告白

027. 瑠維さんは瑠維さん…だよね…？

　金曜日の朝、いつもの様に紫凰がマンションに迎えに来る。

　いつもの様に瑠維さんが朝食を用意していた。

　いつもの様に三人で朝食を食べて紫凰と二人で学校に行く。

　いつもの様に片づけをした瑠維さんは車に乗って会社へと向かう。

「紫凰は今回一緒に瀧野瀬の家に行かないの？」

「俺は用事ないからな…瑠維さんと二人でゆっくりして来いよ」

「うん」

　今日は珍しく紫凰との朝の会話はこれだけだった。

　いつもの様に紫凰と二人学校からマンションに帰った。

　リビングのテーブルに手紙が置いてあった。

　　【　　亜月へ

　　　今日は仕事で遅くなる。帰りは何時になるかわからないので夕食は冷蔵庫に入れてあるから紫凰君と二人で温めて食べてね。

　　　明日は朝から出かけるから先に休んでなさい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　瑠維より　　】

　手紙を読んだ僕が紫凰にも見せた。

「そんじゃ課題をやっておこう。どっちにしても亜月は明日は瑠維さんの実家いくんだろ？」

「うん、そうだね。瑠維さんが紫凰の分も夕食作って冷蔵庫に入れてくれているから終わらせて食べよう」

「そうだな…それにしても亜月ってば瑠維さんのこと。父さんって呼ばないの？」

「うーん、それね…。“父さん”って単語は使いたくない」

「それでも瑠維さんは父親なんだから呼ばないわけにはいかないじゃん？」

「うー…、やっぱ無理！」

「そりゃそっか」

　僕が休んでいた間の授業の分も紫凰に教えてもらうことができたので課題も難なく終わらせた。

　いつもの時間に紫凰と二人で瑠維さんが作ってくれた夕食を食べた。

　紫凰は食べた食器を片付けて自分のアパートへ帰っていった。

「ただいまぁー」

「おかえりなさい」

　僕はニッコリ笑って瑠維さんに答えた。

「ふふっ、だいぶ元気を取り戻したみたいだね。明日は早く起きるからもう休もう」

「はい、お休みなさい」

　僕は瑠維さんにあいさつをすると部屋に入り、ベッドに腰かけた。

　寝ようと思っても明日のことを考えると緊張と不安で眠れなくなってしまった。

「瑠維さん…僕です。部屋に入ってもいいですか？」

　僕は瑠維さんの部屋の前で扉を叩いた。

「うん、おいで」

　瑠維さんの部屋に入った。

「どうしたの？」

「ちょっと眠れません…瑠維さん、一緒にいいですか？」

　瑠維さんは微笑んで手招きした。

「珍しいね…眠れないなんて。何かあった？」

　瑠維さんはベッドに座り読んでいた本を閉じて布団をめくった。

　僕は瑠維さんに甘えて瑠維さんの横に寝転んだ。

　何故か人肌が恋しくなり左手を瑠維さんの身体にしがみついた。

「こうしていると昔を思い出すなぁ…。小さい頃は君を抱いて一緒に寝たこともあった。ミルクの匂いがして…最初は抱くのも怖くて落としてしまいそうでビクビクしちゃったよ」

　瑠維さんが小さかった頃の僕のことを話す。

　僕は黙って瑠維さんにくっついて瑠維さんの心臓の音を聞いていた。

　いつかどこかで聞いていた安心できる音だった。

　そのまま僕は眠りについた。