Disc.02『幽霊部員とアクションサウンドとRE-X』
Disc.02 - tr.01『幽霊部員とアクションサウンドとRE-X』
パパ――
あの日、「行ってきます」と扉を開いた姿は、今は、ない。
今朝も、その夢で、目が覚めた。
壁に飾られたレコードに目を遣り、彼女は、小さく呟いた。
「――」
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ソニアは朝から機嫌が悪かった。
今、その元凶を眼前にして腕を組み仁王立ちしている。
つい最近、小生意気な新入部員から『悪役令嬢』と言われて以来、意識して止めていたポーズだが、今回はむしろそれを意識的にやっている節がある。
「――で、」
目の前に取り澄まして座っている元凶――生徒会会計の
「電音部の認可が却下された、というのはどういうことかしら?」
「――どういうことも何も」
呆れ返ったように、まるで子供にでも言い聞かせるように彼は答える。
「正式な部としての要件を満たしていない、と以前から申し上げているではありませんか、深森さん?」
そのいちいち馬鹿丁寧な物言いに煮えくり返る
「こちらも以前から申し上げておりますが、部活動としての認可は在籍部員5名、既に満たしておりましてよ?」
「これでは繰り返しになってしまいますね――」
はぁ、と盛大に溜息を吐いて、
「問題なのはうち2名が名前だけの幽霊部員で、実質3名という報告が上がっている、ということなのですが――」
「それは――」
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座敷童が、居た。
真貴は、一瞬、我が目を疑った。
隣に居る響一郎も流石に驚いたのか、いつものニヤニヤが消えている。
「……え、えーと……」
「……先輩方はまた随分と
いつもの毒舌もいささかキレが悪いような気がする。
その声に反応したのか、部室奥の機材の前に佇んでいた
そう。座敷童は2人だった。
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「――ソニアちゃんもう教室出ちゃったって~~」
「ということはもう生徒会室か! いかん、急ぐぞ、日々希!」
日々希と真紅は今、かなり焦っている。
電音部の認可の件については聞いていた。それで3人で一緒に生徒会室に乗り込む筈だったのだが――。
「やっぱり朝から機嫌悪そうだったって言ってた~~」
「だろうな。しかも相手は相性最悪の国楠と来た。絶対に独りで行かせたら拙い!」
「去年もあわや大立ち回りだったものね~~」
日々希はその細い眼を一層細めて困ったように眉を寄せる。
「やり過ぎて却下どころか取り潰しになってしまっては目も当てられんぞ」
真紅は今から討ち入りにでも行きそうな顔で独りごちる。
「ったく、頼むからせめて私たちが行くまでは自重しててくれよ――」
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くるっ、とこちらを振り向いた座敷童ズ。
その様子に思わず、
「……かっ、可愛いーっ!!」
その場で身悶えしてしまった真貴だったが、
「……え、えーと、あなたたち、どうしたの? どこから来たの?」
迷子かもと思い直し、取り敢えず声を掛けてみる。
それには答えず、黙ってじーっとこちらを見ている闖入者2名。
その視線を追ってはっと横の響一郎を見た真貴は、安心させるように、
「あ、あのねー、私たちは部活動で、この部屋は部室なの。こっちの
「ちょっと待てコラ、しれっとディスるなし。つか人相は失礼にも程があんだろ。愛想が悪いってんならまだしも――」
「え!? あ、ごめん、そっちだ。間違えちゃった」
「間違えたって体で本音が漏れてねーだろな、え?」
「ち、違うよぅ! ただ、あの子たちが怖がってないかと――」
「その発想がそもそも失礼だっつーの」
なんてことを当の二人そっちのけでわちゃわちゃやっていると、
「ねぇねえ、お二人さん」
座敷童の片割れ、黒髪で今時珍しい姫カットの、全体に丸っこい方が響一郎もかくやというニヤニヤ笑いを浮かべて訊いてきた。
「しゃ、しゃべったー!」
「当たり前だろ、幽霊じゃあるまいし」
「お二人は付き合ってるんですかぁ?」
「はぁ!?」
「へっ!?」
何言ってんだこいつ、と眉を
真貴の様子に何かを察したか、ニヤニヤを一層強めて
「あーそっかそっか、青春だねー。でもさー、流石にお年頃の男女が密室に二人っきりってのはまずいっしょ☆」
「あのなぁ――」
「え、いや、ち、ちちち違うよっ!? てか、私たち、1年だからそもそも知り合ったの入学した日だしっ!!」
「いやいやぁ。恋に落ちるに時間は要らぬってね☆ さてはお姉さん、一目惚れだねっ!!」
「えええええ!?」
ぷしゅーっ、と音でもしそうな勢いで顔面が再沸騰した真貴が口をぱくぱくさせていると、響一郎が呆れたように反論した。
「――ったく最近のお子様は耳年増っつーのか。俺とコイツは付き合って無いし、その予定も全く無い。気が済んだか?」
「えー? でもお姉さんの方はどう思ってんだろねー?」
相変わらずニヤニヤが止まらない。
「知るか。てかそもそも、お前ら、どうやってここに入ったんだよ?」
「鍵開いてたよん☆」
「マジか……」
「……あ、雨音くん、言い忘れてたっ!」
先程の酸欠状態から復活した真貴が割って入る。
「部室の鍵ね、日々希先輩から『開けておくわね~~』って連絡来てたの、携帯に」
「おいおい、また不用心な……てか、現に不審者に侵入されてるんだが」
「さっきから不審者だのお子様だの無礼千万な奴め」
今まで黙ってこちらを見ていた当の不審者の片割れ、銀髪サイドテールの細身の少女が初めて口を開いた。
半開きのジト眼でこちらを睨んでいる。よく見るとその眼も僅かに赤みが差している。色素が少ない系だろうか。
「そっちが誰だか判らん以上、不審者には違いないだろう」
「ボクから見ればお兄ちゃんも充分不審者なんだがそれは」
お兄ちゃん呼ばわりされた響一郎そっちのけであまりの尊さに身悶えする真貴は、改めて名乗る。
「あ、ごめんね、名前も言ってなかったもんね。二人とも新入生でここ電音部の部員なの。私は
「……同じく、
問われて、目を見合わせた二人の闖入者は、揃ってニヤリと嗤うと言った。
「「誰だと思う?」」
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