第3話 ギャグに生きる

「おい、どういう事だよ⁉︎」

「仕方ないでしょ!私だってお金がないんだから!ていうかあんたのせいでしょ‼︎『くじ引きを回してた人の顔がニタニタしていて気持ち悪かった』って通報者が言ってたのよ‼︎‼︎」

「オレ被害者だぞ⁉︎」


オレ、そんなに気持ち悪い顔してる?なんか普通にショックだわ。

てか会社潰れたのは詐欺をやったお前らだろ……

自業自得じゃん……


「とりあえず、私はあんたの助けなしじゃ餓死しちゃう!いいの?あんたこんな美少女を死なせても」

「別にいいけど」

「しばくぞこの野郎」


ドゴッと腹を殴られた。なんでだよ⁉︎


「てか自分で美少女って言っちゃうのね……」

「事実だけど?なに、その文句ありますよ感がでてる顔」

「なにもありません」





とまぁ、そんなこんなでこの元お嬢様が仲間?になった訳だけど、お嬢様だということもあって、コイツがポンコツだと言うことは後から知ることになる……


「私の名前はフィリナ・メルト。超天才美少女よ。あんたは?」

「出水悠斗だ。異世界から来た」

「ゲェ、あんた異世界人だったの⁉︎異世界人と言ったら超強いやつらじゃないの⁉︎⁉︎あんた顔に覇気がなさすぎてわからなかったわ。どうせ勇者を召喚するときに巻き込まれたとかそんなもんでしょ!」

「うっ、事実すぎて何も言い返せねぇ」


てか、さっきからめっちゃ顔について言われてるんだけど、そんなオレ顔に出やすいのか……?


「で、どうするのよ?」

「何が?」

「これからの生活!あんた2人分稼げるの?」

「お前も働けよ!なんでオレだけが働くみたいになってんだよ‼︎」

「うるっさいわね……まぁ仕方ないわ。

んで、そこんところ、どうするのよ?」

「うーん、冒険家になって稼ぐってのが一番良いやり方だと言われたからな……」


捕まったお前の父ちゃんにな。


「ふーん、冒険家ね。良い考えじゃない。で、どんな仕事をするのよ?」



……………………

…………


オレは今、草をむしっている。

寒空の下、真冬だというのに全くかれる気配のない雑草をひたすらむしっている。


「ねぇ、いつまでコレ続けるのよー!」


フィリナはひたすら愚痴しか言っていない。口を動かす前に手を動かせよ……なんていったら腕を動かして振り下ろしてきそうだからあえて言わない。


「仕方ないだろ!Fランクのオファーなんてこんなもんなんだから!これ終わらせないと今日分の宿代払えないんだぞ⁉︎」

「あんたは外で寝なさい!私が中で寝るから」

「泣くぞ流石に」


そして……


「やぁぁっっっっっと終わったーーー!疲れたわー!」

「Fランクのオファーもきついな……腰にくる」


とりあえず今日分の宿屋代は稼いだ。

案内所で報酬代をもらい、宿屋をとり、宿に入る途中、フィリナは深刻そうな顔をしてオレに話しかけてきた。


「ねぇ、まさか相部屋……?嘘でしょ……?」

「そうだけど?金がないんだから仕方ないだろ」

「嫌よ!あんた絶対襲ってくるじゃん‼︎こんな気持ち悪い顔した人と一緒に寝るなんて、世界中の全ての女性が嫌がるわよ‼︎‼︎」

「あれ、お前女性だったん?小さすぎて良くミエナカッタワーヘラヘラ」

「美少“女”って言ってたでしょ‼︎‼︎」


今度はスネを蹴られた。いってぇ‼︎‼︎‼︎


「あんた、もし私を襲ったりしたら本当に殺すからね⁉︎」




値段の割には意外と広い部屋に敷布団を2人分しき、飯を食って風呂入っていざ就寝……

と、その時。奴が現れたのだった。


「ん、なんか黒いシミがあるわよ……なにこれ……

ってイヤァァァァァァアァァァァ!?!!?!!!?!???!?」


そうG《ゴキブリ》である。


「うわぁぁぁぁ!助けてぇ!!!!来ないでぇぇぇぇ!!???!?!」

「おい、落ち着けって_____ウゲッ⁉︎」


フィリナはものすごい勢いで部屋の中を走り回ると、オレの顔に飛びついてきた。


「早くあの虫をとるのよ!あんた手で触れるでしょ⁉︎⁉︎」

「顔に抱きつくなよ⁉︎前が見えねぇって‼︎」

「早くしてよぉぉぉぉ!!???!」


どんだけゴキブリが嫌いなんだろうか。ものすごい面白い反応してて内心は笑いが込み上げてきていた。

まぁ、笑ったら殺されるから笑わないんですけどね。


とりあえず、部屋をカサカサと動き回るゴキブリを素手で掴み取る。

……って良いこと思いついた。オレはその手で掴んだゴキブリを_____


「もう大丈夫だフィリナ。ゴキブリは収納したから」

「ほ、ほんと……?」

「ウッソー!」


未だ顔に張り付いているフィリナの近くに持っていった。


「×#¥31|÷)6-5○・/÷「々>$!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ウグゥェッッッッッ」


言葉にならない悲鳴だった。そして、顔に張り付いていたせいもあって、抱きついていたオレの顔に力を込めていた。顔を抱き潰れそうだった。


「痛い痛い痛い痛い‼︎‼︎もう本当にゴキブリを直したから!顔を潰そうとするのはやめてくれ!!」


………………

………


「眠い………」


昨日は散々な目にあった。ただゴキブリで遊んでただけなのに………


「あんた、本当なクズだね。悪い意味で改めて見直したわ」


そしてフィリナの好感度もガッツリと下がっていく。

こんな雰囲気の中いうのは気がひけるが……


「提案があるんだけど」

「なによ?」


提案。それは今後のことだ。冒険家として今みたいにチマチマと金を稼ぐ事が、オレがわざわざ異世界に来てまでやりたかった訳じゃない。

オレがやりたかったこと。それは権力。地位。ハーレム。

それらをいっぺんに手に入れるための提案。


「オレ、勇者になる!」

「……はぁ?」


勇者になれば地位も権力もハーレムも手に入る。なんて素晴らしい発想なんだろオレ。


「あんたねぇ、勇者ってどんな仕事なのか知ってるの⁉︎まずなる事すら難しいっていうのに⁉︎」

「魔王と戦うんだろ?そんなもんオレでも知ってるって〜」

「逆よ!魔王と協力するのよ‼︎」


えっ……魔王と協力するんだ……


「勇者はね!魔王と協力して神を倒す仕事なの‼︎当然勇者になれば色々許されるけど、アンタみたいなゲスのクズになれるわけないでしょ‼︎‼︎‼︎」


神と戦う……オレの厨二を燻るなぁ……!

てか相変わらず悪口も混ぜながら言ってくるなコイツ。


「といってもガチで目指してる訳じゃない。そもそもコレはギャグ小説だしね」

「メタ発言はやめなさい!!!!!」


強めに腹パンされた。今までで一番痛かった…………

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異世界転生したくて自殺してみた! もゆう @MOYUU

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