高校生 激動編
016. 入学式と新しい生活 (1)
長いようで短かった春休み。
休みの間に高校の制服の採寸に行ったり、教科書や学用品の購入に学校へ行ったりして忙しかった。
意外にも瑠維さんが付き添ってくれたので順調に終わらせることができた。
同じ高校に行くことになった
僕も微力ながら手伝いをした。
まぁ僕には大きな荷物を運ぶのはちょっと手伝えないけれど運ばれた荷物をそれぞれの場所に設置したりはできる。
そういう手伝いをしていたら一日半で片付いた。
一人暮らしの荷物だからそんなに多くはなかったから早く終わったのだと思う。
そんな春休みはあっという間だった。
僕は紫凰と入学式に向かおうとした。
「亜月君、紫凰君、高校の入学式だ。さあ、行こう!」
何故か瑠維さんが一番はしゃいでいた。
「やっぱり瑠維さんが一緒に行くんですか?」
少し引きつった顔で僕は瑠維さんを見た。
「亜月君ちょっと冷たいな…またしばらくの間会えなくなるから僕は亜月君の高校生姿をばっちり見ておきたいのに…くすん」
「いい大人が泣き真似するんですか?」
紫凰が呆れて瑠維の耳元で囁いた。
瑠維は泣き真似をしたままチラッと亜月と紫凰を見た。
亜月はオロオロしていたが瑠維が泣き真似をしているのはわかっているみたいだった。紫凰は瑠維と目線を合わせ睨みつけていた。
「瑠維さん、わかりましたから。入学式一緒に行ってください」
僕は紫凰と二人で行こうと思ってたから少しだけ呆れてしまった。
紫凰の顔を見ると紫凰も深い溜息を
瑠維さんと紫凰の保護者はおじいさんの
どうやら今日はお
お祖父様は少しだけ元気がないみたいな感じで煌さんに連れられて行った。
僕たちは瑠維さんの運転で高校へと向かった。
高校に着くとグラウンドが臨時駐車場になっているみたいで警備員の誘導で順に駐車していく。
車を停めると紫凰が先に降りた。
先に降りた紫凰はその次に降りようとした僕に手を差し出した。
その瞬間、卒業式の日にお祖父様の家で瑠維さんが僕の母さんのつもりでエスコートしようとしたことを思い出した。
「どうした、亜月?」
少し首を傾げニッコリ笑う紫凰。
イケメンな顔を僕に惜しみなく向けてくるので僕の方が恥ずかしくなってしまった。
「自分で降りるよ…大丈夫だから…」
多くの新入生が親に連れられて学校のグラウンドに駐車しているから僕たちの車の周りにも到着したばかりの同級生たちとその親たちがいた。
だから僕は紫凰にだけ聞こえる小さな声で言った。
「少し地面がぬかるんで危ないから俺の手につかまれ」
確かに昨日は少し雨が降ったみたいでグラウンドが濡れていた。
余計に心配になった紫凰は手を引っ込めてはくれなかった。
僕は周りにいる人たちの目を気にしながら俯いた。
それでも紫凰は手を差し出していたので仕方なく僕は顔を紅くしながら紫凰の手を掴んだ。
僕たちが車を降りた位置から周りの様子が見えているってことはたぶん他の人たちからも僕たちの動作が見えているんだと思う。
ただでさえ紫凰は身長があってカッコイイから僕まで目立ってしまう。僕だけが背が低いし女の子みたいな顔だから変な目で見られる気がしてきた。
そう考えると紫凰の手を離したいのに振り
結局グラウンドから出てアスファルトになっている地面のところまで紫凰に手を繋がれて歩いた。
高等部の校舎前にクラス発表の掲示板があった。
紫凰と二人で確認すると紫凰はCクラスで僕はAクラスだった。
一年生はAからGクラスの七クラスあるようだ。
紫凰とはクラスが別々になってしまったけれど、麗夏と北白川舞ともクラスは別になったので嬉しかった。これで少しは僕の時間が作れると思うと顔がニヤけてしまった。
クラスごとに分けられた受付に僕は瑠維さんと紫凰は颯斗さんと向かう。
「本日は入学おめでとうございます。保護者の方は体育館へ新入生はそれぞれの教室に入りお待ちください」
受付係になった上級生から案内される。
瑠維さんと颯斗さんは一緒に体育館へと向かった。
僕は紫凰と教室へ向かって歩いた。
ゆっくりと歩く僕の歩調に合わせて紫凰が歩く。
教室に近づくとAクラス・Bクラス・Cクラスと並んでいた。
奥の方にCクラスだったので紫凰は僕が教室に入るまで見ていた。
教室の中では出席番号順で席順になっているようで席次表を見ると僕の席は真ん中辺りだった。
席に座りいろいろ考えていたら案内係の上級生が二人やって来て今日のスケジュールとか体育館までの地図とか入学式終了後のことや明日からのこととか説明をしていた。
「それでは…少し時間が早いですけど廊下に整列してください。体育館まで順に進んでいきますね」
ぞろぞろと教室から廊下へと歩き出した。
他のクラスも廊下に並び始めた。
それぞれクラスの前で並んだのを確認すると僕のクラスの先頭に立っていた案内係の上級生二人が頷くと歩き出した。
教室から体育館まで道順を知らないからなのか先輩の後について行くので精一杯だからなのか足早に歩く歩調が僕には合わせられず少しずつ前の人と離れてしまった。
僕は慌てて追い付こうとするけれどうまく歩けない。
気持ちだけがどんどん焦ってしまう。
そうしているうちに僕の後ろを歩いている『
「チッ!」
僕のことを睨んでいるみたいだし突然舌打ちされるしで驚いてしまった。
驚いたことで足も
僕はとても恥ずかしくなってその場から立ち上がれなくなった。
倒れた僕に気がついた案内係の一人が僕の元にやってきた。
「ここから先このクラスは案内係一人で案内します。ほかの新入生の皆さんはその上級生の指示に従って進んでください」
彼女は僕の手を取り、起こしてくれた。
「大丈夫ですか?立ち上がれますか?」
優しく僕に話しかけてくれた。
ゆっくりと立ち上がるのを支えてくれた彼女と並んでクラスのの皆から遅れて体育館へ向かった。
皆が座った後に席に座ったのでかなり目立ってしまった。
席に座ると周りを見渡した。
新入生が座る席の後方に保護者席があり、横には先生たちが座る席と招待客の席があった。前方には生徒会役員であろう生徒が数人いた。
保護者席を見ると瑠維さんを見つけた。
瑠維さんも僕を見つけると安心した顔をしていた。
他の保護者の顔を見ると高校生の子を持つ親の年齢だよなーと思えた。
その中で瑠維さんだけが年齢より若く見える。
周りから浮いている気がした。
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