第100話(評価)




「………………報告にはあったが………」


「……………(話には聞いていたがあそこまでの力とは)」



大会を観戦していた大臣とガネック伯爵の2人は、先程の"影武闘会"でイルマ達が見せた実力に驚愕していた。


イルマ達の実力に驚愕していたそんな大臣とガネック伯爵の2人に声を掛けてきた人がいた。



「ほぉ、あの者達がチユルの町での報告にあった子供達か」


「「ッ!?──こ、国王様!?」」

───バッ──


大臣とガネック伯爵は、自分達に話し掛けてきたのが国王様であることに気付いた瞬間に頭を下げる。国王様は護衛を連れて大臣とガネック伯爵の元に来たようで、国王様は大臣とガネック伯爵と話をする為に連れて来た護衛を後ろに下げる。



「よいよい。大臣にガネック伯爵、面を上げよ。頭を下げたままだと話がしにくいではないか」


「こ、国王様!し、しかし」


国王様の言葉に渋る大臣。


「────わかりました。国王様」


渋る大臣とは違い、ガネック伯爵は国王様の言葉に従い下げていた頭を上げる。


「ガネック伯爵!!」


「よい、大臣。余が許可したのだから」


「ぐっ───わ、わかりました国王様」



簡単に国王様の言葉とはいえど頭を上げるガネック伯爵に苦言を上げる大臣だったが、国王様から再び許しの言葉に引き下がる。


「──ふむ、これで話の続きを出来るな。しかし、あの子供達の実力には驚いた。チユルの一件、報告には聞いていたが正直信じてはおらんかったが、先程の光景を見ればガネック伯爵の報告については信じるに値する」


「こ、国王様!?ま、まだその事は審議中の話であって答えを出すのは「大臣、その事は重要ではない」──っで、ですが!?」


国王は大臣の意見を却下し、大臣はそんな国王様に話を聞き入れて貰えるよう食い下がる。



「───ガネック伯爵、正直に答えよ。あの子供達の実力はアレで全てか?」


国王様はそんな大臣を無視してはガネック伯爵にイルマ達の実力について目を細めて問いかける。


そんな国王様の視線にガネック伯爵は唾を飲み込み、国王様の真意を不敬にならないように慎重に口を開いては言葉を返す。



「…………っといいますと?」


「………あの子供達の実力は先程の光景を見て驚愕した。強靭な肉体や無尽蔵のスタミナ、闘気を駆使する少年。多数の魔法を自在に操る少女。使い手が希少な聖属性を加えられた上に大量の魔物の攻撃にびくともしない結界術と風と氷の魔法を操る少女。それらの力を越える力を多数の技能を同時に発動しては発揮する少年────見せる者達を


国王様はイルマ達の実力に、イルマ達の年齢でそこまでの実力を見たことはないとハッキリ明言する。


「あの子供達の実力は先程の光景だけでも上級冒険者の域に達していると余は認める。チユルの一件もあの子供達なら可能であると今なら信じられる程だ。正直、あの子供達の実力には脱帽している。よくあの年齢であれ程の力を手に入れたのだと。…………あの年齢であれ程の力だ、ならこれから大人へと成長する中であの子供達はどれだけその力を身に付けるのか余は想像出来ない」



ガネック伯爵と大臣は自身達もイルマ達の実力に驚愕していたが、まさか国王様の絶賛の評価にそこまでっと口が開く。


そんな大臣とガネック伯爵に国王様は何も反応せず話の続きを口にする。


「───問題は大人になったあの子供達にこの国で勝てる者がいるのか?である」


「「ッ!?」」


国王様の指摘に大臣とガネック伯爵はあっと互いの顔を見合わせる。


「現在の段階で上級冒険者の域に実力は達しており、Aランク災害クラスの魔物をも倒した子供達がどれだけの力を身に付けるか想像出来ない子供がそれも4人もいるのだ。────ガネック伯爵、大臣。その上で聞く、重要なことはチユルの一件ではない。既にチユルの一件の過ぎた話はどうでもよい。それよりもあの子供達の手綱をどう握るか、どう良好な関係を築けるか、この国に仇を成さないようにしていくかだ」


「こ、国王様。そ、そこまでお考えをあの子供達に………」


「そこまでの話だ大臣。あの子供達の実力は今の段階では上級冒険者の域だが、あの年齢から考えたら将来英雄クラスになると余は予想している。ふむ、もしくは英雄クラスよりも上にかもしれん」


「………………………(確かに先程の光景を見たら国王様がそうお考えするのも仕方ない)」


国王様の言葉に大臣とガネック伯爵は確かにっと内心で思い、頭の中でイルマ達とこれからどう良好な関係を築くや万が一に備え手綱を握るにはどうするか考える。


そんなことを考えていた大臣とガネック伯爵だったが、ガネック伯爵に国王様は再度最初の質問を問いかける。


「──で、ガネック伯爵。先程の話を踏まえて聞くがあの子供達の実力はアレで全てか?」


「───全てか?と正直に国王様に答えますと、あの子供達、イルマ君達の実力は私も全ては把握は出来てませんので分かりません「ガネック伯爵!貴様分からんじゃと!?」……チユルの一件を報告したように、私もイルマ君達の実力は他の者からの報告で聞いたり、訓練の様子を見学して知ってるだけであって、先程までの力を見たのは初めてです。ただあれ程の力を持っている話はあのイルマ君達の担当教官から聞いていたりして知っていました。そして国王様の質問ですが、私の想像で確証はないのですが全てではないかと」


「ガネック伯爵!貴様確証が無いだと?国王様にデマカセを伝えているのではないのであろうな!!」


ガネック伯爵の確証が無い発言に大臣が噛みつく。



「まぁ待て大臣「国王様しかしっ………はぁ!」………ガネック伯爵。何故全てではないと?」


ガネック伯爵に噛みつく大臣を国王様は引き下がらせてガネック伯爵に想像の理由を尋ねる。


「はい。それはイルマ君達が今の自分達の力に溺れて力を磨くことに怠る子供達ではないことを知っているからです。あの子供達は、私と契約した後も私と契約している他の冒険者や担当教官と訓練に励み、大臣から今回の大会参加を伝えた後も力の研磨をしていたからです。なので私が把握している力以上の力を備えていると思っているのです」


「………ふむ。成る程」


「…………フンッ!それを先に言わんか!」


ガネック伯爵の説明に納得した国王様と減らず口を叩く大臣。


「ならばあの子供達については、国に仇を成す者達だと仮定したとしても慎重な対応が求められる訳だ。大臣、あの子供達ダン、メラ、シーラ、それにイルマだったかな、あの4人についての対応は慎重に行うように」


「「はぁ!その通りに!」」


後チユルの一件は報告は虚偽ではなかったと対応するのだと国王様は告げ、大臣とガネック伯爵との話で用件が終了したこともあり護衛を連れて席を離れて行く。












◆◇◆◇


観客席で国王様や大臣とガネック伯爵がそんな話をしていたことはイルマ達は知らず、"影武闘会"で無事に勝ち上がれた事実に喜んでは次の戦いはどんな戦いを行うのだろうと、僅かな緊張とワクワクした気持ちを抱いて再び控え室で待機していた。


控え室には"影武闘会"の戦いに勝ち残った他の大会参加者達もいたが、皆イルマ達の力を目の当たりにしてイルマ達に警戒の眼差しを向けていた。


そんな待機していたイルマ達に声を掛かる。


「…………ちょっといいか?」


「あん?──ッお前はセイナ!!」


「───ッ何よ?」


「…………次の戦いがあるから遠慮したい………」


「まぁまぁ皆───で、何ですかセイナさん?」


何だろう?セイナが僕達に話掛けてきた理由は。先程の戦いを見て興味もしくは危機感を抱いて接触してきたんだろうけど、セイナの目的は何だ?

暴力的なことをしてこられるのは勘弁して欲しい。僕達は虚偽の報告をしていないと大臣達に証明しないといけないから此処で大会を退場になるのは不味いし。



そうイルマ達に話し掛けて来たのはあのソロの上級冒険者であるセイナである。周りにいる他の大会参加者達はこの大会の注意人物達が話し合う光景を興味深そうに自分に被害がないよう気をつけては耳を傾ける。

そしてチユルの一件が国王様の意見によって虚偽の報告をしていないことを証明する必要がないことを知らないイルマは、セイナに話し掛けられて暴力的な展開になることを警戒しながらセイナにどうしたのかと問いかける。



「……………お前達は何者だ?」


「はぁ?俺達が何者だ?どういうことだよ!」


「………お前達の年齢であれ程の力を持っているなんて信じられない………この俺でもお前達位の年齢の時はそこまでの力は持っていなかった」


「私達は冒険者見習いよ。年齢制限もあってね!」


「……後、冒険者養成所の卒業生でもある」


「何?冒険者養成所の卒業生だと?」


「「「「(冒険者養成所の卒業生!?)」」」」


イルマ達が冒険者養成所の卒業生である事実に話に耳を傾けていた周りの者達は驚くがだからあれ程の力を持っているのかと納得する。


しかし、


「いや、冒険者養成所の卒業生でもあれ程の力を持っているなんて信じられない。しかも冒険者見習いである事実から見た目相応の年齢であの実力何て信じられる訳がない」


「何よ!私達が嘘を言っているとでも?」


「メラ!噛みつかない!」


「…………お前達は何者であるかこの際別にどうでもいい」


「………自分で聞いてきた癖に」


「「「「(確かに………)」」」」


「フンッ!その年齢であれ程の力を持っていることには正直驚いたのは事実だが、この大会で優勝するのはこの俺だ。それを覚えておけ!」


「何だ?お前は俺達を警戒してのか?」


「ダン!皆いちいち噛みつかない!すいません、セイナさん。でもこの大会で優勝するのは譲りませんよ?僕達も負ける気はないので……」


「なら次からの戦い、俺と戦うことになれば覚悟しておくことだな!お前達の力は先程見せてもらった、あの力位では俺に勝てると思うなよ!」


「あぁん!?さっきので俺達の力を見切ったとでも言うのかよ!いいぜ、そっちこそ俺達と戦うことになってもいいように覚悟していやがれ!!」


「そうよ!覚悟してなさい!」


「………返り討ちにしてやる」


「ッ──フンッ!」


セイナはイルマ達の返事に、もう話すことはないのか不機嫌そうにしながらイルマ達の前から立ち去る。



「(皆噛みつき過ぎだよ!もしセイナがキレて暴力に訴えて来たらどうするんだよ?大会を今退場したら不味いんだからな!も~、負けん気も此処まで強いとキツく注意しないと、今回は助かったけど今後問題になるかもしれないぞ!)」



セイナとの会話は互いに戦線布告で終わるイルマ達。

セイナに暴力に訴えてこられたら不味いのに、それでも噛みつくメラ達にイルマはキツく注意しないと決意する。

しかし、今は大会中なこともありメラ達への注意は大会が終わった後に行うことにしたイルマ。


そのイルマの決意に、セイナに噛みついていたメラ達は先程までの負けん気が謎の寒気(イルマからの説教)に襲われて引くのである。



「はい、皆さん。次の戦いの準備が出来ましたので、私に着いてきて下さい」


「「「「ッ!!」」」」


──もう次の戦いが始まるのか………



イルマ達がセイナと話をしていると、大会の係の者が次の戦いの準備が出来たと大会参加者達を呼びに来た。


その係の呼び掛けに、イルマ達や他の大会参加者達は次の戦いに気持ちを移行するのであった。

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