017. 入学式と新しい生活 (2)
瑠維さんの姿にちょっと見とれながら他の人を見ていると先程僕が転んだ時に手助けをしてくれた上級生が皆と別の場所に座っていた。
どうやら先輩は生徒会役員だったみたいだ。
いろいろ考えていたら入学式は終わったようだ。
入学式が終わったら教室に戻るが入場とは逆にGクラスから退場が始まった。最初は生徒と保護者は別だったけれど終わりは保護者も教室に移動だったのでそれだけで時間がかかった。
生徒の方はクラスごとに移動していくが保護者は式が終わったことで顔見知り同士でのおしゃべりが始まりなかなか体育館から人が少なくならなかった。
それもあって僕はゆっくり教室へ行こうと思って歩き出すクラスメイトたちを見ていた。
「おい、何やってんだ?早くしろよ、お前は俺の前だろ?」
言葉きつく言ってきた彼に僕はイラッとした。
「さっきみたいに転ぶかもしれないので皆の迷惑にならないように最後に行きます」
僕は表情を冷たくしていた。
「…ふんっ…」
自分の思った通りにならないと思った皆川は悪態をつくとそっぽを向き教室へと歩き出した。
それを見ていたクラスメイトたちは彼の様子に顔を顰め歩いて行った。
そろそろ行こうかなと思って立ち上がった。
急に立ち上がったために右足が強張りその場で立っていられずに崩れ座り込んでしまった。
新入生の後ろに保護者席があったので瑠維さんに僕の行動の一部始終を見られていたようだ。
しっかり見ていた瑠維さんが顔色を変えて椅子が並んだ間を走ってきた。
「亜月!だいじょうぶかっ?!」
僕には瑠維さんの慌てぶりに驚いてしまった。
瑠維さんがこんなに慌てている姿を初めて見て僕は僕で声が出せなかった。
「亜月君?」
「あっ、はい」
「亜月君、大丈夫かい?」
「あっ、はい」
僕の返事を聞いて瑠維さんの顔色が戻った。
瑠維さんの動作にばかり気がいっていて周りが見えていなかったけれど少し落ち着いて見回すとなんだか注目されているようだった。
「亜月君?本当に大丈夫?」
瑠維さんの顔が僕に近づいてきたのでビックリしてしまって両手で瑠維さんの肩を押していた。
「瑠維さん…大丈夫だから…」
「大丈夫じゃないだろ?ほら、僕につかまって」
教室から体育館へ歩いて来た時に助けてくれた上級生と同じように瑠維さんもなかなか手を引っ込めてくれなかった。
仕方がないので瑠維さんの腕に捕まり立ち上がった。
体育館の中にはまだ多くの人が残っていてその人たちに僕の行動を見られていたみたいで少し恥ずかしかった。
颯斗さんも僕と瑠維さんの様子を見て心配しながら紫凰のクラスへ向かった。
生徒会役員の一人、僕のクラスの案内係をしていた先輩が瑠維さんのことが気になるみたいでこっちをチラチラ見ていた。
「亜月君、そんなに急いだらまた歩けなくなるよ?僕が一緒にいるからゆっくり行こう」
閑散となった体育館に少し焦りを感じ急ごうとしたが二歩三歩と足を動かそうとするけれどまたすぐ
「慌てていると歩けないよ、亜月君。落ち着いて」
瑠維さんの手が転びそうな僕を支えてくれた。
これ以上反抗して自分で態勢を整えることができなくなっていた。
それもあってか瑠維さんは見てわかる程ニコニコして上機嫌だった。
「遅れてすみません」
皆からかなり遅れて教室に到着したので僕以外の全員が席に着いていた。
少しばかり騒がしかった教室内が静かになり僕に視線が集まった。
今日は朝から注目されていて恥ずかしかった。
おまけに瑠維さん自身がものすごく注目されていたみたいだ。
教室で明日からの日程説明があったりしてそれが終わると解散となった。
他のクラスも同時くらいに終了したみたいで僕のクラスに紫凰が飛び込んできた。
「亜月っ!大丈夫か?!」
「ん?何が?」
「何が?って…体育館で立てなくなってただろ?大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。瑠維さんも紫凰も過保護すぎるよ」
僕は紫凰を見て眉間にしわを寄せた。
「帰る…はぁ…今日から
「うん…、帰ろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます