第99話(影武闘会&イルマ達の無双)




「でこの大会2種目は、この魔道具を使った"影武闘会ドッペル・ファイト"だ!!」


「「「影武闘会ドッペル・ファイト!?」」」


「そう影武闘会ドッペル・ファイト!大会2種目はこの魔道具【映し鏡】でこの武闘会で捕獲している魔物を映して、お前らが生み出された影の魔物を倒していく戦いだ!!」


「影の魔物を倒す!?」


「どういうことだ!それだけだと全然説明が足りないぞ!」


「何だ?今度は魔物を、それも魔道具で生み出された魔物を倒していくのか?」


「何だそれ!面白い!実況、早く始めろ~!!」



大会実況者の宣言内容に大会参加者達は再び困惑を、逆に会場の観客は普通では見られない光景を想像しては興奮を隠せずに早く戦いを始めろと叫ぶ。



「OKOK!期待に答えて始めたい所だが、その前に2種目の戦いを始める為にルールを説明するぞ?ルールは大きく分けて4つだ!①大会参加者は【映し鏡】で生み出された影の魔物を魔道具の能力発動している10分間の間に倒すこと②10分という制限時間内に倒した魔物の強さと数で得点を争う③制限時間内に生み出した魔物を全て倒せない、もしくは影の魔物に敗れたりしたら脱落④大会参加者達は①~③の条件を考慮して自分で生み出す影の魔物の強さと数を決めることだ…………ルールは理解出来たか?」



大会実況者は2種目の影武闘会のルールを会場にいる全員に聞こえるように大きな声で説明する。そして、実況者が説明した内容が文字を映し出す魔道具で武闘会の会場にいる全員に見えるよう映写される。


この大会2種目の説明に大会参加者達は、



「なら得点をより稼ぐ為には、強い魔物を沢山生み出して制限時間内に倒せばいいんだな?」


「アホか。そんな単純な話じゃねぇぞこれは」


「そうだ、もし制限時間内に一匹でも生み出した影の魔物を倒せなかったり、欲をかいて自分の力量以上の強い魔物や数を生み出してしまえば魔物に敗れて大会を脱落しちまう」


「実況者!生み出す影の魔物の強さと数に応じて得点って、基準はどうなっているだ!?」


「それと今回は戦うのは1人ずつなのか!?」


「その質問の答えや他の細かいことだが、その答えはこれだ!」



大会参加者達の質問に答えるように実況者の声に合わせて、先程2種目の内容を映していた魔道具が質問の答えを映写する。


───────────────────

・戦いは各自1人ずつ行う。

・魔物の一匹ごとにポイントを加算。

・魔物のランクに応じて獲得ポイントを加算。


Bランクの魔物→50ポイント

Cランクの魔物→20ポイント

Dランクの魔物→10ポイント

Eランクの魔物→2ポイント

Fランクの魔物→1ポイント


※Gランクの魔物は数多くいても対処が容易いこともあり除外

───────────────────









「おおっ!」


「なるほど。これなら弱い魔物を多く倒して地道にポイントを稼いで得点を増やすことや、ある程度強い魔物を倒してはポイントを安定して稼いだり、魔道具の限界であるBランクの魔物を映し出してポイントを荒稼ぎすることも可能だな!」


「この2種目の戦いは、只戦闘能力が高いだけでなく、制限時間に戦う魔物の相性や自分の戦闘スタイル、対処可能の数等に応じた戦略が問われる戦いになるな………」



観客達は映し出された2種目の戦いのルールを見て、2種目の戦いは弱い魔物を数多く倒してポイントを稼ぐかある程度強い魔物を倒してポイント稼ぐ、それとも強い魔物を倒すことで一気にポイントを荒稼ぎする等色々な戦闘光景のパターンを予想したり、戦闘能力が高いだけではなく時間に相性や戦闘スタイル等戦略を立てなければ勝ち上がれないとこの戦いの必要な力を分析したり戦いの様子を想像していた。



「……チッ、どうする?どう選択したらいい?」


「ただ戦うだけじゃなくて、どう戦うかを考えないといけないのかよ………俺、考えることが苦手なのによ~」


「(弱い魔物を数多く倒そうとしても制限時間があるから多くのポイントを稼ぐことは難しい。だからといって強い魔物を数多く生み出せば、制限時間内に倒しきれず脱落するリスクがある。なら制限時間内に確実に倒しきれる魔物の強さや数だとポイントが伸びない…………悩む……)」


「……………(此処は無理せずDランクの魔物をある程度映し出すのが正解だな。Dランクの魔物ならある程度数を生み出しても確実に制限時間内に倒しきることが出来る上に脱落のリスクが低い。それでいてポイントもある程度稼ぐことが出来るからな)」


「よし、考えるのは止めた。俺は他の奴の戦いを見て決めよう!」


大会参加者達は明かされた2種目の内容に頭を悩ましてはどう戦うか検討する。中には考えることを放棄して他の者達の戦いを見て決めようとする者馬鹿な奴もいた。



「いつまで考えているんだ!」


「そうだ!俺達は戦いを見に来たんだ!早く戦いを始めろ!」


「実況!さっさと開始の合図を告げろ!!」


「おっと、これは観客の皆様がもう待ちきれないみたいだな!なら今から2種目の戦いを始めていくぜ!ほら、大会参加者は自分の名前が呼ばれたら舞台に上がって、【映し鏡】に生み出す影の魔物の強さと数を選択して戦いを始めろ!!」



大会参加者達のどう戦うか考える時間は戦いが待ちきれない観客達の声を聞いた大会実況者が2種目の戦いの開始の合図によって終了する。


そして、大会参加者は自分の名前が呼ばれた順に舞台の上に上がる。



「…………えっ?………マジ?………いきなり俺から戦うの?…………嘘…………」



最初に舞台の上に上がり影の魔物と戦うことになった大会参加者は、先程どう選択して戦うのかを考えることを放棄した者であった。



「アイツ、さっきどう戦うか考えるのを放棄してた奴だぜ?」


「アホだな」


「ああ。最初の脱落者はアイツだな」


「そもそも自分がどう戦っていくのか、他の奴の考えで決めようとしたのがおかしいだよ。そんなんでよくアイツ勝ち上がれたな」


その通り。


「戦闘能力だけは有っただぜ、きっと」


「だな」


他の大会参加者達は、舞台の上に上がった男が頭から大量の汗を流してどうすればいいのか今頃考えて焦っているの姿を見ては、最初の脱落者はアイツだな、と馬鹿にしていた。




「ど、どどどどどうすれば、ど、どう選択して戦えばいいんだ!?────」


「ほら、早く生み出す魔物のランクと数を選択して下さい!!」


そして、焦っていた男は大会の係の者に早く選択するようにと急かされながら生み出す魔物の強さと数を選択し、男が選択したランクの魔物を大会の係の者が捕獲していた魔物を【映し鏡】の前まで誘導して映し、【映し鏡】を操作することで影の魔物を舞台の上に出現させる。



"影武闘会ドッペル・ファイト"の始まりは、馬鹿な大会参加者の男が焦りのあまりよく考えずに選択した強い魔物のランクと対処出来ない数の魔物を生み出したことによって、知性の代わりに高い戦闘能力を発揮することなく蹂躙されたことで始まったのであった。


















◆◇◆◇


───ワアアアアアァーー!!


───いけぇーー!やられるなぁーー!!


───スゲェ!?アレだけの数の魔物相手にあれだけの戦いが出来るなんて!?


───おっ!今度の奴は数でポイントを稼ぐみたいだな!

Fランクの魔物、レッサーウルフやビッグラビットの影を大量に生み出して倒しているぞ!


───次の奴はオークだ!Dランクの魔物であるオークの影を生み出しては倒しているぞ!


───今度の奴は………あっ、こいつ狡いぞ!単体なら弱い魔物である魔物使いの影を生み出してポイントを荒稼ぎしてるぞ!



「──俺は無理せずに、弱い魔物を倒してはポイントを稼ぐ作戦で勝負だ!」


「私はある程度強い魔物を倒してポイントを稼いで勝ち残る!」


「(馬鹿な奴らだ)ククククッ、俺は他の奴らと違って周りの目を気にせずにルールの抜け穴をついてポイントを稼ぐぜ!」




影武闘会ドッペル・ファイトが始まって暫く経った頃、


より多くのポイントを獲得出来るよう大会参加者達は、各自実力相談しながらと他の大会参加者達の選択を見ながら生み出す影の魔物の強さと数を選んで戦いを繰り広げていた。




流石自身の力に自信があり大会に参加し、バトル・ロワイアルに勝ち上がってきただけあり最初に影の魔物に蹂躙された馬鹿な参加者以外の男以外は見事な戦いを繰り広げる。


大会参加者達はそれぞれ自分の実力に見合った選択や確実性を重視した作戦、大会のルールの抜け穴を突いてはポイントを稼いでいった。


しかし、


必死にポイントを稼ぐ大会参加者達だったが、やはりその中でも別格な存在がいた。

それは注目人物にして危険人物の噂があるセイナではない。

勿論、セイナも他の大会参加者達よりもソロの上級冒険者としての実力を発揮して、Bランクの魔物であるブラッディ・ベアー やロック・サイホーンなどの魔物の影を何体も生み出して倒すことで他の大会参加者達よりも頭1つ、2つ上の力を闘技場にいる者達に見せつけていた。


だが、




「………………う、嘘だろ?………何者なんだ、あの子供達は……」



そんなセイナの目の前には、影の魔物相手に無双しているイルマ達の姿があった。


最初子供であるイルマ達が戦い始める様子を見ていたセイナは、大会一種目のバトル・ロワイアルに勝ち上がったのだからある程度の力は持っているか、逃げ回ったり、仲間の他の子供達と協力して戦ってきたのだと思っていた。


しかし、セイナの目の前に映る光景はそんな予想を裏切る光景だった。



「───ハアアァァァァァァーーッ!!」


ダンが固有技能【戦気覚醒】を発動し、その【戦気覚醒】の力で魔道具【映し鏡ドッペル・ゲンガー】の能力で生み出されたCランクの魔物であるオーガ、それも複数体の影の魔物相手にダンは年齢に対して大きい身体だが、巨体のオーガに比べたら大人と子供以上の差が有るのにその巨体を物ともせず大きくなぎ払い、時には吹き飛ばしたりしてまるで身体の大きさが逆になったのかと錯覚したと思わせる戦いで複数体のオーガを倒す。


「───魔法、多重発動!ほら、存分に私の魔法を喰らいなさい!!」


続いてメラも戦いが始まり固有技能【魔道深域】を発動し、【魔道深域】の力で多重に発動させた魔法を支配して自分の周りに浮かばせ、ダンと同じく生み出されたCランクの魔物の影の魔物に多重に発動させた魔法を放ち生み出したCランクの影の魔物を大量に倒す。


「───どれだけ攻撃しても私には攻撃は通らない」


シーラも固有技能【不浄聖鈴】を発動し、大量に生み出された影の魔物、こちらは以前ポルカの森で戦ったことがあるクロォー・カラパイア相手に【不浄聖鈴】の力で発生させた結界で攻撃を寄せ付けず、逆に結界に対して攻撃を放つクロォー・カラパイアに一方的に風と氷の魔法を放ち倒す。


そして、


仲間の中で最後に戦いを行うことになったイルマはというと、



「(皆負けず嫌いだなぁ~、ダンが確実に勝ち上がる為に固有技能を発動させて影の魔物を大量に倒すのを見たメラやシーラは、自分達も固有技能を発動させて影の魔物を大量に倒してポイントを荒稼ぎしている。よ~し、それなら僕も皆に負けてはいられないな!)…………僕も皆に負けないようにこの際後の事は気にせず力を出していくぞ~~!!───固有技能【開示】発動!続いて技能≪剣術≫≪格闘≫≪疾走≫≪射撃≫≪気配察知≫≪気配遮断≫≪鷹の目≫≪魔力感知≫≪腕力強化≫≪脚力強化≫≪身体活性≫≪空間認識≫≪魔力活性≫≪体術≫≪魔刃≫≪循環術≫≪蓄積≫≪隠蔽≫≪罠作成≫≪闘気≫≪魔力視≫≪術式≫≪強化術≫────技能多重発動!!」




イルマはダン達の戦いを観戦した後、自身も仲間達同様に影の魔物相手に自分の力を発揮させて、大量に習得している技能を思う存分に発動させて影の魔物相手に戦いを始める。





───≪≪≪ギャ?───ギャアッ!?≫≫≫────



そんな大量の技能を発動させて戦いを挑んできたイルマに、影の魔物は最初は何だ?、と思った瞬間に自分達をとんでもない力で倒しにかかるイルマに悲鳴を上げるのであった。








そして大会2種目"影の武闘会"は、大会参加者達が影の魔物相手に勝ち上がる為に必死に戦いを繰り広げている中、イルマ達が影の魔物相手に無双してポイントを荒稼ぎ、他の大会参加者達や闘技場にいる観客達の度肝を抜きイルマ達がとんでもない存在であることを思い知らせるのであった。


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