029. 北白川舞、気がつけば終わっていた?私
私、北白川舞。普通の女子高校生。
普通じゃないのは制服が可愛い「私立
お隣の家で三歳の頃に仲良しの友だちの麗夏ちゃんと一緒の高校を選んだ。
最初は動機が不純だったから両親に反対された。
でも結局は他の高校は成績が無理で私立だけど桜翔学園がギリギリいける学校だったから許可してくれた。
隣の家には麗夏ちゃんのほかにもう一人子どもがいて麗夏ちゃんの弟だった。
弟は『亜月』と名前の同い年だった。亜月と私は生まれる前からのお隣さんでずっと一緒だった。
ただ亜月のお母さんがいなくなったときに亜月とは暫く会えなくなっていたから寂しくて気がついたら麗夏ちゃんと仲良くなっていた。
麗夏ちゃんはちょっぴり強引で我が儘だけどグイグイ引っ張ってくれた。
何かに迷っていると麗夏ちゃんが選んでくれた。
美人で保育園で男の子たちに囲まれていて私も一緒にいるだけで優しくしてくれて楽しかった。
けれど麗夏ちゃんは亜月には冷たかった。
姉弟なのに嫌っていた。
「ねぇ、どうして麗夏ちゃんは亜月のこと嫌いなの?亜月は麗夏ちゃんの弟でしょ?」
一度麗夏ちゃんに聞いてみた。
麗夏ちゃんはものすごい怖い顔をして私を睨んできた。
「舞がアイツと仲良くするなら麗夏もう舞と一緒に遊んであげない!!」
この時の麗夏ちゃんの顔が恐くて何も言えなかった。
同じ小学生なのに何も言えなかった。
私は亜月とも仲良しくしたかったけど麗夏ちゃんとずっと一緒にいたいと考えると麗夏ちゃんに無視されたり虐められるのは嫌だった。
仕方なく麗夏ちゃんの言うことに従った。
小学生の頃にも亜月は学校に来ない時期があった。
その頃に最後に亜月の姿を見たのは連休前の学校だった。
連休二日目には静かだった住宅街が急に騒がしくなった。
隣の麗夏ちゃんちは連休で遊びにできかけているから誰もいないはず…なのに何かガヤガヤしていた。
パトカーのサイレンの音がして私は家の外に飛び出した。
外に出ると警察官に似た制服を着た数人と
「禿河さんの家、泥棒に入られたみたいよ…」
「えっ?!」
噂好きの近所に住むおばさんたちが亜月の家を見ながらコソコソ話していた。
私はビックリして亜月の家を見つめていた。
家の中から泣きそうな顔をして救急隊員の一人に抱えられながら亜月が出てきた。
私が見ているのに亜月は気づかないくらいの速さで救急車に乗せられて連れて行かれた。
その後も私は少しの間家の外で亜月の家を見ていたけれど麗夏ちゃんたちは誰もいなかった。亜月だけ一人で家に居たみたいだった。
連休が終わってから亜月の家を見たけれど亜月はやっぱり家にいなかった。麗夏ちゃんたちは帰って来たけれど亜月はいなかった。
学校で先生が何か知っているかと思って聞いてみた。
「禿河亜月君がこの前の連休から家でも学校でも見ていないですけど先生は何か知ってますか?」
「あぁ、彼は当分の間家庭の事情でお休みです」
何回も先生にどうしてか聞いたけどそれ以上は教えてくれなかった。
“個人情報”だからとも言われた。
三ヶ月くらいすると亜月はやっと隣の家に戻ってきた。
その時には既に亜月はすっかり印象が変わってしまった。
以前は普通に友達とおしゃべりすることもあったのに戻って来た時には自分から何も話さなくなった。表情も少なくなった。
暗くなってしまった亜月に追い打ちをかけるように意地悪をしていた。
でもそれは私以外の人がいる時には絶対にやらない徹底ぶりだった。
どんなにしても亜月より麗夏ちゃんの方が強いから麗夏ちゃんに同調した。
小学校を卒業して中学生になると麗夏ちゃんは更に亜月を虐めた。
そして私も麗夏ちゃんと同じようにした。
だって亜月だし何を言われても黙っていたから。
私も面白がって笑っていた。
もうこの頃には亜月は私たちとは一緒にいることが殆どなくなった。
亜月だけ夏休みや冬休みには隣の家からいなくなっていた。
麗夏ちゃんといると亜月と話すことができないから接点がなくなってしまった。
亜月が何処の高校を選んだのか知りたかったけど麗夏ちゃんに聞くことなんてできない。
それでもいろいろな手を尽くして進学先を知ることができた。
結局知ることができただけで私はどうにもできなかった。
亜月が選んだ高校は隣の県の公立高校で成績を考えたら私には無理な高校だしそもそも隣の県だから私には行けない。
もうこれで亜月とは一緒にいられないんだぁーと思ったら悲しくなった。
でもその後麗夏ちゃんが楽しそうに亜月が決めた進学先を勝手に変更させてやることができたとか話していた。
その私立高校も合格できていたら入学の邪魔して必要な手続きも全てしなかったら亜月がどうするかを黙って見ていて面白がっていた。
それでも亜月は高校の入学を決めたみたいであと三年は同じ学校に通えることになった。
これで幼馴染みとして近くにいれば亜月の“彼女”になれるかもしれないと思った。
でもこの私の考えは甘かった。
高校の入学式まで亜月は家に帰ってこなかったし、クラスも一緒になれなかった。
何故か麗夏ちゃんは毎日イライラしていた。
高校生になったら亜月はクラスが違うはずの『小田切紫凰』君と一緒にいる。
紫凰君は背が高くてカッコいい。
成績も学年で一位か二位、運動もできるイケメン男子で人気も学校内でトップの人。
すごくカッコいい人なのに亜月といつも一緒。
亜月なんかグズでノロマなのに紫凰くんみたい派人が側にいることが信じられなかった。
それまで麗夏ちゃんはイライラしていたのが爆発したみたいで…。
「グズでノロマなあんたは邪魔なの。もう私たち家族の家に帰って来るな!さっさと出ていって欲しいんだけど?」
私も麗夏ちゃんと同じように言う。
「私もあんたと幼馴染みと思われたくない!もう話しかけんな」
何か言っても言い返さない亜月だから調子に乗っていた。
「僕も別に貴女方のことは家族だと思っていないし、幼馴染みだと思っていない。だからこれ以上絡んでこないでください。あと父さんさえ許可すれば僕はあんな家出ていきたいですから」
亜月は冷めた目をしてそれだけ言うと紫凰君と食堂を出ていった。
亜月の他人行儀な話し方で去っていったのがとても信じられなかった。
亜月のくせに生意気だと思った。
麗夏ちゃんもかなりショックだったみたいで二人で暫くの間茫然としてしまった。
その日の午後のことは何も覚えていない。
亜月が麗夏ちゃんと私に反抗してから麗夏ちゃんもちょっと大人しくなった。
その二日か三日後に私が小学生の頃のように麗夏ちゃんの家の前にまたパトカーが停まっていた。
私は自分の部屋の窓のカーテンを閉めようと窓に近づくと、パトカーの赤色灯が光っていた。
窓から麗夏ちゃんの家を見ていた。
前の時とは違って家の中で何かやっているみたいで外まではその様子はわからなかった。
どれだけの時間が過ぎたのかわからなかったけれど麗夏ちゃんのおじさんとおばさんがそれぞれ腕を抱えられるように両脇を警察官に囲まれ家を出てきた。
おじさんもおばさんも何となく不貞腐れたような顔をしていた。
パトカーに乗せられ走り去った後、女の人に肩を抱かれた麗夏ちゃんが出てきた。
麗夏ちゃんは一生懸命女の人に何か言ってたみたいでその人は困った顔をして首を横に振っていた。
麗夏ちゃんは泣きそうになってまだ言ってた。
でも結局は女の人が呆れた顔をして更に何か言った。
麗夏ちゃんはやっと諦めて俯いて女の人に背中を押されて車に乗るように促してきた。
その後も麗夏ちゃんの家を見ていたけれど亜月がその家から出てくることはなかった。今日の朝も亜月の姿も迎えに来るはずの紫凰君も来なかったからどうしたんだろうと思った。
学校に行っても紫凰君はいるのに亜月はいなかった。
次の日にも麗夏ちゃんの家に行ってみたけれど誰かいる気配はなかった。玄関に鍵をかけられていてチャイムを押したけれど反応はなかった。
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