第64話(訓練の様子・新しい魔法)




ナミノ教官との手合わせが終わり、新しい訓練の制限無しで行えるようになったAクラスの生徒達。


なのでAクラスの生徒達は、日々の授業も冒険者養成所の設備を使った内容になり、授業が無い時も設備を利用して訓練を行っていた。


勿論、イルマ達も冒険者養成所の設備を使った訓練を行って自分達の力を高めていた。






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【魔道具を使った訓練の場合】


≪回避能力を鍛える魔道具≫

【吸引球】

・使用者に向かって何度も飛んでくる魔道具。


これを避けて回避能力を鍛え、通常3個位を使用して訓練をする。実際にメラやシーラ、周りで訓練している生徒達も3個位で訓練していた。



「おっ!ほおっ!はぁ!……はは、おもしれぇ!この訓練おもしれぇ!」


「はぁ!ふん!……そうだね!まるで踊っているみたいな気分になるね!!」


ーどこまで増やして避けることが出来るか勝負するかイルマ!


ーいいね!負けないよダン!!



だがイルマとダンは、技能≪空間認識≫を使い9個も使用して訓練をしては楽しんでいた。

その2人の訓練している光景を見た周りの人間は、2人の回避能力に驚き、その為同じ訓練しているのに身体の動きを止めて【吸引球】を身体にぶつけ、中には急所に当たり悶絶するもいた。



≪反射神経を鍛える魔道具≫

【光点盤】

・盤の魔石部分が、ランダムで魔力を流すことで輝く魔道具


使い方は、使用者が魔力を流して、その後盤が輝いた所を制限時間内にどれだけタッチ出来るかで、反射神経を鍛えて、そのタッチの回数を増やしていけるようにする訓練だが、………



「ハッ、ハッ、ハッ!………この訓練もおもしれぇ!よし!これも勝負だイルマ!!」



「………わかったよダン。(この訓練って、前世でも同じような物を見たことが有るような無いような………)」



ダンが再び、イルマに訓練の記録がどっちが上か競い合うように訓練をしながらイルマに声を掛け合い、ダンの言葉に返事しながらイルマは、この魔道具に似た訓練道具を前世で見たことが有るようなデジャブに襲われていた。


しかし、イルマは訓練が自分の番になり、ダンに負けない為に真剣に訓練をしていたらその事を忘れていたのであった。



≪魔力を鍛える魔道具≫

【呪加鎖】

・呪加鎖を装着すると、直接魔力に負荷をかけることが出来る魔道具。

使い方は、その負荷がかかっている状態で、どれだけ普段通りに魔法を使えるかの訓練だ。



「この訓練なら!……私達もイルマやダンには……負けないわよ!!」


「……魔法では、私達が……勝つ!」



他の訓練では、ダンとイルマに及ばなかったメラとシーラが、魔力訓練なら負けないと気合いを入れていた。

そして、魔力では、メラの方が上手だったこともあり、メラとシーラではメラの方がこの訓練では一番いい成績を出していた。(イルマは空気を読んで手加減していた)その事にシーラは、次の魔力訓練ではメラに負けないと燃えていた。


ちなみに他の生徒達は、メラとシーラの訓練に着いていけず、メラとシーラに対してあり得ないって目で見ていた。



≪魔力操作を鍛える魔道具≫

【傀儡闘争】

・ボードの駒が傀儡になっており、それを魔力操作で操り戦う。魔力操作の腕が傀儡の強さに繋がっている。複数でも、1人でも出来る作りになっている。



「ふっふ~ん。魔力操作でも負けないわよシーラ!!」


「………残念。魔力操作も大事だけど、これは戦略も大事。………今度の勝負は私の勝ち。」


シーラの操作する駒がメラが操る駒を囲み、メラの駒を倒す光景にメラが「アァーー!」と叫ぶ。


等イルマ達は、様々な魔道具を使って訓練しては周りの人間を驚かしたり自分達で競い合うことで楽しみながら訓練を行っていた。



【現役冒険者や先輩との手合わせの場合】


チユルの町の冒険者は、クエストで養成所の生徒達と手合わせを行うことがある。(その目的は、普通の冒険者の実力の把握や普段と違った相手との戦闘経験を積むためである)その為、冒険者との手合わせは不定期であり、冒険者との手合わせを受けれるのは運や早い者勝ちであった。


生徒達はその手合わせを受けるのに取り合いになることが度々あり、たまに腕がある冒険者が来た時は取り合いが激しくなることもあった。



「(おい、イルマ。冒険者との手合わせは受けないのか?)」


「(う~ん、今はいいや。受けれたら受けるけど、わざわざあの取り合いに入ってまでは別にいいや。)」


「(どうしてだ?)」


「(此処の生徒達の方が強い者達の方が多いし、普通の冒険者の実力を把握するのは手合わせを観戦するだけでも十分だしね。ほら、僕達と同じことを思っている人は、あの取り合いの中には混ざらず手合わせを観戦するか、先輩達に手合わせを持ちかけているよ?)」


「(なるほど……おっ、本当だぜ。手合わせを観戦していた奴が先輩に手合わせを持ちかけに行っているぜ!)」


「(なら、私達も先輩達に手合わせを持ちかけに行かない?)」


「(……早く行く。手合わせをしてくれる先輩がいなくなる。)」


「(そうだね。僕達も先輩達に手合わせを持ちかけに行こうか。)」



とイルマ達は、先輩達に手合わせを持ちかけに行くのであった。



【広い敷地を使った訓練の場合】

養成所には、敷地内でも夜営や探索出来るような敷地があり、生徒達は、その敷地を使って、夜営や探索の練習をしていた。



「イルマ~【メニュー】は使わねぇのかよ~?」


「駄目よダン!それじゃあ、夜営の訓練にならないじゃないの!」


「……それに人の目が無くても近くにいることは間違いない。そんな所で固有技能を使えない。」


「まぁまぁ。……ダン、この訓練で【メニュー】が使えたら楽だけど、僕と皆が別行動する時も有るかもしれないだろ?これはその時の訓練と思えばいいよ。それに僕らにはヒルゼさんが作ってくれた【大収納の鞄】があるだろ?その分、他の生徒達よりも楽しているよ。」


「~~っ、わかったよ!普通、普通に夜営したらいいだろ!!」

ちぇっ、楽に出来る方法があるのになぁ~



ダンの様子を見たメラ達やイルマは、顔を合わせて仕方ないっと言って【大収納の鞄】から食材を取り出しては料理を始める。

その料理の匂いを嗅いだダンは勢いよくイルマ達の方を見る。


「ほらダン。メラ達が料理を作るから、僕らは警戒と残りの夜営の準備をするよ!ちゃんとしないと飯抜きだからね!」


「お、おうっ!?……飯抜きは勘弁だ。よし!残りの夜営準備をとっとと終わらせるかっ!!」



飯を前にやる気を出すダンを見てメラ達やイルマは、「この単純バカ」「扱いやすい」「ダンらしい」っと言って笑うのであった。



【捕獲されている魔物との戦いの場合】

養成所には、研究や魔物との戦闘訓練の為に魔物を捕獲しており、今回は生徒達の訓練の為、その捕獲している魔物を檻から出していた。



「………流石にこんな数の生徒がいたらそこまで魔物と戦うことも少なくなるか。」


「仕方ないじゃない。逆に生徒全員が十分に戦えるだけ魔物を捕獲続けるのには無理があるわよ。」


「………戦ったことがない魔物だけに絞って戦うのが賢い?」


「そうだね。シーラの言う通りにしようか。」


とイルマ達は、魔物との戦いは戦ったことがない魔物だけに絞って戦う。

しかし、それでも魔物と戦う回数が少なく、不完全燃焼に終わるイルマ達であった。



「今度こっそり養成所を抜け出して魔物を倒しに行くか?」


「馬鹿!そんなことしたら説教&罰を受けるわよ!!」


「わ、悪い!しねぇからそんなに怒るなよメラ!?」


「あんたがそんなことしたら私達も怒られるだから!!」


不完全燃焼に終わったダンが養成所を抜け出す発言を漏らしたので、迂闊なことを発言したダンはメラに怒られるのであった。



【管理ダンジョンの場合】

ダンジョンを研究して、人工的なダンジョンを作った物が養成所にはあった。しかし、現在の所人類が造れる人工的なダンジョンには限界があり、魔物はDランクまでしか出現せず、宝箱もなく、階層も浅くて変化しない物しか造ることは出来なかった。


しかし、養成所の生徒達はダンジョンには変わりないと言ってワクワクしてダンジョンを潜るのであった。


イルマ達もダンジョンを潜ってみたが、ダンジョンに仕掛けている罠は、イルマが固有技能【開示】で簡単に見つけて対処出来、魔物もイルマ達の敵でなくて問題無くクリアするのであった。



結局、イルマ達は、縛りプレイをすることでダンジョンの難易度を上げることで、ダンジョンの経験値を積むのであった。




そんな感じでイルマ達は、新しい訓練をして自分達の力を磨いていた。


そんなイルマ達に声をかけて来る人がいた。



「ちょっとあんた達。あんた達だろ?最近噂になっている2年生の生徒は。」


「?どんな噂ですか?そして、貴女はどちら様でしょうか?」



その人は、見た目若い女性で、如何にも魔法使いっといった姿をしており、そんな女性にイルマ達は噂の内容とどちら様なのかと確認する。



「2年生なのに下手な教官よりも強くて、実際に教官を吹っ飛ばしたこともあり、訓練でも無茶苦茶な力を見せている生徒のことだよ。ああ、アタシはカガリ。養成所の3年生の魔法師カガリだよ!」


「3年生って先輩か!?」


「魔法師ッ!?嘘、私よりも上位職!?」


「てか、そんな噂が…………いや、確かにナミノ教官を手合わせで吹っ飛ばしたけどそんな言い方だと誤解が………」


「………そんな優秀な先輩が私達に何の用ですか?」



自分達の噂の内容と、魔法師で3年生の先輩であることを聞いたイルマ達はその事実に驚く。イルマは噂の内容に文句を言いたげな様子で、シーラはそんなイルマを放っておいてカガリに用件を伺う。



「いやそんな優秀なあんた達にちょっとお願いを頼みたくてね。」


「頼みごと~?」


「………どんな内容なの?」


「…………」


「(なんだろう。余り知らない後輩である僕達にわざわざ優秀な先輩が頼みごとなんて)………何で僕達何ですか?それに頼みごとと言われましても内容を教えて貰わないと返事が出来ません。」



イルマはカガリに何故自分達なのか、頼みごとの内容を言わないことには返事が出来ないとカガリにはっきり答える。

その事にカガリも「その通りだね」と言って理由と頼みごとの内容を話す。



「あんた達の理由は、あんた達が優秀なこと。今から頼む内容は、そこらの奴じゃあ出来ないからね。で、その頼むごとの内容って言うのはね、………魔法の開発だよ!!」


「「「「魔法の開発ッ!?」」」」


「そう、魔法の開発。アタシは新しい魔法を開発しようと思っているんだけどね、それに教官や大人達の手を借りたら手柄が取られたり、周りから手を借りた教官や大人が開発したと思われるでしょ?それは嫌でね、あんた達に声をかけた訳。」


「それなら同年代の生徒でも………」


「残念だけど自分で言うのは何なんだけど、アタシの同年代で魔法についてはアタシに着いて来れる奴がいなくてね?それなら同年代じゃなくてもアタシに着いて来れそう優秀な奴でもいいと思っていた所にあんた達の噂を聞いた訳。流石のアタシでも1人で新しい魔法の開発は行き詰まっていてね、手を借りたいっと思った訳さ。」



カガリの説明に納得したイルマ達。確かに自分達の1つ上の学年で魔法師という上位職になれている彼女は自分で優秀って言っても文句無しのレベルだ。そのレベルなら周りも彼女に着いて行けないのも納得だ。


それに彼女が言う通り、教官や大人達の手を借りたら周りの人間からしたら、新しい魔法を開発したのは教官や大人達と思うだろう。彼女は、その魔法の開発を手伝った協力者に見えるだろう。


なら彼女の考えていたみたいに、僕達みたいな人間の手を借りた方が特策だと僕も思う。


カガリの説明に納得したイルマ達は、魔法の開発に手伝うことを了承する。

ただ、依頼と言うなら報酬が有るものだ。特にここは養成所。自分達は、冒険者になる人間で、冒険者は依頼を受けて報酬を貰うのを生業だ。その事をカガリに伝えるとカガリは大笑いした後、「確かにその通りだ!!いや~凄いねあんた達。アタシにそんな口を聞く奴は同年代にはいなくなったから新鮮だ!ハッハッハッー」とイルマ達の言葉に嬉しそうに笑っていた。


カガリの言葉にイルマ達は、


(いなくなったって、そんな口を聞いた奴ってどうなったんだ?)


(聞いたらヤバイ奴ね)


(薮蛇。)


(聞き流そう。)


と全員が同じようなことを思うのである。


そして報酬について話をすると、カガリは魔法を教えるとイルマ達に言う。何の魔法かとイルマ達は聞き返すと、



「何の魔法?それは、」


「「「「それは?」」」」


だよ!」


「「「「融合魔法ユニゾン・マジックッ!?」」」」



イルマ達は、魔法の開発の手伝いの報酬が融合魔法であることに叫ぶのであった。


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