第151話 ワードウルフ⑤(最終戦) お題提供者:イェソド
・ワードウルフ(制限時間5分)
お題提供者:イェソド
参加者:ショコラ、カミィ、コクマー、ビナー
ショコラのお題:ボウリングのピンが自分の家族
お題を見た瞬間確信した。この人頭おかしい。最終戦に変なものをぶっこんできたな。確実にどこかの裏組織の拷問担当みたいな感じのことをやってそうだ。
「みんな、お題が行き渡ったかな? 対抗のお題を推測するのは難しいと思うけど頑張ってね。それじゃあスタート」
確かに……これどうやって、対抗のお題を推測すればいいんだよ。どうせ、対抗もロクなこと書いてないだろう。
「みんなはこれを実行できる?」
コクマーさんの質問からスタート。この人はいつも先陣を切ってくれるから助かる。
「無理です。絶対無理です」
ビナーが強く拒否する。さっき、ビナーは家族が大好きだと発言した。もし、ショコラと同じお題を貰っているのだとしたら、ここまで強く拒否反応を示すのは理解できる。
「あーしは……無理っすね。1人は絶対にこんな目に遭わせられないし、それ以外は仲が良くないとはいえ、やっぱりできないっしょ」
「私も無理ですね。と言うか、これを実行できる人間の方が少ないと思います。コクマー様はこれ、実行できるんですか?」
「どれだけ大金積まれても無理かな」
大金……人によっては、金次第でこれをやる人もいるのだろうか。俺は、現状では金に困ってないし、絶対に首を縦に振らない自信がある。仮に、金に困っていた時代でも、やっぱり家族は犠牲にできない。
「私は、これそのものは好きなんですよ。でも、アレがアレに変わってるじゃないですか。その変更部分が嫌なんです」
ビナーの発言から、やっぱり何かが何かに変わっているというのがお題の条件っぽいな。それもみんなが嫌がるやつ。
「なるほど。確認したいんだけど、これは普通にやる分には競技の一種でいいのかな?」
コクマーさんの質問がまた飛んできた。特に変な質問でもないし、少数派に特定される可能性もないかな。これは答えた方が信用を勝ち取れそうだから答えよう。
「そうですね。競技と言えば競技ですね。これのプロもいますし」
「ふむ。ショコラ君は直近で、いつこの競技をやったか覚えているかい?」
「えーと……申し訳ありません。覚えてないくらい前ですね」
一時期、三橋がダーツに嵌りまくっていたからな。そのせいで、ボウリングは……中学の時以来行ってないのか? 受験期間中は当然行かないし、1年以上前か……?
「あーしも最近行ってないかなー。近くにあったこれをやれるお店が潰れちゃったから、それ以来行ってないんだよね」
「私は一週間くらい前に行ったから、結構タイムリーですね」
「なるほど。実は私も一週間くらい前に行ったんだ。その前は、リドルトライアルのメンバーと行ったかな」
「あ、コクマーさん! じゃあ、私たち同じお題ですね!」
「そのようだな。同じ箱だから、お互いの近況を知れていて助かったな」
なんだと……ビナーとコクマーさんが多数派で確定してしまった。2人が通じ合うっていうのはそういうことだろう。つまり、少数派はショコラかカミィに絞られたということか。どっちだ。どっちが少数派なんだ?
いや、これはもう、そういう問題ではないのかもしれない。このゲームは多数決のゲームだ。ビナーとコクマーさんに票が入らない以上は、ショコラとカミィはお互いに入れ合うしかない。自分が多数派であろうと少数派であろうと、相手を吊らなきゃ負けなゲーム。と言うことは、ひたすらビナーとコクマーさんの発言に合わせるゲーム! 2人の心象を良くしないと。
「と言うわけで、このゲームの方針が決まったね。私とビナー君はお互いに多数派だと理解した。後は、ショコラ君とカミィ君のどっちかがウルフか当てるゲーム。つまり、この2人が情報を落とすゲームだ」
「え、あ、あーしとショコラパイセンが疑われてるんすか!」
やられた。ビナーとコクマーさんが喋らないゲームになったら、多数派のお題を知ることは不可能だ。自分が多数派であることを祈りながら、情報を小出しにしていくゲームにしかならない。先に多数派に自分と同じだと思わせた方が勝ちなゲームだ。でも、自分の出した情報が少数派だとバレたら、そこで負けも確定する。どうすればいいんだ。カミィの失言を引き出して少数派と押し切るか? いや、でも逆にそれで多数派に迎合する情報が出たら、負けが確定する。
「えっと……えーと、あ、そうだ。あーしは、これのスコアで120点取ったことがある! 女の子で120行くのは結構凄いっしょ? ねえ?」
しまった。考えている間に先手を取られた。これで、カミィが多数派だと信じてもらえたら終わりだ!
あれ? どういうことだ? スコア……120? ボウリングの話か? でも、カミィとショコラは違うお題のはずだよな? 今までの話からボウリングだと判断するのは、ほぼほぼ無理だ。じゃあ、カミィは合わせて言ったわけじゃない。でも、ショコラとカミィはボウリウングのお題で一致して……あ! そういうことか! わかったぞ。誰がウルフか。
「カミィさん凄いですね。スコア120も取れるなんて。私もこれ好きだけど、平均で100ちょっと超えるくらいなんですよね」
「おお! ビナーちゃんも女子で100超えるのは中々凄いねー。あれ? ってことは、あーしたちは同じお題ってことっすか?」
「どうやら、少数派は誰か決まったようだね」
「待って下さい! コクマーさん! あなた仕掛けましたね!」
「ん? どういうことショコラ君?」
「ショコラママ……」
ビナーの視線がどことなく、冷めているように感じる。違うんだ。ここの親子は仲間なんだ! でも、ショコラがウルフ確定みたいな空気の中、どれだけ無実を訴えても信じてもらえない。仮にボウリングの情報を出してもスコアと目安の点数を出された時点で、合わせたと言われるだけだ。
そして、投票結果は当然ながら……
コクマー:ショコラ
ショコラ:コクマー
ビナー:ショコラ
カミィ:ショコラ
「投票結果は、ショコラさんが最多だね。ショコラさんは自分のお題を発表してね」
「【ボウリングのピンが自分の家族】……」
「「え!?」」
カミィとビナーはほぼ同じタイミングで驚いた。しかし、コクマーさんは全くリアクションを示さなかった。
「なるほど。家族の方だったか。友人の線も考えたんだけどな」
そう言いながらほくそ笑んでいるコクマーさん。完全にしてやられた。当然、この人は自分が少数派であることをとっくに気づいていたんだ。
「私のお題は【ダーツの的が自分の恋人】だったよ」
あ……ダーツ!? ああ! そういうことだったのか。コクマーさんの言葉の運び方の意味が完全に理解できた。
「コクマーさん……? わ、私を騙したんですか?」
「ごめん。ビナー君。実は、私は自分が少数派だって最初から気づいていたんだ。カミィ君の発言から、親しい人物が複数人いることがわかった。恋人だったら浮気でもしない限りあり得ないこと。そこに誰もツッコミを入れなかったからね……ただ、カミィ君の方が少数派で、多数派が全員日和ってツッコミを入れなかった可能性もあるにはあった。でも、ショコラ君にした質問で確信に変わった。たまたまショコラ君の切り抜きを見た時に、雑談でダーツに関する話をしていた。そこそこ最近の出来事なのに、覚えてないくらい昔なわけがない。だから、みんなのお題はダーツではないんだ」
なんてこった。あの時の発言がここに来て足を引っ張ることになるなんて。誰がこんなこと予想できるんだよ。
「対抗のお題がボウリングだとわかったのはビナー君の発言だ。リドルトライアルのメンバーとボウリング行った時の話をしたら、目を輝かせてボウリング行きたいと言ったので、同期のメンバーでボウリングに行くことになったんだ。丁度時期的にもあってるし、ボウリング大好き発言とも合致する。だから、ビナー君に寄せて多数派を装ったんだ」
やっぱり、この人とんでもなく頭が良いな。立ち回りの上手さで勝てる気がしない。
「正直、それでも負ける可能性はまだあったけどね。ボウリングが一致した時点でビナー君が、同じお題だと思ってくれたのは助かった。もし、ボウリングは全員一致の前提で、【家族】の部分を詰められたら、終わってた。私はそこまで特定はできてなかったからね」
「むう。完全にしてやられました。コクマーさん嫌いです。1時間くらい口をききません!」
「ははは。参ったな。同期に嫌われちゃったか」
「まさか、ビナーさんとコクマーさんが一緒にボウリング行ってたなんて知らなかったな。同じ箱とはいえ、違う期だから僕は知らなかった。知ってたら、ボウリングをお題にしなかったのに」
「そうだね。偶然が重なったとはいえ、ハメるつもりはなかったのに、ショコラ君たちをハメたような形になってしまった。すまない」
「あーしは別に気にしてない」
「私も大丈夫ですよ。親交があるメンバーでやる以上は、こういうことが発生するのは仕方のないことですし、なんだかんだで盛り上がりましたから」
「ありがとう。僕のお題で盛り上がってくれたようで良かったよ。最後の最後で良い試合が見れた」
「あーしは、お題見た瞬間、盛り上がるというより引いたけどね」
「はあ……この試合に勝てば完全勝利だったのに……悔しいです」
「そういえば、ショコラ君は3連勝してたんだったな。すまないな。最後に罠を仕掛けて」
「いえ。みな様と遊べて楽しかったです。また誘ってくださいね」
こうして、寄せ集めVtuberのワードウルフは終わった。成績では、ショコラが1位だったけれど、最後の敗北が忘れられなくて勝った気がしない。まあ、結果的に楽しかったし、いいか。
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