Disc.02 - tr.02『幽霊部員とアクションサウンドとRE-X』

二人の闖入者は、揃ってニヤリと嗤うと言った。

「「誰だと思う?」」


「それが判らんから訊いてんだよ。せめて名前くらい言え」

「雨音くん、言い方ー!!」

 二人の尊さ加減にすっかりやられた真貴は完全に保護者モードに突入している。


「なんならお兄さんが名前付けてくれても良いんだよん☆」

「……そうか。ならお前はコロ、そっちのはポチなw」

「何で犬系なのさっ!?」

「何となく? 強いて言えば昔ウチに居た犬がお前らみたいな感じだったしw」

 そういえば彼はいつものニヤニヤが復活している。あ、これ絶対悪いこと考えてる顔だ。

「犬ならせめてニッパーとかハチとか居るだろJK」

 ポチ呼ばわりされた銀髪少女がジト眼で睨む。赤っぽい眼も相俟ってちょっとバンパネラっぽい。

「ンな忠犬なんて柄か駄犬どもw 名前教える気が無いってんならこれで決定なw」

 あ、と真貴は遅まきながら気付く。そういうことか。

 ぐぬぬ……という顔で二人はこちらを見ているが、彼は全く意に介していない。


「んじゃ名前も決まったところで、質問。ここに来たのは何か用でもあったのか?」

「え? 迷い込んだだけなんじゃ……」

「俺らが入ってきた時、あいつらがそこの機材のとこ居たろ」

「うん」

「従って、そこの機材に用があったんじゃねーか、と思うんだが?」


 響一郎の言葉に、二人は一瞬、眼を見開いてお互いを見ると、頷き合った。

「「実は――」」


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「失礼つかまつる!! 電音部副部長・桜美林おうびりん真紅しんく、参る!!」

 生徒会室の扉を蹴破りそうな勢いで開いた真紅が室内に走り込む。

「真紅ちゃ~~ん、それじゃホントに討ち入りみたいよ~~」

 一緒に走ってきた日々希だが、不思議と息切れひとつしていない。

「あぁ、出来ることなら奴の素っ首、叩き斬ってやりたいところだがな!」

 冗談に聞こえない程の殺気の籠もった眼で、室内奥からこちらを見ているその標的を睨みつつ、真紅は凄みのある笑みを浮かべた。

 尚、校内で普通にこれをやると女子生徒の半数は黄色い声を上げたり卒倒したりする。

「ソニア、無事かっ!?」

「ソニアちゃ~~ん、大丈夫~~?」

貴女あなた方……」

 気丈にしてはいたものの、流石にほっとした様子のソニア。

「相も変わらず騒々しいことですね、電音部は」

 ここで空気を読まない奴が約1名。

「それは済まんなぁ。で、我々が却下されたというのは本当かい、会計殿?」

 真紅も国楠の態度は幾分腹に据えかねているのか、彼女らしくない高飛車な言い方をする。

「何度見えられても結果は変わりませんよ。要件に満たない以上、時間の無駄かと」

「ほぉ……」

 真紅の眼が再び殺気を放つ。アカン、これは人斬りの眼や(( ;゚Д゚)))

 ソニアに代わって真紅が国楠と対峙する中、ソニアがそっと日々希に耳打ちしている。

「日々希、今のうちに――」

「そうね~~もう来てる頃ね~~」

 その後ろで真紅の殺気に気圧されつつも退かない国楠は敵ながら天晴れと言うべきか。


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 あまりの片付いてなさ加減から"迷宮ダンジョン"と自虐気味に呼ばれる電音部の機材庫。

 その一隅、幾つか電源の入ってる機材があった。

 銀髪のポチ嬢がぽつぽつと説明を始める。

「電音部のことはソニア…お姉ちゃんに聞いて知ってた。今日来たのは、録音するのにここの機材を使いたかったから」

「録音……って、カセットに!?」

「そう」

「でもさ、聴く方の機械とか持ってるの? その、ラジカセ、とか」

「持ってる。見た目'80年代っぽいの。ちなみにBluetoothでスマホの音源も鳴らせるニクい奴」

「あれか……とするとNRは要らねーか」

 響一郎は機種のアタリが付いたようで何やらぶつぶつと呟いている。

「ちなみに、録音するのは何だ? こっちの電源入ってる所を見ると――」

「こ、これ」

 先程とは打って変わって妙にしおらしくなった黒髪のコロ嬢が近くに立てかけてあった40cm四方ほどの袋を差し出す。

「これって――」

「LPレコード…だろうな」

 響一郎が袋を開けて中身を取り出す。それは――


『ゴールデンテレビまんが大行進17』


「へっ?」

「ほぅ!」


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「そもそも君は簡単に却下だ、などと言うが、それは生徒会の総意なのか」

「総意も何も、条件を満たしていない時点で総会に諮るまでもないでしょう」

「その条件とやらも、言いがかりに近いと私は思うのだが」

「ですが2名は幽霊部員との報告が上がっております。私も現に何度か実地調査に伺いましたが、実際に一度もその2名をお見かけしたことは無かったと記憶しておりますが?」

「そ、それは偶々……」

「おや? それは不思議ですね? 少なくとも月に1回は伺っていた筈ですが、その時に限って偶々、居なかったと?」

「居なかったものは仕方が無かろう」

「逆に言わせて頂ければ、もうそれは実質貴女あなた方3名の活動と同じことではないかと?」

「君も大概、口の減らない奴だな」

「褒め言葉と受け取っておきますよ」

 取り付く島も無い、とはこのことだ。

 二人の論戦を聞きながら、ソニアと日々希は盛大に溜息を漏らした。

と比べたらウチの天然毒舌男の方がまだ可愛げがありますわね」

「ソニアちゃん、言い方~~(^^;」


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「こ、これって、大昔のアニメとかのLP…だよね?」

「そうだな。混載盤―今風に言やぁコンピレーションアルバムって奴か」

「流石に大きいねー。あ、仮面ラ○ダーとかこの頃からあったんだ」

「発売が……1974年か。半世紀近く前だぜ」

「ウチのおとーさんも生まれてないよー!」

「歌手はアニソン界のレジェンド揃い踏み、作曲は―うぉ、菊池俊輔祭りだこりゃ」

「誰それ?」

「『ドラ○もん』の作曲者だ。一般常識だぞ」

「そんなマニアックな一般常識とか知らないよぅ…(´・ω・`)」


 そんな真貴と響一郎を観察しながらひそひそと話すワンコ2匹。

「ねぇねえ、やっぱあの2人、マジ付き合ってんじゃね?」

「それな。ボク思うに熟年夫婦感パネェ」


「で、」

 ワンコたちに目を向けた響一郎がおもむろに訊く。

「テープはあるのか?」

「これで入る…と思う」

 パステルっぽい色が見える透明のテープを差し出す黒髪コロ嬢。

「ほぉ、DENONデンオンのRE-Xとはまた……渋いチョイスを……」

「そこ、"デノン"じゃないの、お兄ちゃん?」

 銀髪ポチ嬢がこくん、と斜め30度に首を傾げて訊く。真貴は尊さに一瞬気が遠くなった。

「いや、そりゃ家電部門を外資に売っ払った後だな。この頃はまだ日本の会社―レコード会社の日本コロムビアのブランドだったから"デンオン"が正しい。そもそも元の名前が"日本電気音響"の略だから、"デンオン"だしな」

「あぁ、カメラとかスニーカーみたく何でもかんでも英語読みにするアメ公に合わせたのか。納得」

「そういうこった――って、何気に毒舌だな、ポチ」

 それアンタが言うか――と上気道辺りまで出かけた言葉を真貴はギリギリで飲み込んだ。

 ふとポチ嬢を見ると複雑な表情でジト眼をしていたので、真貴と同じ感想らしい。

「で、何が判らなかったんだ? てか電源入れただけか?」

「そこのプレーヤーとそっちのデッキは繋いだ。でも音が出ない」

「あーこっちのと…デッキはおあつらえ向きにDENONか……DR-70なら丁度良いな……ん?」

 彼は何かに気づいて棚の裏に回った。

「あーそうかそうか、こりゃ確かに出ねーわな」

「あ……あの、」

 先程からえらくしおらしいコロ嬢がおずおずと口を開く。

「もしかして、だ、駄目……なの?」

「あ、雨音くんっ! なんとかならないのっ? ほら、こないだみたいにさ――」

 真貴は完全にこの2匹…もとい2人の保護者モードになっている。

「出ねーとは言ったが、駄目たぁ言ってねーだろ」

 その言葉を聞いてほっと安心した真貴だったが、ふとくだんの二人を見ると、それはもう天使のように眼を輝かせている。余程嬉しいのか両手を胸の前でぎゅっと結んだコロ嬢は目の縁に涙さえ滲ませ、方やポチ嬢は先程までの無表情とは打って変わって無垢な微笑みを見せる。サイドテールに結った銀髪が犬の尻尾のようにぴこぴこと揺れて見えたのは、2人の天使オーラにアテられた真貴の幻覚だろう、多分。


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 大参謀オングーロの中の人の陰険っぷりが炸裂しておりますw

 電音部3年生トリオの反撃や如何に!?

 そして謎のワンココンビの願いは叶うのか!?


 あと漸く菊池俊輔フラグを回収~!!

 このLPは実際に作者の家にありました。

 ~祭りと響一郎が言ったとおり、収録全17曲中、実に11曲を作曲されています。凄過ぎ……(( ;゚Д゚)))


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【特報】


 時は21世紀、史上稀に見る未曾有の災害に見舞われたこの地球を陰から狙わんと蠢く悪の帝国――

 世界を蹂躙する猛威にすべての希望が潰えたかに思われたその時、敢然とそれに立ち向かわんと戦う者が現れた!!

 彼女らこそは地球最後の希望!! 今こそ較正こうせいせよ、キャリブレンジャー!!


 きゃりぶれ! Bonus Disc『劇場版 磁帯戦隊キャリブレンジャー! -出陣!!新たなる戦士-』 絶賛(?)公開中!!


 G.W.連続公開!!

 

 大参謀オングーロ、ブラック、ピンクの中の人は本編では今回初登場です。(おぃ)


 ※磁帯;カセットテープの中国語表記

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