いつかくる世界
夢咲が開いていた掌を握りしめると、殺人犯の体は、まるで体内に埋め込まれた爆弾が爆発したかの様に、
『お前、何してんだ!?』
という声で、夢咲はようやく僕の存在に気がつく。
『何って、見たら分かるだろう?ゴミ掃除だよ。ゴミは適切に処理しなくちゃならないんだ、放っておいたら
『ゴミじゃない。今、お前は人間を殺したんだ』
『まぁ、ものは言い様だ、ゴミ掃除を人殺しと表現出来ない事もない』
『全国の【神隠し事件】の犯人はお前か?』
『そうだ…。と言ったらどうする?』
夢咲が感情の無い微笑を浮かべる。
『止める。もうこれ以上はやらせない』
『異空間で、超常の力で人を
『僕がヒーローだからだ。お前を止める理由はそれだけで事足りる』
『そうか…』
奴の顔に、微かに感情が兆した。
『なら、ここで俺を止めてみろよ。さもなければ、俺はあっという間に人類を絶滅させてしまうだろうからな。気合い入れろよ。この俺は中々に強いんだ』
夢咲が両の手を何も無い空に翳すと、漆黒の剣が現れて、その両手に握られる。
僕はすかさず光の剣を創造して、夢咲に向かって駆け出した。
どれくらいの時間が経ったであろうか?
夢咲と剣を交える中で、僕らは互いの思想を奥深くまで理解し合った。
奴のそれは、とても美しかった。
だけれど、それは、今の時代の、いわゆる人間の価値観で言う所の【幸せ】とはあまりにもかけ離れ過ぎている。
僕の人生のミッションは【笑顔の溢れる素敵な世界をつくる】事だから、何としても奴を止めなければならない。
なのに、どうやら僕はここまでの様だ。
力を使い過ぎたのだ。
自分の命の終わりは自分が一番よく分かるものだ。というのはどうやら本当らしい。
僕は間もなく死ぬ。
『わかったよ…』
力強い声で言う夢咲の
『君の世界は、
夢咲は、自らの胸に手を当てると、そこから光る球体を取り出した。
『この先の世界は君に任せる。ヒーローなら歯を食いしばって戦い続けろ』
夢咲は、光の球体を僕の胸に押し付けると、光の粒となって、夜の世界に消えていった。
僕は、強くなりたいと願いながら、ゆっくりと
誰もが笑っていられる世界を夢見て。
おわり
いじめられっ子の僕は、人知れず悪と戦うヒーローだったりするのです。 GK506 @GK506
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