第7話 船

「ああ分かった。なら部隊の一部を分け侵攻する。ジョンは情報の報告を頼む。奴らの撤退が終わり次第海峡植民地軍か在日英軍への潜入となるが、それは戦況次第だ。よろしく頼むぞ。」

「承知した。」



翌朝から英軍は占領したパラワン島・パナイ島の2方向から北上しミンドロ島へ進軍した。

抵抗は少なく、島全土を占領したため首都マニラは海峡を隔てて目前である。


「敵の部隊の抵抗は少ないぞ!今のうちに進軍せよ!」


しかしそれ自体が誤りだった。既に米軍は背後に周り包囲の陣形をとっていたのである。

これは事前にミンドロ島へ進軍するという情報を得ていたからで、速やかに艦砲射撃を集中させ殲滅戦に移行する。


俺がいた部隊は米軍に取り囲まれた。そこで部隊長が迷うことなく前に出て言った。

「お前らは若いから未来がある。ここは俺に任せておけ。」と言って米海兵隊へ突撃すると敵ごと爆破してしまった。

その隙に脱出したが、あっぱれな最期だった。奴らにも気骨のある兵士がいるものだな。


北部で日本軍と戦闘している影響で大規模な兵力を回せず、一部はパラワン島へ逃してしまったが敵兵力を削減したため英軍への潜入と工作任務は無事成功した。

すぐさまにレイテ島やパナイ島といった英軍の占領下にある島々を奪回した。英軍司令官は奪取された各島々の攻略は困難と判断し、ミンダナオ・パラワン島を防衛ラインとして残った部隊ごと撤退した。


「無念だが全部隊、プエルト・プリンセサまで撤退せよ。」と司令官は命じた。


「被害は大きい上に我が軍でも感染病に多くの兵士がやられ死者も出ている。」

「我が軍は西部戦線で手一杯だ。海峡植民地までここは撤退すべきではないのか?」


「ああその通りだ。これから我が軍は将軍の命令を無視しサバへ向け撤退作戦を開始する。」


ここで気を逃す訳にはいかなかった。

銃弾の雨が降り注ぐ中で部隊は南へ向かったが米艦隊は行く手を塞いでおり死体が増えていくだけである。


「日本と米軍が膠着状態になっている北部へ向かえ。俺らはここに留まって戦う。」と兵長が言う。

ぐちゃぐちゃになった感情を押し殺して、海へ全速力で走る。


なんとか味方の銃弾を避けながら小舟に乗り込み、南シナ海へ向けて脱出した。

船が離岸流に乗って自然に流され始めると、仰向けになり雲一つない空を見上げた。

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