【新たなる冒険の大地】サーバーに宿る幻想④

  雪化粧の木々のベールの向こう側からは、メリメリという破壊音が響いてくる。〈星を見る獅子竜イカロスザウルス〉の巨軀きょくが、かなりの速度で這い進んでいるのだ。向かっている方向はボク

たちの馬車とほとんど同じ。けれども、距離が縮まっている様子はない。

「止まらないし、曲がらない。トワまで一直線だね。偶然じゃなくて、本当にトワが狙いなのかも」

 シロエさんが推測を述べる。

「寄り道してくれれば楽だったんだけどね。まずいね、町につくまえに追いつけないかもしれない」

「そんな、町のみんなが !?」

 コレットが悲鳴をあげる。ボクはシロエさんに尋ねた。

「……どうします?」

「そうだね……」シロエさんはすこし考えてすぐに結論をだす。

敵愾心ヘイトを稼げば、こっち向くんじゃないかな?」

 敵愾心ヘイト

 それは〈エルダー・テイル〉をはじめ、多くのMMO–RPGで採用されているパラメーターだ。

 モンスターは〈冒険者〉から攻撃や特技を受けるたびに、敵愾心ヘイトと呼ばれる数値を蓄積していく。そしてもっとも「憎んでいる相手」を優先的にターゲットとするのだ。

  この敵愾心ヘイトの管理こそが〈エルダー・テイル〉における戦術の中核だといえる。たとえば考えてみてほしい。もし防御力が低く、HPヒットポイントも少ない後衛職がうっかり高い敵愾心ヘイトを稼いでしまったらどうなるか。モンスターはパーティーの弱いところに次から次へと押し寄せ、戦線は瓦解してしまうだろう。そんな悲劇をふせぐためには「積極的に敵の敵愾心ヘイトを稼ぐ、頑丈な壁役」が必要となる。こうした壁役を、MMOでは一般的にタンクと呼び習わす。

 このタンクにもっとも適した職業が〈守護戦士ガーディアン〉。直継さんのメイン職業だ。

 しかし……。

「俺の特技構成は前衛なんだ。〈タウンティング・シャウト〉での挑発は十メートルまで近づかなくっちゃなんねぇ」

 直継さんは、そう難しい顔をする。

 敵愾心ヘイトを稼ぐのは〈守護戦士ガーディアン〉の仕事だ。けれど直継さんの特技構成は近接型。十分な敵愾心ヘイトを稼ぐには、近づく必要がある。でもここからボクらが全力疾走しても、やつがトワに到着するほうが早そうだ。これではまったく意味がない。

 そんなボクたちの懸念けねんなど、シロエさんは百も承知だった。

 迷わず解決案を提示する。


「この場合、あいつの足さえ止めればいいんだ。僕とピンキーさんが〈アストラルバインド〉で移動阻害をかける。直継はそのあいだに近づいて、敵愾心ヘイトを稼いでくれればいい。それだけでトワへの侵入はふせげるはず。あとは撃破役であるユーマの仕事。どうかな?」

 異論があるはずもない。全員でうなずいた。

 その時、急に世界が明るくなった。

 疾走をつづけた馬車が、森林地帯をぬけたのだ。

 頭上の枝葉がなくなって、視界が広がる。

 ボクらの前方に広がるのは、一面の麦畑だ。

 麦畑を抜けた向こう側は、地面がせり上がり、ティアストーンの連峰へとつづく。その斜面に、西洋風の建築物が数百戸はりつき、市街地を形作っている。ボクらの目的地、トワだ。ちょうど昼時だからだろうか。切妻屋根の煙突からは、幾筋もの煙があがっている。

 ボクたち日本人にとってはいかにも異国情緒を刺激される、ファンタジーな光景だ。だけど、その光景をのんびりと堪能たんのうしている暇はない。

 市街地外縁に広がる麦畑を蹂躙|じゅうりんしながら、怪物は一直線に町へと向かっている。

 トワまでの距離は七百メートルといったところだ。やつが辿り着くまで、そう猶予ゆうよはない。

 カンカンカンカン!

 けたたましい鐘の音が響きわたる。おそらくトワの非常警報。彼らも怪物の接近に気づいたのだろう。町の中であわただしく人がうごめいているのが遠目にもわかった。

「コレットさん。馬車はこのまままっすぐ街道をすすんで。だいじょうぶ、モンスターはこっちでひきつけるから」

「は、はい!」

 シロエさんが御者席に声をかける。

 コレットが力んでこたえ、震える手で手綱たづなをにぎる。

「ユーマ、しっかりやりなさいよ。キミがこのパーティーのダメージディーラーなんだから」

 そう言って、ピンキーはボクの肩を、こつんと杖で叩く。同時に移動補助魔法〈オーバーランナー〉がかかった。太もものあたりにぴりっと静電気のような感覚が走り、筋肉が張る。視界の隅に、長靴マークが浮かびあがった。これが消えるまでのあいだ、ボクは韋駄天いだてんになれるわけだ。

「わかってる」

 ボクはそう言いながら、腰のポシェットに手を伸ばす。中に入っている髪留めをいくつか摑む。

 今回は速度と攻撃力がものを言う。反面、直継さんという〈守護戦士ガーディアン〉がいるから敵愾心ヘイトは上げたくない。防御力も二の次だ……。

〈翼竜の風切羽〉。

蒼瑪瑙あおめのうのマジェステ〉。

〈夜蝶のかんざし〉

〈夜蝶のブローチ〉。

 うちのギルドは、いつも同じメンバーでパーティーを組むわけじゃない。だからその時々で、リーダーが足りない機能をフォローする必要がある。そのための、最後のさじ加減をするのが、この髪留めなのだ。ひとつ髪飾りをつけるたびに、この戦闘に最適なボクに変わっていく。

「よっ、美人!」とピンキーがはやす。

 無視無視。

「よし、いこう」

 ボクはいていた剣を、鞘からひきぬく。

 すらりと伸びた刀身が、漆黒の輝きをはなつ。〈大災害〉以降の冒険によって手にした、戦利品のひとつ。高レベルの武具は、単なる名品の枠を越えた魔法のかけられた品々だ。これも〈闇の尊厳ダーク・アウグストゥス〉という、カッコよさ半分、気恥ずかしさ半分の名前がついている。

「ぼ、〈冒険者〉さま!」

「ん……?」

 ボクたちが飛び降りようとしていると、コレットが声をあげた。

「ご、ご武運を!」

 緊張した笑顔。こんなことは言い慣れないのだろう、すこし舌がもつれている。

 武運。物語の世界からとびだしてきたような、浮き世離れしたフレーズだ。むずっと背中がかゆくなる。

 でも生死をかけた戦いにおもむくのだ。この子に必要なのは、ゲーマーではなくヒーローのはずだ。

 ボクはヒーローになんてなりたくない――。

 そんな言葉を喉の奥にのみこんで。

「うん、まかせておいて」

 ボクはうなずいて、走る馬車から身を躍らせた。

 よし、作戦開始だ。

 ふわりと一瞬の浮遊感の末、土にうまった踵

かかとから衝撃がはしる。こんな無茶、現実の人間だ

ったら絶対にできなかったろう。しかし、ボクたちは今、人間である以前に〈冒険者〉なのだ。

 ボクは足に気合いをいれて、麦畑を突っ切っていく。魔法の加護を得た〈冒険者〉の健脚が、土をえぐり、成長途上の麦を蹴る。ああ、農家の人ごめんなさい。

 飛ぶように疾駆し、モンスターへと迫る。

 こうしてひらけた場所でみると、その化け物はトカゲというより、装飾過剰なティラノサウルスのように見えた。背中には飛べもしないだろうに、極彩色の羽毛がとびでている。たぶん「羽毛が生えていた恐竜」というのが、デザインモチーフなのだろう。なるほど、羽根をもちながら飛べない、まさに〈星を見る獅子竜イカロスザウルス〉という名前どおりだ。元のCGを想像すると、この複雑な羽毛の表現で、だいぶポリゴンを使っていそうだ。

 その羽毛はつねに揺れ動き、その羽根で空気を叩いている。あの羽毛が魔法的な推力を生み出し、この怪物のすばやい挙動を可能にしているらしい。

 頭上で光の軌跡がはしった。その瞬間、魔法の鎖がモンスターをからめとる。つづけてもう一発。馬車上のシロエさんとピンキーがはなった移動阻害魔法〈アストラルバインド〉だ。

 ごう !

 トワまで約五〇メートル。寸前のところで、大地を這う巨軀が急停止。腹ばいの体勢のまま大地をすべり、土砂を宙へとまきあげる。モンスターの姿が土煙に覆い隠された。

「やるぞ……!」

 隣を走る完全武装の直継さんがつぶやく。

 ボクはうなずくと、姿勢を低くして直継さんより前に出る。〈盗剣士スワッシュバックラー〉は十二職業随一のスピードをもっているんだ。

「〈タウンティング・シャウト〉ッ!」

 直継さんの叫び声が、モンスターの注意をひきつけた。その隙に、ボクたちはやつの懐にもぐりこむ。

 直継さんはつづけざまに〈アンカーハウル〉をはなつ。怪物がもつ敵愾心ヘイトという不可視のパラメーターが、どんどん上昇していく。

  やつはその身にからみついた〈アストラルバインド〉の光を引きちぎり、行動を再開する。しかしその双眸そうぼうはもうトワを見てはいない。

 やつはこっちを……正確には、ボクの背後にいる直継さんを睨ねめつけている。標的はトワから、ボクたちへと移った。やつはもうボクたちを無視できない。

「よし、敵愾心ヘイトトップとった。どうする、ユーマ? このまま町から引き離すか?」

「……やめておきましょう。森の中に誘導したら、シロエさんやピンキーの魔法の射線が通りにくくなります。後衛を有するこちらが一方的にデメリットを抱え込むことになる」

 前衛ふたりでささやきあう。

 それにモンスターがすんなりと戦場を移動してくれるわけがない。思う存分暴れて、田畑を荒らしてくれることだろう。それでは〈大地人〉たちに申し訳ない。

「だから、ここでケリをつける……!」

〈クイックステップ〉〈ライトニングステップ〉〈フェンサーズプライド〉……。

 ボクは全力疾走の最中さなかに特技を選択し、実行しつづける。なにもウィンドウを開いて、選択する必要はない。特技はもうボクたちの肉体深くに染み付いていて、ちょっとした挙動で起動することができるのだ。

  そのとき、魔法の光弾が空を横切り、怪物に着弾する。〈付与術師エンチャンター〉の数少ない攻撃魔法〈マインド・ボルト〉だ。怪物を覆ううろこぜる。モンスターは苦しげな咆哮ほうこうをあげた。

 ことここに到れば、あとはルーチンどおりに事を進めるだけだ。ボクは攻撃をたたき込み続ける。後方からシロエさんが最適なタイミングで支援をとばしてくれる。命中率上昇やスピード上昇がどんどんのっかって、視界の片隅に能力強化バフの表示があふれる。

 ボクは怪物の鱗に足をかけ、〈クイックアサルト〉の突進力蹴りのぼった。ゲーム時代には不可能だったアニメ的な方法だけど、攻撃をはずしたくないならこれが一番確実だ。

 ボクは剣を構え、特技を起動し、振り下ろす。

「〈アーリースラスト〉〈ダンスマカブル〉〈ヴァイパーストラッシュ〉!」

 苛烈な連続攻撃を受け、怪物の鱗から血液が噴出した。青空にどす黒いアーチがかかる。やつがのたうつたびに、あたりの茎葉が赤く染まっていく。

 しかし、ことがうまく運びかけているときこそ、運命の女神はひどい悪戯いたずらをするんだ。

 トワの方角から、矢が降り注いだ。ほとんどがはずれ、あるいは鱗によってはじかれる。しかし何本かはそのやじりを肉に埋めることに成功した。

 トワを囲む高さ三メートルほどの石塀から、幾人かの〈大地人〉が弓に矢をつがえている。

 おそらくトワの自警団だろう。

 怪物が動き出し、ボクの身体は宙へとふりおとされた。

「……ッ! まずいぞ、これ」

 宙を舞いながらひとりごちる。

〈大地人〉はけっして無力な人々ではない。それどころかモンスターの跳梁ちょうりょうする大地に文明を築く彼らは、地球世界の人類と比較にならないほど強靱な種族だとさえいえる。彼らもボクたちと同じように職業とレベルをもち、戦う力をもっているのだ。

を築く彼らは、地球世界の人類と比較にならないほど強靭きょうじんな種族だとさえいえる。彼らもボクたちと同じように職業とレベルをもち、戦う力をもっているのだ。

 セルデシアの町や村は、つねに農作物を狙うモンスターの襲撃の危険にさらされている。この町の自警団も、これまでこのようにモンスターを退けてきたのだろう。

 だけど、今は最悪のタイミングだった。

 怪物は振り返り、トワの石塀を睨めつける。

 射手たちはひるんだ。怪物は一撃を石塀にくわえる。石塀の補強のために積まれていた土嚢どのうがやぶれ、もうもうと土煙があがった。射手は蜘蛛|くもの子を散らすように、逃げていく。

 本来であればあれだけの攻撃で、あの射手たちが敵愾心ヘイトトップになることはありえない。だがこの怪物はトワを狙って動いていたのだ。もともとトワという町に対し、敵愾心ヘイトをもっていた……と解釈することもできる。……いや、ゲームシステムで考えたところで正確な答えはだせるもんか。敵愾心ヘイトなんて、あくまでゲーム内パラメーター。プレイヤーの目に見えるわけじゃない。〈エルダー・テイル〉ではそういうルールだったから、〈大災害〉以降も有効だろうと推測されているだけ。単なる経験則だ。

 戦闘を勝手に援護する〈大地人〉。そんなことゲーム時代にはありえなかったのに。完全に計算外だった。

 ボクという重荷をふりすてた怪物は、肉体に絡みついた〈アストラルバインド〉の鎖を引きちぎる。そして大地を一跳ねすると、石塀の内側に飛び降りた。地響きが震動をともなって大地を伝い、一面の麦が波うつ。そして逃げ惑う〈大地人〉たちの背中にむけて、攻撃モーションをおこなう。

 まずい。

 レベル七七。〈パーティー〉ランクのボス……それは普段自警団が小競り合いをしているだろうモンスターとはまったく違う。〈冒険者〉なしでは対処できない、生ける災害なのだ。こんな辺境の町の自警団では、おそらくレベルは一〇前後。下手すれば一撃で死ぬ。

 ボクは空中で一回転。体勢をたてなおし、つま先から着地する。

 でも、今から駆けても間に合わない。

 だいたい人を守るような特技なんて、ボクはもってない。

 彼らを、救えない。

 迫りくる死に対し、〈大地人〉がふりかえる。その瞳に浮かぶ絶望は、数十メートルの距離を経て、ボクの脳髄につきささる。否応なく思い知らされる。これはゲームじゃなく、セーブポイントもない。人が、死ぬ。

 やめてやめてやめて。

 届かないと知っていて、僕は思わず手を伸ばす。

 お願いだよ。

 あの人たち、〈大地人〉は、死んだらそれっきりなんだ……!

 そんな、僕の伸ばした手の先に……。

 鈍色にびいろの甲冑がすべりこんだ。

「直継さん……!」

 僕の背丈より一割増の、たくましい背中。

 おぱんつ戦士の登場だ。

「〈カバーリング〉!」

 キィン……!

 直継さんのもつ〈獅子王の剛盾ガーズ・オブ・ライオンハート〉が、怪物の攻撃をはじいた。つづけざまの攻撃が降り注いでも、直継さんは身じろぎもしない。圧倒的な質量差を、はねかえす。

「容赦なしかよ」

 そして直継さんは、盾から顔をのぞかせ、不敵な笑みを浮かべる。

「だが、次はこっちの番だ!」

 大剣〈ケイオス・シュリーカー〉を振りかぶり、ぴたりと怪物に照準をあわせる。

「よっしゃ、これでとどめだぜ!」

 直継さんの一撃が、〈星を見る獅子竜イカロスザウルス〉に吸い込まれていく。それがHPの最後の一欠片を奪い取った。苦しげにうめき、のたうちまわっていた巨体が急速に生命力を失っていく。やがて脳から意思が失われ、最後には数トンの遺骸と破壊のあとだけが残った。

 直継さんはふうと一息つくと、近づいてきたボクを振りかえる。

「ふう、いっちょあがり祭り。悪いな、ユーマ。アタッカーの見せ場とっちまった。完璧ごっつぁんキルだったよな」

「いっ、いえっ。とんでもないです」

 たしかにダメージの大半はダメージディーラーであるボクが与えたもので、タンクである直継さんがとどめをもっていったのは偶然にすぎない。けれど直継さんを防御専任にしておけるほど、このパーティーの火力は余裕がないんだ。叩けるときに叩いた直継さんを、賞賛することこそあれ、非難するはずもない。

 それになにより、直継さんは彼らを守りぬいたんだ。

 建物に隠れていた〈大地人〉たちがおずおずと顔をだし、こちらの様子をうかがう。

「あれは、〈冒険者〉?」

「すごい、あんな化け物を」

〈大地人〉たちから声があがる。

 それはそうだろう。

 たしかに劇的な場面だった。

 平和な町を襲う、これまで見たこともない巨大な怪物。これまで数多くのモンスターを退けてきた栄えある自警団もなすすべもなく潰走する。

てきたえある自警団もなすすべもなく潰走かいそうする。

 そこに颯爽さっそうと割って入る、甲冑姿の異邦人。

 そして目の前で討伐された、異形いぎょうの怪物。

 まさに英雄の所行しょぎょうだ。

「まるでナオツグさまの伝説だ……」

「いやあのお姿。まさか本当に……?」

 え?

 今、この人たちなんていった?

 直継、だって……?

「なあ、ナオツグって。え、なに、俺のこと知ってるのか?」

 直継さんも戸惑いながら、手近にいた弓兵に尋ねる。すると、彼はぱあと顔を明るくした。

「ではやはりあなたが、半世紀前にトワを救った英雄、ナオツグさま!」

「…………はい?」

 直継さんは目を白黒させた。

 そこに颯爽と割って入る、甲冑姿の異邦人。

 そして目の前に転がる、怪物の遺骸。

 まさに英雄の所業だ。

「まるでナオツグさまの伝説だ……」

「いやあのお姿。まさか本当に……?」

 え?

 今、この人たちなんていった?

 直継、だって……?

「なあ、ナオツグって。え、なに、俺のこと知ってるのか?」

 直継さんも戸惑いながら、手近にいた弓兵に尋ねる。すると、彼はぱあと顔を明るくした。

「ではやはりあなたが、半世紀前にトワを救った英雄、ナオツグさま!」

「…………はい?」

 直継さんは目を白黒した。


 〈円卓会議〉の結成によって、ボクたちはようやくこの世界に居場所をつくることができた……そう思っていた。

 ――だけど、ここに存在したのは、もちろんボクたちだけではなかった。

 これまでどおり立ちはだかってくる異形の怪物、モンスター。そしてゲームをいろどるNPC……〈大地人〉たち。彼らもまたこの世界に息づいていた。

 それはある意味、現代地球ではもはや起こりえないファーストコンタクト。

 異文明との出会いだった。



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