ハテノハツカ……03
轟音。
なにもない。色も形も失った世界。
木々も、せせらぎも、ここではすべての生命が白く包み隠される。
絶え間なく吹き付ける氷の結晶は、異物を感知した白血球のように次々と貼りつき、私の体を覆ってゆく。
風は大きな塊となってうねり、私を容赦なく殴りつける。いくら口を開けても、萎みきった肺に空気が入ることはなかった。
全身が引き裂かれる。凍りついた髪の毛が頬を打つ。
感覚を失った手足は所在なく垂れ下がる。他人の死体を振り回すような気分で雪をかき分けて進む。
上っているのか、下っているのかもわからない。どれほどの時間が経過したのだろう。耳鳴りが酷い。
視線の端に人影を捉える。誰かいるのだろうか。大声で呼んだつもりだったが、実際に吐き出されたのは絞り出すようなうめき声のみだった。
距離にして数メートル。やっとのことでたどり着き、誰かの肩に手を伸ばす。
──それは、枯れ木だった。
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