第24話(森の探索1)




森に中に突入し、探索を始めたイルマ達。


「おおっ………森の中の木は村の木よりも大きいな……」


「………確かに。村に生えてる木々よりも森の中に生えてる木々は大きいわね。何でかしら?」


「………不思議」


「(確かに大きい。……村の木々よりも森に生えてる木々が大きい理由だけど、多分村よりも森の中の方が魔素が濃くてその影響のせいかな?………やっぱりこの世界は魔力とか有る影響なのか、前世の世界とは違うことや変わった物が見られるな)」


ポルカ森の中に入り探索を始めたイルマ達だが、メラ達は森の中に生えてる木々が村に生えてる木々よりも大きいことに目を奪われたり、何故森の中に生えてる木々の方が大きいのかと不思議に思う。そんな中イルマは、その村と森の生えてる木々の大きさの違いを魔素の濃さが原因だと予測し、前世の世界とこの世界の違いを感じていた。



その後イルマ達は、初めて入った森の中の様子に目を輝かしたり戸惑ったりしながらも探索を行う。そして、幸いなことにイルマ達は森の中の様子に慣れない間に魔物と出くわすことはエンカウントはなく、数日掛けて徐々に森の中を探索することに慣れていく。

運よくトラブルが無いまま森の中の様子に数日掛けて慣れていったイルマ達は、慣れた後も油断はせずに慎重にそれでいて警戒を怠ることなく確実に探索しては順調に探索の範囲を広げていった。






























◆◇◆◇


イルマ達が森の探索に慣れてきた頃、

今までは運が良くて魔物との遭遇エンカウントが無かったが、数日間も森の中で探索していると当然魔物と遭遇エンカウントした。しかし、森の中での動き方に慣れてきたことや鍛えてきた力と新しい装備の力もあり、イルマ達は森の魔物相手に梃子ずることもなく危なげなく倒してはそのまま森の探索を続けた。



「なぁ、イルマ。この新しい剣、"鉄の大剣"は同じ鉄製の"鉄の剣"と比べて切れ味が全然違うな!」

──その分大きく重たいけどよ!───ハハハハ!


森の魔物との戦いでダンは、新しく手に入れた武器である"鉄の大剣"を使用し、その"鉄の大剣"の切れ味やその使い心地をイルマに上機嫌で伝えてきた。


「当然だよ。その"鉄の大剣"は幾らしたと思っているの?これで余り攻撃力が変わらないんだとこっちが困るよ」


そんなダンの言葉に、イルマはその新しい武器である鉄の大剣は結構な値段したのだからそうでなくては困ると、財布の残り金額を思い出して呟く。


そう、ダンは装備を新しく購入した後にイルマに頼んで鉄の大剣を新しい武器として購入していたのだ。

自身の固有技能【戦気覚醒】の身体強化の力をもっと活かす為に、今まで使っていた普通サイズの鉄の剣から鉄の大剣に武器を変更したいとイルマに頼んだのだ。

大剣だけに使われている鉄の量が多いこともあり値段が高い鉄の大剣だったが、ダンの考えを理解したイルマは財布の中身が残りわずかになってでも鉄の大剣を購入したのである。


そして、そんな財布の中身のお金をわずかにしてでも購入した鉄の大剣の使い心地にダンは満足し、イルマもその様子に良かったと思うのであった。



「───ダンも新しい武器は良さそうね?私もこの【魔攻書】のお蔭で、発動する魔法の威力も随分上がっているように感じていいわ」


「………私もこの【魔昌石の腕輪】が有るから、魔力の残量の心配が減って助かる」


「うんうん。結構な値段したけど、新しく手に入れた装備の使い心地が良くて無駄金にならなくて良かった!僕の鋼の剣も以前使っていた鉄の剣よりも切れ味や威力が高くて満足だよ!」

──まぁ、それでもガチャで手に入れた雷鳴剣よりかは劣るだけどね………


内心では、固有技能【ガチャ】で手に入れたアイテムランク【超】の雷鳴剣よりかは流石に劣るとイルマは思いながら、自身も新しく手に入れた鋼の剣の感想を言うのだった。


そして、現在のイルマ達の装備だが……



【ダン】

武器─1鉄の大剣、2鉄の剣

防具─鱗の盾、鉄の籠手、レッサーウルフのマント

装飾品─ウィンドバードの靴


【メラ】

武器─1魔攻書、2魔鉄棒

防具─皮の盾、子供用のマント

装飾品─無し


【シーラ】

武器─1祝福のナイフ

防具─レッサーウルフのマント

装飾品─ 魔昌石の腕輪


【イルマ】

武器─1鋼の剣、2鉄の小刀

防具─鉄の籠手、亜竜のマント

装飾品─ウィンドバードの靴


を装備している。


ちなみに装備でウィンドバードの靴が装飾品扱いの訳なのは、ウィンドバードの靴が防具よりかは移動速度の上昇等能力の補強面が強いからだ。もしこれが鉄の靴等足を守る意味合いが強い物なら防具扱いになる。

そして装備の振り分けだが、ウィンドバードの靴は戦闘スタイルから動き回る必要が有るダンとイルマが装備し、レッサーウルフのマントは被弾が多いダンと、盾が無いシーラが装備。レッサーウルフのマントの装備が無いメラには、その代わりにメラでも持てる重さの皮の盾を装備してもらっている。

※(イルマが1番装備が充実しているのには理由が有り、それは強い魔物と戦うことや1番危険な場面にはイルマが担当するからだ)

装備以外でだと、各自道具で回復アイテムとして薬草や回復水に、それと逃走用に匂い玉を持ち、他の持ち物は荷物が嵩張るのでイルマの固有技能【メニュー】のアイテムボックスの中にしまっているのである。


それはさておき、こうしてイルマ達は新しく手に入れた装備の力を森の探索をしながら遭遇した魔物相手に実感しては、森の探索の範囲を広げていった。

















・・・


その後も何度か魔物と遭遇し戦闘を行うことは有ったが、特に大きなトラブルもなくイルマ達は森の浅い部分のかなりの範囲を探索し終えた。

そして、日が暮れて来る前に今日のところは無理せずに一旦ポルカ村に戻ろうとした際、森の奥から六体のオークがイルマ達の目の前に姿を現した。



「オークか!六体はちょっと多いがどうするよイルマ!」


「大丈夫!今の僕らならオーク六体が相手でも倒せるよ。幸い、この森の中なら障害物があって子供の僕らの方が自由に動けて有利だ」

──でも油断は禁物だよ。オークの攻撃は強力だから、障害物である木はオークの攻撃に耐えれないから木を盾にしたら駄目だよ。


とイルマは六体のオークと戦うことを決めながらも、皆にオークと戦う際に気をつけないといけない注意点を告げる。



「──了解!ふん、今の私達にオークなんて敵じゃないわ!」


「うん。でも、オーク六体相手だと余裕はそこまでないよ?」


「わかっているわよシーラ。これは意気込みってやつよ!」


六体のオークとの戦闘を決めたことで、メラが余裕の声を上げてはシーラが冷静なコメントで返し、そんなシーラの冷静なコメントに意気込みと切り返す。



そして、



──行くよ!


──()()


オーク達よりイルマ達は先手を取るために、フィールドである森を上手いこと使い動き回ることでオーク達を翻弄する。

オーク達が自分達の動きで翻弄されていることを確認した後、それからダンとイルマはオーク達に接近戦を仕掛ける。

ダンとイルマがオーク達に接近戦を仕掛けた時、メラとシーラは少しオーク達から距離を取ってはダンとイルマの援護として魔法を放っていく。


「(オークの耐久力を考えたら威力が高い火属性の魔法を使いたい所だけど、森の中で耐久力が高いオークに通用する位の火の魔法を使うのは不味いわね。なら………)技と数でカバーよ!技能魔法陣作成

──────からの、風魔法|ウィンド・アロー《風の矢》×10!土魔法|アース・アロー《土の矢》×10!」


「………メラが攻撃を担当、私は守りの援護を」


──固有技能、【不浄聖鈴】発動!



メラは耐久力があるオークに対して有効な火属性の魔法を使いたかったが、森の中であることもあり風や土の魔法の下級魔法を技能≪魔方陣作成≫で威力を増幅させて数を多く放つことで、威力の問題を技と数でカバーする。

そして、メラが攻撃を担当したこともありシーラは固有技能≪不浄聖鈴≫を使い、守りを担当することで接近戦を仕掛けたダンとイルマを援護を行いつつメラと自分の守りも行う。



「───オラオラオラッ!そんな大きな身体して、木偶の棒状態だなオーク!」


「ハァッ!───ダン、それでもオークの力は凄いから、喰らったら不味いから気を抜いたら駄目だよ!」


「分かってるぜイルマ!───オラァ!」

──ブンッ!



メラやシーラの魔法や固有技能での守りの援護もあり、接近戦を仕掛けてきたダンとイルマに対してオーク達は攻撃を仕掛けるも防がれたり避けられたりして攻撃を与えることが出来ず、逆に自分達は相手の攻撃は面白い程に喰らい続けていた。


相手の攻撃を喰らい、自分達は攻撃を与えることが出来ない状態のオーク達は、何とかして獲物である子供達イルマ達に食らいつこうとするがイルマ達は油断せずに連携を取り、オーク達に戦闘状況は好転を許さない。

それでもオーク達は、自身の耐久力が高いこともありまだ1体も倒されていないが、それもイルマ達からの攻撃を立て続きに喰らうことで段々と攻撃の的のような状態になる。


だがそれでも耐久力が高いオーク達は、攻撃の的状態になりながらもまだ倒れない。



「(チィ、どんだけの耐久力だよ。これだけ攻撃を喰らい続けてもまだ倒れないのかよ!───なら、その巨体を支える足を傷つけられたらどうだ?それだと傷と自身の重みで最低でも膝を地面に付くだろ?そしたら今でも攻撃の的の状態だけど、完璧な攻撃の的になって幾ら耐久力が高くても倒せるだろ!)イルマ!オーク達の足を攻撃する!協力してくれ!」


「!分かった!(成る程ね。ダンにしては珍しく考えたね!)」



そこでダンは、まだ倒れないオーク達を確実に倒す為にオーク達の足を攻撃して体勢を崩して完璧な攻撃の的にするために同じ接近戦を仕掛けている近くにいるイルマに協力を仰ぎ、技能≪闘気≫や≪空間認識≫を使い反撃を喰らわないようにオーク達の足を傷つけていく。


そして、ダンがオーク達の足を攻撃していく際に協力を仰がれたイルマは、オーク達の足への攻撃を集中しているダンがオーク達から反撃されないように技能演技で気を引いたり、技能気配遮断で不意打ちすることでオーク達のタゲ敵意を自身に向けさせて場のコントロールしていた。


耐久力が高いオーク達だったが、ダンにより自身の足を傷つけられた結果、ダンの考え通りに傷と自身の巨体の重みにより体勢を崩しては地面に膝をついて動けなくなる。


そして、


その結果全てのオーク達がその場から動けなくなり完璧な攻撃の的になり、その上メラの≪魔方陣作成≫で威力を高められた魔法の追い打ちによりボロボロになっていた。



「しぶとい!まだ生きてるのねっ……喰らいなさい、これで止めよッ!!」


「お、おい!」


「あっ」


「め、メラ、駄目だっ!」



ボロボロになったオーク達。

そこに止めとして今まで戦闘が開始してから一方的に攻撃を与え続けていたメラが、それでも中々倒せなかったオーク達に苛立ちから技能≪魔力活性≫≪魔方陣作成≫≪魔力覚醒≫や職業技能≪魔力爆発≫を発動させてしまい、森の中で強力な魔法を放つことは危ないことを注意していたのを忘れては大量の強力な魔法を動けないボロボロのオーク達にイルマ達の静止が間に合わずに放たれてしまう!


ブーーン、ドォーーン!ドォーーン!ドォーーン!ドォーーン!ドォーーン!

ドォーーン!ドォーーン!


その結果、大量の強力な魔法が同時に放たれたことでオーク達を吹き飛ばすだけではなく、大きな音と共に強力な魔法の余波がオーク達の周辺を中心に広がった。



『メラーー!やり過ぎだよー!!』


『バカかーー!限度があるだろうーー!』


『メラ!』


『───あっ、ご、ごめんなさい!!』



大きな音と魔法の余波で耳がやられたイルマ達は、やり過ぎだとメラに大きな声で怒りの声を上げる。メラも自分がやり過ぎたことに自身の魔法がオーク達を吹き飛ばした後に気付き、魔法の余波の巻き添えになった皆に謝る。
















◆◇◆◇


暫くしてメラの魔法により吹き荒れていた土煙が収まり、それで視界も良くなったことで辺りを確認出来るようになった。

辺りを確認出来るようになったイルマ達は、直ぐ様に辺りを確認するとオーク達がいた場所には大きなクレーターが発生しており、六体もいたオークの死体は何も残ってはいなかった。


「メラ!見てみろよ!やり過ぎて六体もいたあの巨体のオークの身体が何も残ってねえじゃねぇか!!」


「………クレーターが出来てる。明らかにやり過ぎ!」


「ごっごめんなさい!!」


ダンとシーラは大きなクレーターを作り、六体の巨体のオークの身体が何も残らない程の魔法を放ったメラに対してやり過ぎだっと怒声で注意する。

メラも自分がやり過ぎたことを、大きなクレーターを作り、六体の巨体なオークの身体が何も残っていない現場を見ては実感し、再度皆に謝る。



だが、この場で1番怒っているのはダンとシーラではない。


自分が仕出かしたことに対して皆に謝っているメラだが、そんなメラの後ろからゆっくりと近づく影があった。

動揺しているメラはその影に気づく様子がなく、メラに怒りの声を上げていたダンとシーラはその影を見ては怒りが鎮まり、顔を引き攣りながら後ずさりする。

そんなダンとシーラの様子を見たメラは頭を傾げるが、その後何かに気づいては同じく顔を引き攣らしてはゆっくりと自分の後ろに顔を向ける。



?』ニッコリ


「いいいいっイルマ!?」

(どどどどどどっどうしよう!?)


後ろに顔を向けたメラ。そこには満面の笑顔でメラを見ているイルマがいた。


「(ヤバいヤバいヤバいヤバい!イルマ、絶対に怒っている!)」タラタラタラ


イルマの満面な笑顔を見たメラは、大量の汗を流しては焦っていた。

そう、メラは焦っていた。満面な笑顔をしたイルマ、勿論イルマは満面な笑顔を見せているがメラの仕出かしたことに怒っていないわけではなくキレていた。

そして、イルマは表情こそ満面な笑顔だが、その額には怒りマークが幾つも浮かんでおり目は完全に据わっていた。



「ごごごっごめんなさい!ごめんなさい!悪気はなかったの!本当よ!わざとじゃないの!もうこんな失敗しないから!だっだから、許してイルマ!!」



そんなイルマがマジギレしていることにメラは気づいており、だからこそメラは慌ててイルマに対してダンとシーラに謝っていた時よりも真剣に何度も謝りの言葉を伝える。


焦ってイルマに何度も謝るメラとそれを見てやらかしたメラよりかは少ないが大量の汗を流すダンとシーラ。メラ達はイルマと長い付き合いから知っていた。イルマがマジギレした時は笑顔になることを。そして、それは怖さの種類こそ違うが母親譲りなことも。そして、知っているからこそメラは今の自分がイルマのその怒りを受けること悟り焦っては慌ててイルマに何度も謝る。


イルマの怒りを何とか沈めようと必死に謝るメラだが、イルマはそんなメラに近づいてはメラの肩にゆっくりと手を置く。


「ヒッ!」ビクッ!


自分の肩にイルマの手が置かれたことにメラは悲鳴を漏らしては身体を震わせる。

そんなメラの様子にイルマは気付いたが気にせずに、今度は肩に置いた手を上の方にずらしてはメラの頭の上に置いた。


──ガシッ


「ヒッ!!」ガタガタッ!


そして、イルマは自分の額をメラの額に合わせ頭の上に置いた手に徐々に力を入れていく。



『何でそんな必死に謝っているの?必死に謝ることは悪い自覚があったんだね?なら何でしたの?次は失敗しない?どうやって?対策の内容は?ほら答えて?早く早く早く早く!ねぇ、何で答えないの?謝っているのだから自分が悪いと思ってるんだよね?で、対策は?あるんだよね?だから次は失敗しないって言ってたんだよね?ねぇねぇねぇ、本当に反省してるの?早く答えてよ?メラ、メラ、メラ────』


「ヒィィーッ!?」



表情を消してはメラに対して、連続再生したかのようなに問いかけを行うイルマ。

そんなイルマにメラは怯え、悲鳴をあげて逃げようとするが頭の上に置いてるイルマの手がメラを逃がさない。

そのイルマの怒りにメラは怖さから涙し、見ていたダンとシーラは怒っているイルマが怖いがメラの状態を見かね勇気を出し、怒るイルマからメラを助けようとする。



「い、いっイルマ、落ち着けよ!メっメラも、は反省しているからよ!」


「………め、メラも反省してる………だ、だから落ち着いてイルマ」



ーこ、怖いッ!?マジギレのイルマ怖えぇー!!


ー………怖いッ!!でも、止めないと……!!



ダンとシーラのその助け船に、メラは必死に掴まるようにダンとシーラの言葉に頭を凄いスピードで上下に振ることでイルマに反省している意思を伝える。



「(………駄目だ。熱くなり過ぎた。メラの危険な魔法の行使に思わずカッとなり過ぎた。落ち着け、落ち着けイルマ。危ないことをしたメラに対して怒るのはいい。でも、怒りに飲まれて我を忘れたら駄目だ。…………ふ~う、落ち着いてきたな。失敗したな~。時々精神が大人でも、転生したことで子供の肉体のせいか気持ちのコントロールが失敗してしまう。何とか直さないと…………でも、その前に先ずは)…………………メラ」


「ハッハイ!!」


「怒り過ぎてごめん。でも、本当に反省してよ?あんな必要がないのに大量の魔法の強力な魔法を同時に、しかもこんな森の中で放てば下手をしたらいくら火の魔法じゃなくても魔力の爆発で僕らまで魔法に巻き込まれてたり、森が燃えたり、森にいる他の森の魔物を刺激して本当に危ないんだからね?」


「───確かにそうだなイルマの言う通りだぜメラ?」


「……うん、その通り。メラ反省。」


「……はい。本当に反省してます。ごめんなさい」


「………僕も怒り過ぎてごめんなさい」


「本当だぜイルマ。マジ怖かっただぜ?」


「………イルマ、怖かった」


「ダンとシーラもごめんね。僕も反省するよ」


イルマはメラに対して自身の精神のコントロールを制御出来ず怒り過ぎたことを謝り、それでもやっぱりメラがした行為は危険なことだと今度は優しく注意する。その上自身の怒りを制止してくれたダンとシーラにも謝り、自分も反省すると告げる。(内心でイルマは、前世を含めると精神年齢が40歳になるのに子供がしたことにこんなにもムキになるとは、と自分の精神コントロールの甘さに落ち込むのである)



























その後オーク達を倒したイルマ達は、今日の探索を打ち切る予定予定だったこともあり森から出ようとしていた。


森から出ようとしていたそのイルマ達だが、空気が重くなっていた。

その空気が重くなっていた理由は、イルマから物凄く怒られたメラが反省したのはいいが、イルマに怒られたことがショックで気落ちしていたからだ。

普段は男よりも勝ち気な性格をしているメラ。

そんなメラが気落ちしては空気が重くなっていることに、イルマは自分も悪かったこともあって元気を出すようにメラに声を掛けようとした際、イルマの技能≪気配察知≫と≪魔力感知≫に大きな反応があった。


「!何だ、この大きな反応は!」



それは、先ほどのメラの大量の強力な魔法に引かれてイルマ達の下に近づいていた。


イルマは直ぐに皆に、自身の技能≪気配察知≫と≪魔力感知≫で感知した大きな反応が森の奥から此方に近づいていることを伝える。

イルマの索敵系の技能に反応があった場所は、イルマ達がいるこの場所からは遠いが大きな反応が近づいて来るスピードが速い。しかし、場所が遠かったこともあり大きな反応が自分達の下に到着するのは少し時間はかかると判断するイルマだが、此方に真っ直ぐ向かって来ている様子とスピードから逃げるのは難しいと予測し、皆に戦うことになると伝えた。


そのイルマの言葉にダンは何時でも襲撃されてもいいように戦闘態勢に入り、シーラは万が一に備えて退路の確保とダンとイルマの戦闘の邪魔にならないようにダンとイルマから距離を開けるよう動く。


「おい、メラ!もう少し下がれ!」

(メラの奴、何ボォーとしてやがる!)


「メラ!もう少し下がって!ダンの邪魔になる!」

(どうしたのメラッ!?)


「!?ごっごめん!」


そんな中、メラは気落ちしていたこともあっていつも通り動けてなく、ボォっとしていた。


そして、ボォっとしていたメラだが、皆の声に慌ててシーラと同じように後方に下がっていく。


「メラ………(この大きな反応の持ち主魔物を考えたら、メラがこのままだと不味いな………)」


そんなメラの様子を見たイルマは、自身の索敵系技能に有った大きな反応の相手を前にして、メラがこのままだと不味いと感じる。

メラが何時も通りに動けてないのは自身のせいと思ったイルマは、ダンに警戒を任してメラと話をしないといけないと動き出す。



「ダン!少しの間、ダン自身の≪気配察知≫で特に西側を警戒していて!」


「おっおい、イルマ?」



ダンの言葉に返事せずイルマは、何時も調子じゃないメラの下に近づいていく。ダンはそんなイルマを見ては、イルマが何をしようと動いたのか察し、早くしてくれよ?オレの≪気配察知≫はお前よりレベルが低いだぞ!と言いながらもイルマの指示に従い特に西側を《気配察知》の技能を発動させて警戒する。




「…………………」


「メ、……メ………ラ、…メ、ラ」


「…………………」


「メ、ラ、……メラ!!」


「ワァッ!なっ何!?──────いっイルマ!?何で此処にいるの?大きな反応が近づいてくるから、ダンと一緒に反応が近づいて来る方向の前面にいたんじゃなかったの!?」


「………そうだけど、ちょっとメラに話があってね?」


メラはそのイルマの言葉を聞いては「こんな時に話?」、と不思議に思う。


「メラ、さっきは本当にごめん。僕もやり過ぎたよ」


「……あれは、私が悪かったから…。イルマは悪いことないわ。結果的には私の魔法は皆を怪我させなかったけど、でもそれは運が良かっただけであって大きなクレーターを作ったり巨体のオーク達の身体を吹き飛ばす程の魔法を私は放ってしまったわ。それも森の中でね」


「……うん。それは否定しないよ。メラがやり過ぎたことは事実だけど、でも僕もやり過ぎた。だから、ごめん」


「でも……」


「でもじゃない。ほら、メラ元気を出して!元気がないメラはメラじゃないよ?メラが元気を出してくれないと、叱りすぎた僕もずーと居心地が悪いんだけど……」


「ごっごめん。」


「ち・が・う!」



そう言ってイルマはメラの顔をじ~と見る。

メラの顔を見るイルマの表情は、先ほどのように無表情じゃあなく、中々元気を出さないメラに元気を出すよう訴えかけるようだった。



「────分かった、分かったわよ!元気を出せばいいんでしょ!」

──フン!


「そうそう。メラはそうじゃないと」

──良かった。真面目にメラが元気を取り戻してくれて良かった。


イルマの言葉にやっと元気を取り戻してきたメラ。


「なによーイルマも悪いじゃない、あんなに怒らなくてもいいじゃない!」


「いや~ハハハ……(それはごもっともです)」


イルマも自分がやり過ぎたことを思いだし、少し罰悪そうにしているとメラはプッっと笑う。



「あんなに怒られたら誰でも気落ち1つ位するんだからね!本当に怖かったんだから!」


「はっはい、気を付けてます(アレ?今度は僕が怒られてる?おかしい、元気づける筈が怒られてる……)」


イルマの言葉にメラは元気を取り戻してはいつもの調子が戻ってきた。元気を取り戻したメラはそのままイルマに対して先程のイルマのブチギレに抗議の声を上げて、そのメラの抗議にイルマは自分も反省していることもありメラの反撃に元気づける筈だったのに怒られている現状に疑問を覚えながらも素直に謝るのである。


──ガミガミガミ………


「(確かに僕もやり過ぎたけど、元々メラが悪いんだろ?なら、そんなに怒らないで欲しい)………ハァー、元気になったのはいいけど、いつもよりも元気なメラになっちゃった……」


「なによ?」

──ギロッ


「何もありません!……ほら、メラはそのいつも調子で頼むよ!あんなことが有ったけど、メラの魔法は頼りにしているのだから!」


「<!> ……フン!任せなさい!バンバン魔法で援護してあげるから!」


「うん。頼むよメラ」


イルマは最後に信頼しているからとメラに言っては、自分の代わりに襲撃を警戒してくれているダンの下に急いで戻っていく。



イルマの最後の言葉に、それを聞いたメラは嬉しさを覚えては少し顔を赤くした。それをパーティーでの役割の関係上で近くにいてイルマとメラの話を聞いていたシーラは、イルマの最後の言葉に反応して顔を赤くしているメラの様子に気づく。



「………よかったね、メラ」


「なっ何がよシーラ!?」


顔を赤くしていたメラは、シーラから急に話しかけられ慌てる。


「……照れてるの。イルマに最後に信頼しているって言われて嬉しいかったことはバレバレ」

──クスクス


顔を赤くしているしとシーラが言うと、心の中を当てられたメラは先程よりも顔を赤くする。シーラはそんなメラの様子に、クスクスと更に笑みを深めていた。








「ダン、警戒代わりにしていてくれてありがとう」


「いや、良いってことよ。メラも元に戻ったみたいだしな」


ダンはそのイルマの声で、イルマが用事メラの調子を元に戻すを済ませたのを後方にいるメラとシーラの姿を見て理解し、代わりにしていた役割警戒をイルマと交代する。


そして、


「───そろそろ来るよ!」


「「「!!」」」


イルマが自分達の下に、大きな反応の持ち主が来たことを感知し、メラ達はそのイルマの声に警戒を最大限まで高めた。


──ダダダ………ダッ!

──────ドォーーン!

遂にイルマ達の目の前に大きな反応の持ち主が姿を現した。

それは体は大きく、太く短い四肢には鉤爪を持ち、雑食な生き物。



「熊!?」


「違うわよ!熊だけど、これは熊の魔物よ!!」


「……イルマ」


「…………≪ブラッディー・ベアー≫。異変が起きてる今は知らないけど、森の中でもっとも強いと言われてるBランクの魔物だよ………」


イルマは≪ブラッディー・ベアー≫を見ては顔を険しくし、額からは少し汗を流す。


Bランクの魔物、それはベテランか中級ランクの冒険者がパーティーを組んだりして挑む魔物だ。

ポルカ村でポルカ森について情報情報をした際に、森の中に入る時は特にコイツに遭遇しないよう気をつけて森を探索するとイルマは聞いていた。しかし、聞いていた話の中では≪ブラッディー・ベアー≫はこんな森の浅い所には出現することは一度もなく(そんなことが有れば、森の近くに存在するポルカ村は危なくて村何て作れない)、だからイルマもコイツがこんな場所で出現したことには驚きを隠せない。


森の異変のせいか、先ほどのメラの魔法のせいかわからないが厄介な魔物が来たとイルマは顔を険しくする。

コイツが森に存在するのが一体だけなら、既にベテランの冒険者によって退治されているし、イルマも森での探索を続けるなら無理してでも今後の探索の安全を確保する意味でコイツを見つけては先に倒すが、残念ながらコイツは森の奥に何体も存在する。

その為、イルマはコイツが生息する森の奥にはもう少し森に慣れてレベルを上げた上で挑むつもりでいた。

それがこんなに早く、しかもこんな森の浅い所で戦うことになるなんて計算外であった。


そんな計算外なこともありイルマはどうすると考え、メラは自分のせいで≪ブラッディー・ベアー≫を引き寄せたかもしれないと顔を青ざめる。ダンとシーラは、そんな2人の状態のことと≪ブラッディー・ベアー≫の存在もあり、いつもように戦闘を始めれない。


そんな中、≪ブラッディー・ベアー≫はイルマ達を見て嗤いながら口から涎を垂らして威嚇するように吼える。



【ガォォーーーッ!!!】



「「「「!!!!?」」」」



森の浅い所でまさかの森の強者である、《ブラッディー・ベアー》と遭遇することになったイルマ達。

そしてイルマ達は、Bランクの魔物と戦うことになるのであった。

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