死化粧
pipi
死化粧
その写真集には、何体もの人形が写っていた。
その陶器で出来た人形達の、真っ白な顔に埋め込まれたガラスの瞳は虚空を見つめ、
赤い小さな唇はどれも苦痛に歪んでいた。
「死化粧」
それがその写真集のタイトルだった。
私は今、この写真集を出したカメラマン、早川登の前に立っている。
ここは、登の部屋。
暗がりの中に、あの写真集で使われたのであろう人形達の顔がみえる。
登は、私に近付くとゆっくりと唇を重ねて来た。
そして、そのまま私をベットに押し倒すと服を脱がせ愛撫してくる。
それから、私が絶頂に達する頃、登はカメラを取り出し私の体を写す。
私は、登に言われるままのポーズをとる。
カシャッ カシャッ
無機質な音が響く。
これが私と登の最近の儀式だった。
すべてが終わると、私はベットの中で呟いた。
…私、モデルやめようと思うの。
…そう
登は答えた。
…何となくね、とられる喜びを最近感じなくなっちゃった。
どうしてかな? 年だからかな?ねえ、どう思う?
対して興味も無さそうな登に向かい、私はくどくどと理由を話してみる。
……
登は無言だ。
…ねえ、登は、どうして人形ばかりとるの?
私はどうしても登の声が聞きたくて、そんな質問をしてみた。
…綺麗だから
と、登は素っ気無い。
その時、登の携帯が鳴った。
登は、それに出ようともしないで、また私に唇を重ねて来た。
それから、鳴り続ける携帯の音を聞きながら、私と登の儀式が始まる。
この儀式の時にしか、私はもう撮られる喜びを感じなくなっていた。
登に写されながら、私は一体の人形と目が合った。
人形は、大きなガラスの瞳で私を見ている。
ふと、私は、あの死化粧の人形達の姿に自分自身を重ねてみたりするのだった。
死化粧 pipi @piccho
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