無限の戦争
マドカ
無限の戦争
いつまでもいつまでも繰り返される戦争。
今回は果たして何回目の出陣か。
百を越えたあたりから数えるのを辞めた。
例え今回勝利しようが、この戦争はいつまでも繰り返されるのだ。
権力者が死を迎えるか、あるいはこの戦争行為を終焉しえうる理由がなければ
決してこの戦争は終わらないのだろう。
最初のうちは兵士になれた嬉しさで、縦横無尽に暴れたものだが、
終わりの見えぬ戦争ほど精神を磨耗させるものはない。
それでも開戦されると進軍せねばならぬ、仲間が幾人犠牲になろうともだ。
人類の歴史を紐解くにつれ、こういった無意味な戦争が一体何度繰り返され、、、
「おい!!!! 指示が聞こえないのか!!!! そろそろお前の出番だろう!?」
「! あ、あぁすいません。 考え事を少ししていまし、、」
「兵士に思考は不要!!! 動けクソが!!!」
理不尽な縦社会だ。
そして覆ることのない上下関係。
心の中で舌打ちをする。
そして仕方なく前進する。
「そういう物の言い方はよくありませんね。 立場は上でも怒鳴るのではなく、諭して聞かせるものです。」
戦地常駐の僧侶様が騎士をたしなめる。
この光景も幾度となく見てきたなぁ。
「、、、申し訳ありません。 しかし我々は戦に置いて神に忠実でなければならず!
思考など不要なのです!
やつも戦場が長い癖にそれがわかっておらぬから腹が立つのです!」
あのバカ上司め。
丸聞こえだ。
この戦争の無意味さに気付きもしない、盲信ぶり。
ある意味尊敬するよ。
はぁ、、、
「!!! おい!! 危ない!!!!」
クソ上司が吠える。
? 何がだ? いつものことだろうが?
俺らの役目は大体ここまでで、次の戦争に持ち越されるんだろうが。
「おい!! ●●●!!! お前の命が●★●◯!!!」
それが最期の言葉だった。
聞き取ることは出来なかった。
俺は初めて死んだ。
恐怖よりももう戦争をしなくていい安堵が、全身を包み、、、、
***********
「おっと」
手にした瞬間にガシャっと崩れ落ちる。
「ふぉっふぉ、長年使ったんでガタが来ておったんですかいのう。」
好好爺がニヤニヤして語りかける。
「確かにお互い仕事を隠居して約20年は使い続けたからのう。 盤も傷んでおる。」
浅黒い肌、長い髭の翁がそう応える。
「とりあえずこの壊れたポーンは代理駒でライターを置きますかの。 さて、今回は儂が有利じゃぞ。 再局じゃ。」
「何、今までの戦績はほぼ五分じゃ。 まだまだこれからじゃぞい。」
そしてまた戦争は繰り返される。。。
******
チェスは、8世紀にはロシアに伝えられ、約100年遅れて西ヨーロッパへ伝わった主に西洋ではポピュラーな2人で行うボードゲーム、マインドスポーツの一種である。
先手・後手それぞれ6種類16個の駒を使って、敵のキングを追いつめるゲームである。
その文化的背景などから、チェスプレイヤーの間では、チェスはゲームであると同時に「スポーツ」でも「芸術」でも「科学」でもあるとされゲームに勝つためにはこれらのセンスを総合する能力が必要であると言われている。
「戦略」、「戦術」を駆使し、決着は相手のキングをチェックメイトすることにある。
今作登場駒。
主人公 ポーン(歩兵)
上司 ナイト(騎士)
僧侶 ビショップ(僧正)
無限の戦争 マドカ @madoka_vo
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