Disc.02 - tr.04『幽霊部員とアクションサウンドとRE-X』
「ここまで見てきたんだ。仕上げはお前らでやんな」
「「(;゚Д゚)(゚Д゚;)ナ、ナンダッテー!!」」
ここまで来てまさかの振りに驚愕のあまり固まるワンココンビ。
それを響一郎は「はいはいテンプレテンプレ」と軽く流しつつ続ける。
「ややこしいこたー全部やってあるさ。あとはレコード回してテープを回すだけだ」
「で、でも……」
「失敗、するかも」
「カセットテープだぜ? 何度でもやり直しが利くのがこいつの良いところなんだがな」
優しく諭すように言う彼に、2人は覚悟完了したように顔を見合わせて頷いた。
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その前に、と響一郎はレコードを一旦取り上げ、スプレーを軽く吹き付けて小さなブラシのようなもので軽く表面を払う。
「お兄さん、それ何?」
「う゛…なんか整髪料のニオイが……」
「帯電防止スプレーだよ。レコードの静電気を抑えるんだ。整髪料ってか揮発性ガスの匂いだろ」
「本当に色々と手間が掛かるんだねぇ」
「んじゃコロ、そのプレーヤーはフルオートだ。スタートを押すだけであとは勝手に針が動いてって降りる」
「でもってポチ、テープはあらかじめ10秒ぐらい回して
「後はまぁ終わるまで放っといても良いが、心配なら交代でモニターしとけ。出来れば最後の曲が終わった瞬間、針が上がる音が入る前にミュートを押して音を消しとくといい」
先程の真貴もかくやという状況に、2人はガチガチに緊張しつつも果敢に挑んでいる。
「雨音くん、こ、これならやったげた方が良かったんじゃ」
「なんかワケアリみたいだしな。どうせなら自分で録音した方が自分のテープって感じがして良いんだよ」
「……そっか」
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「……い、い、行くよーっ!!」
「――らじゃ」
ワンココンビはガチガチになりつつも、見事に一発でスタートを切った。上出来だ。
今はポチ嬢がデッキから伸びたヘッドホンを片耳に当ててモニタリング中。
「――ちなみにだが、お兄ちゃん、ボクがテープでコロがレコードなのは何故?」
「適性、かねぇ? お前さんはどうやら性格的に緻密な作業が得意そうだから、相手に合わせるの向いてそうだったし、あっちは声がデカくて思い切りはいいからスタート向きだろうしな」
「ほぅ。一目でボクらのステータスを見抜くとはやるなお主」
「お褒めに
「ところでさ、雨音くん」
「ん?」
「さっきから不思議だったんだけど、あのレコードって、そんなに珍しいの?」
その瞬間、ポチ嬢と響一郎の双眸がくわっとばかりに見開かれた。
「お姉ちゃん、なんて罰当たりな! 無知は最大の罪、前世から出直してくるべし!」
「え!? い、いや、だって、歌自体はCDとかでも出てたりするんじゃ……」
「これだからド天然は……あのなぁ、歌はそうかも知れんが、こいつの価値はそれだけじゃねーんだよ」
2人からの突然のツッ込みに、え!?え!?悪いの私!?と混乱する真貴の耳にヘッドホンが当てられる。
「……聴いた方が早い」
真貴の耳に、突如として効果音やら台詞が飛び込んできた。
「はぇ!? あれ、歌じゃ…ない?」
それに被さるように続けて歌が始まる。
「あ、そういう……!」
「ま、そういうこったな」
響一郎が説明を始める。
「このシリーズは、普通のコンピレーションと違って、歌の冒頭にちょっとしたドラマ部分が入ってるんだよ」
「しかもデジタルでは今のところ復刻されてない。レア音源」
「シリーズ自体は'80年代中盤までは続いたみたいたが、後の方では『アクション・サウンド』なんて副題も付いてたな」
「CD時代になると普通に歌だけ入ってるか、ドラマパートは入ってても別トラックに別れてる」
えらく息の合った解説だが……この2人、どーしてそんな昔のコトまで詳しいのよ!?
「さてはお兄ちゃん、こっち側の人だな?」
「おまゆう。てか、そういう意味だけじゃねーんだろ、大事、ってのは?」
「……あはは、お兄さんってば名探偵みたいだねー☆」
それまで黙ってレコードを見ていたコロ嬢がこちらを向いて苦笑していた。
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「やぁ、ご苦労、国楠」
「おぅ! 誰かと思えば君たちかい!」
生徒会室に入ってきた2人を見て、国楠は複雑な笑みを浮かべ挨拶を返す。
抱き合って喜んでいた電音部の3年生トリオは、喜色満面で振り返る。
「おやおや、我が校の誇る三大美女の歓迎とは、今日は大安吉日かな」
「それは結婚式。――
「か、会長、副会長――」
国楠は縋るように2人を見る。
アップ髪の女子生徒――会長の
老け顔の男子生徒――副会長の
これで役者は揃った。
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「このレコードってば、アタシの子守歌代わりみたいなもんでさ」
ぽつり、とコロ嬢が話し出した。
「なんかもう、コレ聴いてないと落ち着いて寝らんないんよねー☆」
たは、と困ったように苦笑する。
「元々は、昔、コロが小さい頃に父親が録音したテープがあった」
ポチ嬢が後を受ける。
「でも、つい最近、壊れた。絡まって伸びた」
それにこくりと頷いてコロ嬢が続ける。
「で、ここならそーゆー機械があるって聞いて、借りに来たってワケ」
待てよ、と疑問に思った真貴が問う。
「で、でもさっ、それならお父さんにもう一度お願いした方が早いんじゃない?」
「パパ、今居ないから――」
淋しげに答えるコロ嬢。
真貴はこの時ほど自分の迂闊さを後悔したことはない。
「――ご、ごめん……」
溢れてくる涙を抑えられなかった。
気が付いたら、コロ嬢に抱きついて泣きじゃくっていた。
コロ嬢も黙って為すがままにされている。
「――コロは、いい
響一郎がふっと笑ってポチ嬢の頭を撫でている。
「――当然。ところでお兄ちゃん、ロリコンか?」
そう言いながら彼女も天使も斯くやといった微笑を浮かべている。
「うっせぇわw」
ピロリン♪
――ん? メッセージの着信音?
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生徒会三役揃い踏み!! 次回、いよいよ決着…か?
今回は実質、レコード録音のお作法篇になってしまいました。
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G.W.連続公開!!
大参謀オングーロ、ブラック、ピンクの中の人は本編では今回初登場です。(おぃ)
※磁帯;カセットテープの中国語表記
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