Disc.01『新入部員とパプリカとUR』
Disc.01 - tr.01『新入部員とパプリカとUR』
「だからこんなんじゃ全然駄目なんだよ、あんたら!!」
「ぬわぁーんですってぇーっ!!それが先輩に対する態度かしら!?」
「だから落ち着け、二人とも」
「ケンカは駄目よ~~」
えええええーーーーーっっっっっ!!!!!
……どうしてこうなった!?
眼前で突如として始まったバトルに
<< □ |> ○ || >>
「ふわぁ!!」
校門を潜った
彼女が今日から通うここ―県立
「なんか大昔の外国のホテルみたいだよー!!」
こんな些細なことでも気分がアガる自分に内心照れてしまうが、それでも真貴は機嫌良く校舎へ向かっていった。
<< □ |> ○ || >>
やがて着いたのは半円柱型の校舎の前。
「……ぼ、ボロい……(( ;゚Д゚)))」
そう、その校舎は築70年を迎えるだけあり、至る所に蔦が這い壁面には積年の汚濁が積もり、間近で見ると遠目で見た印象とは真逆の殆ど廃校舎の体であった。いっそ幽霊屋敷と言っても良いくらいだ。
ふと、少し離れた場所から同じように校舎を見ている男子生徒が目に入った。真貴よりかなり背が高く―180cmを越えているだろうか―そのためか猫背気味で某汎用決戦人造人間を思わせる。髪はかなりの癖っ毛なのか天然パーマ宜しく四方八方に撥ねている。これでお釜帽でも被ったらあの名探偵のようだ。―そんなことを彼女がぼーっと考えていると、
「貴方がた、ここは今の時間は立ち入り禁止ですわよ」
その立ち入り禁止と言われた校舎から出て来た少女に言われた。彼女も背は真貴より高く、全身もすらっとしてモデルのようだ。腰まで伸ばした緩いウェーブの髪も綺麗だと思ったが、輪を掛けて凄いのはそこから耳の前に垂らされた長い縦ロール。今時こんな少女漫画のテンプレのような髪型があるもんだと感心して見惚れていると、
「貴女とそっちの男子、お二人とも1年生ですわね。ここは原則昼休みと放課後しか空いていませんから、部室見学ならその時にいらっしゃいな。朝のHRも始まりますから早く教室へお行きなさい」
言われてよく見ると、縦ロール嬢の制服には青色の名札がある。3年生だ。真貴は慌てて。
「は、はわわっ!! ごめんなさい!! また来ますっ!!」
と踵を返しかけて向こうにいる背高のっぽ君を見ると、彼は一瞬呆けたような顔をしていた。
―あぁ。彼氏も先輩に見惚れてるのかぁ。女の子から見ても超絶美人さんだもんなぁ。
と思っていたのだが。
「おぉ……リアル悪役令嬢だ……」
「は!?」
言われた刹那は意味が解らなかったようだが、直後にそれを理解した当の"悪役令嬢"先輩が一瞬、羅刹もかくやといった表情になったのを見て血の気が引いた真貴は全速力でその元凶の男子生徒を掴むと、
「お騒がせしましたーっ!! 失礼しまーすっ!!」
彼を引っ張って全速力で教室に向け遁走した。
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漸く自分の教室の前まで辿り着き、ぜいぜいと息を荒げる真貴を不思議そうに見下ろす件の男子生徒。
「―急に引っ張るな。驚くだろう」
「……お…驚いたのはこっちだよ……あと一瞬遅れてたらさっきの先輩に怒られてたよ……」
「何で怒られなきゃならん?」
「あ…当たり前でしょ……初対面でいきなりあんなこと言われたら…怒るよ普通……」
「俺、なんか怒らせるようなこと言ったか?」
「じ、自覚無いのーっΣ(°д°lll)」
とうとう教室の前でへたり込む真貴。
「もういいや……放課後、さっきの所まで付き合って。先輩に謝りに行こうよ」
「だから何故に俺が」
「い・い・か・ら!!」
ビシィッ!!と人差し指を突きつけて彼を睨め付ける。
「それじゃ、放課後ね!! 私ここだから」
教室に入ろうとすると、彼も後からのそっと入ってきた。
「ちょ、自分の教室に戻りなよー」
「ここだ」
「へ?」
「俺のクラス、ここ」
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朝のHRで自己紹介をする面々をぼーっと眺めつつ、真貴は先ほどの彼の自己紹介を反芻していた。朝一で全力疾走したためか、まだ息が荒い。
「―
ここでちょっとウケたのか小さく笑いが起こったが、彼は意に介するでもなく
「趣味は音楽。聴く専。あと旧いオーディオ機材を弄ること」
それだけ素っ気なく言うとすとんと席に着いた。
あまね、きょういちろう。あまね、だと女の子っぽいなー。イチロー? キョウくん?
「―藤與」
「次、藤與真貴!!」
ぼーっとしていたらいつの間にか自分の番だった。軽く笑いに沸く教室の中、顔を真っ赤にして立ち上がる。
「ふ、
ここで一呼吸置く。落ち着け、私。
「ここは部活動もたくさんあるから楽しみです!! 宜しくお願いします!!」
と巻き気味に言って席に着く。
「部活を頑張るのも良いことだが、勉強も頑張ってくれよ?」
と担任教師がコメントすると今度こそ教室中が沸いた。
真っ赤になって下を向いている間にも自己紹介は滞りなく進む。
ふと視線を感じて後ろの席を見ると、響一郎がニヤニヤしながらこちらを見ていた。
思いっきり目力を入れてギヌロッ!!とばかりに彼を睨んでやると、一瞬、目を見開いて口を窄める。声は出ていないが「ワぁを」と言ったように口が動き、肩を竦めた。欧米か、とこちらも無言で口だけ動かすと、彼はふっと柔らかく微笑んだ。
「―っ☆△□○!!」
あれは、ズルい。更に真っ赤になった顔を落ち着かせようと再び下を向いた真貴は、先程から落ち着きの無い自分の心臓の辺りをHRの間じゅう撫で回していた。
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