第一章【二部 地獄の幕開け】

第12話 東京からの観光者

 4月27日—17時45分—


「おー! 久しぶり。元気にしてた?」


 俺は東京に住んでいる、幼馴染みに電話していた。電話の内容は、俺が上洛する前から約束していた京都観光だ。

 それが怪異師の修行で計画がお釈迦おしゃかになるところだった。もっともそんなことは友達には口に出来ないのだが。


「そうなんだよ。それで明日から休みだから、計画してた京都観光やろうぜ。うんうん、了解。楽しみにしてる」


 ピッ!


「はー明後日が楽しみだな。ずっと非現実的なことに付き合わされてたし、ようやく学生らしいことができる」


 ベッドの上に寝転がり、天井を見上げる。

 久しぶりの我が城にも戻って来れて、安堵したのか今日は快眠出来そうだ。明日は1日、英気を養うためにも寝よう。

 じゃないと京都観光が楽しめないもんな!


       ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎


 4月29日-12時10分-

 京都駅・時 の広場


「おーい!」


 キャリーを引いて手を振りながら、昭仁あきひとの元に駆け寄ってくるのは、東京に住む幼馴染みである、【吉田よしだ和真かずま】と【いずみ佳純かすみ】である。


和真かずま! 元気そうでなによりだよ」


「久しぶりね。昭仁あきひと


佳純かすみも久しぶり! 化粧するといつも以上に美人だな!」


 和真かずまは浅草大学に通い、佳純かすみは淡青大学に通う友人である。友人と言っても付き合いは幼稚園の頃からで腐れ縁みたいなものだ。

 俺たちは歴史好きという共通点もあり、色んな場所へ三人で旅行することが多い。


「それで、昭仁あきひとはいい子が見つかったのか?」


「また、それかよ。実は初日から遅刻してクラスで浮いてるんだよ。もう最悪…友達みたいな人はいるんだけど、無愛想な奴でな」


「それって友達なの?」


「アハハ。いいスタートが切れなかったのかよ」


和真かずま佳純かすみはまだ付き合ってるの?」


「お前、まだって失礼だろ! それに別れてたら気まずくて一緒には来ないだろ!」


「それもそうだな。もし別れてたら佳純かすみだけ呼んでたよ」


「男の友情を捨てるつもりかー!」


 和真かずま佳純かすみは高校2年生の頃から付き合い始めた。仲良し三人組だったのに、俺だけ除け者にされた気分はあったけど、いつも一緒に遊んだりして変化はなかった。


(友情って崩れないんだな。せめて俺もこっちにいる涼月りょうきみやびさんとこういう会話が出来たら少しは違うんだろな。出会って5秒もしないうちに、まともに会話が出来たのは一ヶ月振りだよ。こんなくだらない会話が新鮮で楽しいって感じてるんだから)


「それで昭仁あきひと、計画は立ててるの?」


「もちろん! バッチリだぜ! アクティビティに美味いご飯も歴史観光も完全制覇できるように組んである!」


「よし! 昭仁あきひと先生を信じてるからな! 俺と佳純かすみをガッカリさせるなよ!」


 京都観光は明日から開始だ。

 今日は俺の家で食事会だ!

 

 三人は昭仁あきひとの借りるアパートへと向かった。

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