第8話 銃

あれから何日海をさまよっただろうか、持っていた水筒の水も尽きていよいよこれで終わりかと思った。こうして英軍救援に向かった日本海軍に拾われて今は北へ向かっている。



台湾の高雄港という場所で船を乗り換え、さらに北へ向かった。英軍兵士としてはここから英領香港へ向かえば良いだけなのだが、最早その必要はない。


どうやら日本海軍の一大拠点、呉軍港に到着したようだ。丁重に日本国内の英連邦軍基地までの案内をしてくれようとしたが断って日本の土を踏む。

何年ぶりだろうかと感慨にふける暇もなく地元を目指した。


この時代、東を目指すなら現在の山陽本線を使うのが手っ取り早いのだろうが躊躇せざるを得なかった。

英軍の諜報部の連中と戦い他の旅客を巻き添えにはしたくない。

結局船で瀬戸内海を東へ進んでいく。



明石海峡の辺りで上陸すると、まず確認したい場所があった。

この近くに確か鶴屋さんの別荘があったはずなので、誰かがいるのか見ておきたかった。


建てられたばかりの建物の中に入ると、人影があった。


「誰だーい?」

「君かぁ。もっと早く来ると思ったよ。」

と長い髪の女性が答えるが俺は既に身構えている。


「何故ここにいるんですか?」

「何を今更そんなことを言っているんだい?決まってるじゃないかっ。本来の世界線を保つために決まってるっさ。」


「あたしがこの世界で家の当主になっていて、そこで勢力を拡大することも”史実”とは違う戦争になることも全て規定事項なのさ。」と言って置物の前にあるエンフィールド銃を握った。


「悪いねキョンく~ん。君には死んでもらうっさ!」









・・・・・・・・クソッ痛え…。


「おい何だ?飛び込みか?」

「救急車を早くしろ!」


何で俺は線路の上にいるんだ?

撃たれたはずじゃなかったのか?


駄目だ意識が飛ぶ…。

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