこの得がたい機会を与えてくださった桝田さま。遅れまくり修正しまくりの原稿を待ってくださった長瀬さま、F田さまと編集部の皆さま。ソーシャルゲームをつくっています株式会社Azitoの皆さま。僕とともにゲーム版の膨大なシナリオ作成に挑んでくれているエルスウェアの仲間と歴戦のライターたち。なにより、ここまで『ログ・ホライズン』を、そして『新たなる冒険の大地』を応援してくれたファンの皆さま―!

本当にありがとうございます。


本書に収録された物語は、ソーシャルゲーム『ログ・ホライズン 新たなる冒険の大地』に実装された星の数ほどのシナリオの、ほんの一雫にすぎません。その数は今も増えつづけているのです。ぜひゲーム版も、遊んでみてください。そこでは、波乱万丈な冒険の数々が、あなたを(そう、主人公はユーマではなくあなたです)待ちうけています!

皆さまの心の本棚に、僕たちのつくった物語も置いていただければ、幸いです。


〝おうちでオンセなこのご時世、オフセも遠くなりにけり〞池梟リョーマ



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