1-10 神という存在
「嘘……だろ……?」
蚊が鳴くような声でそう呟いたのは、先程廃工場で桜を襲った、
────しかし、桜は生き返った。それどころか、
記憶の操作が効かないことといい、生き返った後の現象といい、まるで桜には───。と、ここまで
「え、あれ。いつの間に居たの? まぁいいや! それよりも見た!? 私すっごく強かったでしょ!?」
「は? あ、いや……そう、だな?」
「ふっふっふ! 桜ちゃんは日々どころか、毎秒進化する天才なのだよ!」
調子に乗った桜は、鼻高々にそう宣言し、胸を張る。
そんな桜を見て、
しかし、
「これでもう君に惨敗することもないよ! さぁ、来るならこーいっ!」
と、叫ぶ。そんな桜に対し、本格的に脳内お花畑だな。、と
────と、そう思ったところで、
否。
「フハッ、フハハハハッ! 愉快! 実に愉快だ、人間ッ!」
突然、先程まで沈黙気味だった
「あぁ、すまない。初めて味わう感動だったからつい、気が昂ってしまったよ」
「はぁ……? え、ってか口調変わった……?」
男の人は、気が昂ると高笑いをする生き物なのだろうか……。この行動で、桜は毒嶋のことを思い出し、げんなりする。
「ふーむ。もしや私がこの
呆れたように
桜は内心、そんなことわかるかっ! と悪態を吐く。しかし、別に喧嘩がしたい訳では無いので、そこは空気を読んで言わなかった。
神はそんな不満げな顔の桜を見て、愉快そうな調子を戻し、再び語り始める。
「ククッ、感情を隠せん奴よな。まぁいい。お前は私を楽しませた。褒美にお前の知りたがっていたことを教えてやろう」
神が大仰な身振りで両手を広げ宣言した言葉に、桜は目を見開く。引き気味だった姿勢を前のめりに変え、目を輝かせながら神を見た。
「本当!? 翼について教えてくれるの!?」
正直、この言葉で、神と名乗る男の正体なんて、桜にはもはや二の次になっていた。今は翼について知れるかどうかの一点のみが、桜にとって最重要事項となっているのだから。
そして桜の返事に、神は満足気に頷き、桜を見やる。
「さて、説明するにしても内容が内容だ。お前に理解させるためには、丁寧に教えてやる必要がある。翼について一刻も早く知りたいだろうが、あやつが巻き込まれている事態も、少しは知っておくべきだ。長くなるが、いいな?」
「勿論! こっちは訳わかんないことが多すぎて、モヤモヤしっぱなしだからね!」
神の言葉に、桜はとても威勢のいい返事をする。実は神の言葉は遠回しに、桜の頭が悪いから丁寧に教えなければならない。と、言っているのにも気づかないで。桜的には、丁寧に教えてくれる神様ありがたいなー。くらいにしか考えていないので、知らぬが仏、というやつだろう。
「では、始めよう」
神のその言葉の後、桜は神を食い入るように見つめ、話を聞いた。
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