第98話(注目の男"百弾のセイナ"!)



≪控え室≫


「───ふぅ~~、何とか生き残ったぜ」


「………疲れた……これでもまだ大会は始まったばかりなんだよな………」


───ドサッ───


バトルロワイヤルで生き残った者達は、次の戦いに備える為に闘技場の舞台から控え室に下がってはバトルロワイヤルでの疲れから腰を控え室の椅子や地べたに降ろしてそれぞれ楽な姿勢になり、体力や怪我の回復を行っていた。


勿論バトルロワイヤルに生き残った者達全員がそんな状態ではなく、イルマ達や大会に参加した者達で上位の実力者達は自然体の上、他の大会参加者達に弱みを見せないようしていた。



「…………ふん、大会が始まったばかりなのに、今の段階でそんな様子だと、お前達は次の戦いで脱落するだろうね」



そんな中、大臣とガネック伯爵が噂してたりイルマ達が注意人物として注目していた金髪の男が、疲労や怪我から楽な姿勢を取っては身体を癒していた者達に挑発の言葉を投げ掛けたのである。



「あ? 何だと……」


「お前………今何って言った?」


「何だ?聞こえなかったのならもう一度言おうかい?そんな様だと、次の戦いで脱落するだろうね」

──ハッ──



挑発の言葉を投げ掛けられた男達は、金髪の男に今何て言った、と睨みながら聞き返すと金髪の男はそんな男達に鼻で笑いながらもう一度同じ言葉を男達に投げ掛ける。


──ガタッ────


そんな金髪の男の態度と挑発の言葉をもう一度言われた男達は、怒りを露にしては疲労や怪我の痛みを気にせず椅子や地べたに降ろしていた腰を上げては金髪の男に掴みかかろうとする。



「な、何だ?」


「お、おい!止めとけ!」


「そうだぞ、落ち着けって! それに、こんな所争争っていたら、大会を退場させられるぞ?折角バトルロワイヤルに生き残ったのを無駄にする気か?」


「そうだぜ、止めろよ。俺達まで飛び火が来たらどうしてくれるんだ」



現場を見たり聞いていた周りの者達や、争いの気配を察した者達が自分達の利益の為にも争いを止めようと男達と金髪の男の間に入って仲裁する。




しかし、



「うるせぇー!!止めんじゃねぇよ!」


「そうだぜ!こいつが俺達を馬鹿にしたのが悪いんだ!」



金髪の男に舐めた態度と言葉を投げ掛けられた男達は、怒りの感情に飲まれて仲裁を無視する処か仲裁に入った者達を手で振り払い、金髪の男にその怒りをぶつけるようと手を出そうとする。



「(チッ! ……コイツら頭に血が上って話を聞く気がねぇ。それなら相手の方に謝らせるしかないか)おい、アンタ、アイツらに謝った方が………!?」


「な、何だ、どうしたんだ?……………って、アイツは!?」



争いを止めようと仲裁に入ってた者達は、挑発された方が怒りに飲まれて自分達を振り払った様子から今度は挑発した方に謝るように金髪の男に声を掛けようとした際、金髪の男の正体に気付き驚愕する。



「─────お、おい、止めろ!!お前達が手を出そうとしているそいつは、だぞ!!」



金髪の男の正体に気付いた者は、金髪の男が実力行使に移る前に慌てて金髪の男の正体を叫ぶ。



「な、何!?」


「せ、セイナ!?」


「「「──ッ!?」」」

─────ピタッ────



その叫び声を聞いた周りの者や、金髪の男に手を出そうとしていた男達は、その驚愕の事実から一斉に身体の動きを止めた。



そして、



「な、何……だと?」


「せ、セイナ?………この金髪の男が………あのセイナ?………嘘だろ?」



金髪の男の正体を叫んだ者を方を見ていた挑発された男達は、その叫び声の事実を確認するために恐る恐る今自分達が手を出そうとした金髪の男の姿を確認しては、金髪の男と上級冒険者セイナの特徴を見比べる。



「(………お、おい、この男が背中に背負っている武器、弓と剣だぞ)」


「(あ、ああ………それに鎧は皮の鎧と、軽装の鎧を纏っているし、髪の色も金髪………間違いない。特徴が一致してる)」


「───ってことは………俺達はに手を出そうとしてた?」

──ジーー



その結果、



「────≪ビクッ≫………ま、間違いない。金の髪に、軽装の皮の鎧を纏い、背中に剣に弓、異なる武器を扱う男。こ、この男!ほ、本当に、あのソロの上級冒険者─────────百弾のセイナだ!!」


「「「!!!???」」」



男達か金髪の男と上級冒険者セイナの特徴を見比べて見た結果、金髪の男が上級冒険者セイナであることが間違いないと判明する。


そして男達は上級冒険者セイナに自分達が手を出そうとした事実に、恐怖の感情と共にセイナの2つ名と一緒にその事実を叫ぶ。


そして周りにいた者達は、セイナの2つ名を聞いてはビクッ!っと身体を震わせてはセイナの動向を恐れるように窺う。



「(あの人、そんなに有名人なのか。上級冒険者で、名前はセイナ。で、百弾の2つ名を持っている凄い人なのか………でも、皆何か凄い人を見る感じじゃなくて、ヤバイ人を見るみたいな感じだなぁ)」



注意人物として注目していた男の正体を知ったイルマは、周りにいる自身の腕に自信があって大会に参加している人間がセイナを見る目に恐れを宿していることに疑問を覚える。


イルマはその疑問を解決する為に、自分の近くにいたセイナのことを知っている様子の男にセイナについて質問してみた。



「すいません」


「…………えっ?な、何だ?」


「ちょっと聞きたいんですけど」


「き、聞きたい……?」


「あのセイナさんって人、上級冒険者であることや皆さんの反応から有名な人みたいなのは分かるのですが…………何で皆さん恐れているのですか?」


「!?お、おい!声が大きい!」

──ちょっとこっちに来い!──



イルマが近くにいたセイナのことを知っている様子の男に金髪の男、上級冒険者のセイナについて質問すると、男はイルマの声が大きいっと言ってはセイナに自分達の声が届かないようにイルマの手を引き距離を取る。



「(馬鹿野郎!声が大きいんだよ!もしセイナに聞こえたらどうしてくれるんだ!?)」


「(す、すいません。でもセイナって、どういう意味何ですか?)」


「(はぁっ!?お前、セイナを知らないのか!?)」


「(はい)」



そのイルマの返事に、セイナについて質問された男ははぁ~っと息を吐いては納得した様子を見せる。



「(それでか、だからあんな普通の声量でセイナについて俺に質問してきた訳だ。………で、セイナについてだったな?あのセイナって男はお前も見たら分かるように、弓と剣の近接武器と遠距離武器を扱うのが特徴のソロの上級冒険者だ)」



でだ、俺も噂話を聞いただけで直接見た訳じゃないんだが……と、男はイルマにセイナのある噂話を教えてくれた。




「(………って話だ。俺が知っているのはこれだけだが、それだけでも関わりたくないぜ。もしセイナに絡まれて俺もそんな目に合うのはゴメンだからな)」


イルマはセイナについて教えてくれた男に頭を下げてお礼を言う。男はイルマに、「お前も気をつけろよ」、と言ってイルマと話を終えてはセイナに関わらないように距離を置いた位置に移動するのであった。




そしてセイナについて情報収集したイルマは、その場で先程聞いたセイナという人物の情報整理をしていた。



(あのセイナって人物、噂話だとかなり危険な人物みたいだね。自分と敵対した相手や気に入らない相手に無数の弓矢を放ったりして相手の身体中に撃ち込み、そんなことをして敵対者を多く作っている中で上級冒険者、それでいてソロで上り詰めたことで"百弾"のセイナという2つ名で恐れられている人物。しかも、弓だけじゃなくて剣も同時に巧みに扱うことで近接、遠距離どちらも隙がない実力者か………)



セイナについて情報整理しているイルマの視線には、セイナが自分に手を出そうとしてきた男達が平謝りをしているのを再び鼻で笑って姿であった。



そして、そんなことをしている内に次の戦いの準備が出来たようで大会の係の人間がイルマ達大会参加者を呼びに控え室に来た。


大会の係の人間の指示に従い皆は次の戦いに向かう。しかし、大会参加者達の大半の視線はセイナに向けられていて、その者達の闘志はとても大会が始まる前みたいに滾ってはおらず、セイナとどうか戦うことがないようにと弱腰になっていた。


その中イルマ達はいうと、



「へっ、セイナって奴がどれ程ヤバい奴か関係ないぜ。それに俺達はヤバハイ・イート・トレント魔物やスライムロード達とかこれまで戦ってきたしな。ヤバい奴との戦いはこれが初めてじゃないし、それに此処にはもっとある意味ヤバい奴がいるからな」


「そうね。そういえば私達って、ヤバい相手との戦闘経験って豊富ね。それに、あのセイナって男の実力が有っても此処には|規とんでもない技能数に異常の高ステータス《固有技能複数保持》の誰かさんがいるし、大会で勝ち上がるにはその誰かさんに当たっても倒していく必要があるのだから、ヤバい奴と戦うという話は…………今更だわ」


「…………ヤバいイルマ人と………戦う覚悟はとっくに出来てる」


「………(この場合、皆が覚悟出来てることを喜べばいいのか、扱いが酷いことを嘆けばいいのか)………僕はどっちの気持ちになればいい?」


『(私から言わしてもらえれば皆さんも十分規格外固有技能保持者です!でも、私も皆さんの気持ちに同意ですね!)』



イルマから歩いている時にセイナについて情報を聞いたメラ達だったが、ヤバい災害クラスの魔物との戦闘経験があったことや規格外イルマと一緒に過ごしてきたことや、元々大会に勝ち上がるには仲間と戦う必要があったこともあり例えセイナヤバい噂が有る人物と戦うことになっても戦う覚悟が出来ていた。


イルマはそんなメラ達仲間の様子に複雑な気持ちになり、ミルンはそんな全員に対して密かにツッコミを入れてはイルマ達は次の戦いのステージに向かうのであった。




「観客の皆様、御待たせしました!これより大会は次の戦いを開始します!!」


──ワァアアアアアアーー!!


「観客席の皆様盛り上がっていることですし、早速始めていきましょ!!では、次の戦いはこれだぁ!!」



大会実況者の合図の声と共にイルマ達大会参加者達の目の前にある舞台からある物体が出現する。



「な、何だ!?」


「こ、これは!?」



大会参加者達は、突如舞台の上に物体が現れたことで困惑の声を上げる。



「予想通り大会参加者達の皆さんは目の前に現れた物の正体に困惑しているな!そんなお前達、この場におられる皆様にも分かるようにこの突如舞台に現れた物体の正体の説明をさせて貰うぞ!これは王国がこの時の為に用意した魔道具、その名は【映し鏡ドッペル・ゲンガー】!!」


「「「ど、【映し鏡ドッペル・ゲンガー】!?」」」


「実況ーー、もっと詳しく説明しろーー!」


「そうだー!」



大会実況者が突如舞台上に現れた魔道具【映し鏡ドッペル・ゲンガー】の名前を明かすと、会場にいる者達はそれだけではどんな効果がある魔道具か分からず説明の声を上げる。



「今からこの困惑している皆にこの魔道具【映し鏡ドッペル・ゲンガー】の能力を説明するぜ!この魔道具は、鏡に映しだされた生き物をそっくりそのままの力で影の形で生み出す能力があるんだぜ!」


「「「!!??」」」


「う、映した生き物の力をそっくりそのままの力………」


「生み出す………な、何て魔道具だ………」


「そんな魔道具………存在するのか」


「しかもこの大会の為に………用意しただと?」



大会実況者が明かした【映し鏡】のあまりの能力に、会場にいる者達全員が驚愕する。


だが、


「流石に無制限に何でも映し鏡に映った者の影を生み出すことは出来ないぜ!映し出す生き物の数は鏡に映る範囲の生き物だけを影として、力は魔物ランクで表すとBランクまでだ!」


「それに映し出す効果時間は精々10分が限界」と、大会実況者の追加の説明に会場にいる者達は魔道具の破格の能力に制限があることを聞くと



「な、何だ、制限があるのか」


「だ、だよな。幾ら何でも無制限にはあり得ないだろ」



「それならこの能力もあるか」と納得するのである。



「でこの大会2種目は、この魔道具を使った"影武闘会ドッペル・ファイト"だ!!」


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