第2話
武士が俺に提案した計画はこうだった。
学校の弓道場にいる渡辺さんを武士が
そんな流れだった。
そんな計画が上手くいくはずはない。俺は反対した。
弓道場にいる渡辺さんを武士が
俺は反対した。
したことは、したが、本当のところを言うと、内心ちょっと、これで上手くいくならそれはそれで、仕方ないんじゃないか、運命なんじゃないか、俺と渡辺さんの恋のキューピッドさんが、この鎧武者ということなんじゃないか、と思った。
そして反対しようがしまいが、俺は武士にわっしと
麦茶がビールになるほど
武士は
部活の後も居残っていた生徒たちは、ぎゃあっと悲鳴をあげて
俺は死んだように見えたし、実際ほぼ死んだような気分だったし、武士の
弓道部の練習場に入るまで、俺と武士とを
いや、それも本当のことを言えば、何人かいたようだ。
ほぼ無抵抗状態の学校内を抜け、渡辺春奈姫の待つ弓道場へと、俺たちは
そこにいたのは渡辺さん一人ではなかった。
何人かの先輩男子がいたし、
渡辺さんもいた。練習用の
悲鳴の形にサクランボ色の小さな
いてえ! と思いながら、俺は渡辺さんの悲鳴を聞き、弓道場の床板に全身を
その場にいた皆は、俺が死んでるんだと思ったらしい。渡辺さんもそう思ったという。
次は誰が
あの
なぜ自分たちが殺されなければいけないのか。そんなような事が皆の頭を
不思議だ。それでも皆、武士に矢を射かけようとは、これっぽっちも思い付かなかったらしい。
弓道場にいて、たった今まで矢を
手には弓があり、弓道場には矢もあった。弓につがえたままの矢を持っている奴までいた。
それでも弓道部員・居残り組のできたことといえば、その場でパニくることだけだったのだ。
「やあやあ我こそは○○○○○、
その大声を聞いて、弓道部・居残り組はますますパニックを深めた。
チビってるのかと思えるような奴もいた。誰とは言わない、部長の
その、しょんべん垂れ木下を除き、あと三人の先輩と
動けたのは、俺だけだった。
当たり前だ。俺は武士が本気じゃないことを知っていた。だから動けた。それだけの事だ。
武士は
俺はとっさに、しょんべん垂れ木下が取り落とした弓を
大体なんなんだ、この武士。なんでこんな奴が現代にいるんだ。
俺にも迷いはあった。武士とはいえ、たぶん人間と思うけど、そんな的を
当たったら一体どうなるんだ。どこを
でも武士の体に
俺は
そしてそれは、武士の背中から、心臓の裏側を
ように見えた。
「おのれ背後からとは
芝居がかった
だって背後からって、どうすりゃよかったんだよ。前まで回り込んで行って射ろっていうのかよ。そんな
正直に言おう。俺も98%ぐらいはバニっていた。何だか訳がわからないうちに、矢を放ってたんだ。
武士はそんな俺を
矢が無い。矢が無い。と、俺はじたばたと
……いや、それも正直に言おう。俺は
本当に当たっちゃっていいの? これ芝居だろ?
当たっても、できるだけ当たり
なのに、それが、大当た~り~。
矢は深々と、武士の心臓を正面から射抜いた。
その瞬間、武士はにやりと笑って俺を見たような気がする。
「見事じゃ……敵ながら、あっぱれな腕よ」
その音と衝撃に
俺も少々、チビりそうだった。
しかし、チビってる場合ではない。
「大丈夫だ。逃げよう、渡辺さん」
俺が声をかけると、渡辺さんは涙でうるうるした目をして、こくりと
そして半分、腰抜けてるのかなと思うような足取りで、よろよろと俺に
渡辺さんが俺に
いや、単によろけただけだったか。
いやいや、そうじゃない。渡辺さんが俺に
俺は渡辺さんを抱きかかえるようにして、皆といっしょに部室から逃げた。
扉をくぐる直前、振り返って見ると、武士は
まさか死んでないよな。
俺の体に震えが来たのは、実は、それからのことだった。
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