第3話 鍵
あれから年を越え、敵軍は崩壊した。
日英の支援あっても、兵力・経済力の圧倒的な差の前に磨り潰されていき散発的抵抗すらできなくなってしまった。
ハドソン湾の南端の何もない場所でその報を聞いたが特に驚くことはない。
「ったく…弱い相手に手こずっちまったぜ…」
上官が愚痴を吐いているが休んでいる暇などない。
我が部隊は捕虜を集めて収容所へ送る任があった。
多くの部隊が太平洋へ向かい移動を開始し、出撃準備を整えていた中でいわば後片付けを押し付けられた訳だ。
俺は捕虜の誘導と監視を任されたが、1人気になる兵が列の奥に見えた。
と、そこへ自軍から兵士が飛び出してこう言う。
「こいつだけは絶対に殺さなければいけない。俺の仲間はこいつに目の前で殺されたんだ!」ととある兵士が叫ぶ。
面倒くさいことをするなよと思いつつも仲裁のために割って入ると、その顔は見覚えがあるものだった。
「どうしておまえがここにいる?」と言葉が出た。
「こんな場所であなたを見るなんて以外ね。」と”兵士”は落ち着いた声で答えた。
「ジョン、俺もあいつもこの野郎をすぐにでも殺したいところだがジュネーブ条約ってもんがあるからそんなことはせん。我が国は大国だ。紅茶野郎にでも非難の材料にはされたくないからな。」と上官が言う。
「感情は抜きにして速やかに捕虜を収容し、管理のための兵を残し速やかに港へ向かうべきです。それこそ他部隊から嘲りを受けましょう。」と俺は言い返した。
「早く進め!」
やれやれ。
今日は結局収容所へ捕虜を送っただけで終わったが、もう一仕事残っていたのである。
夜になり静まった平原の中、車で乗り付けた。
監視をしていた兵士にこう告げた。
私はアメリカ陸軍ジョン・スミス上等兵だ。大佐からの任で収容所の現状の確認の命を受けている。お通し願おう。
「問題ありません。どうどお通りください。」
暗い収容所の中を軍靴を響かせ進むと、奥に独房があった。
そこに”兵士“が収容されていた。
「案外早かったじゃない。」
「いやこれでも遅れた方だ。」
「で、あなたの欲しい情報は何?」
「分かってるだろう。鍵だ。」
「…。」
「ハルヒは世界中どこにいるか分からない。お前ならその力で何か情報を持っているんじゃないか?宇宙人さんよ。」
「今の私はただの人間よ。知っているのは彼女があなたの敵ということだけ。」
「それで十分だ。もう少しで解放してやるから待ってるんだぞ!」
車に戻り基地へ飛ばす。
敵ということはイギリス・日本・フランス・ロシアなど沢山候補があるな…。
ここは北米を出なければいけない可能性が高い。まずは潜伏するための準備に取り掛かるとするか。
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