008. 警察署

 聖夜せいや清心きよこは長い時間、家にも入れず家の前で押し問答をしていた。

 聖夜と清心の声の大きさで段々と家の周りに人が集まって来ていた。


「ねぇねぇ、どうしたの?」

「ほら、この間禿河どくがわさんちって泥棒が…」

「あー、そういえばあの子は?」

「そうそう犯人はすぐに…」


 何人か集まって聖夜と清心を睨みながら話していた。

 聖夜たちはどうやって警察官たちを追い払おうと考えていて耳に入ってきたのは“泥棒”という単語だけだった。


「泥棒って何?」

「何でうちに…?」

「詳しいお話は警察署で」

 聖夜も清心もやっと周りに集まった人たちを見て自分たちが注目されていることに気づき、おとなしく警察官と一緒に乗用車に乗った。




 警察署に着くと聖夜と清心は別々の部屋に案内され、麗夏には女性の警察官が遊び相手になって廊下の長椅子に座っていた。


 女性警察官は何気なく麗夏に話しかけた。


「ねぇ麗夏ちゃん。麗夏ちゃんちはどこにお出かけしてたの?」

「麗夏はねぇ、パパとママと三人でネズミーランドに行ってたの。二回大きなホテルに泊まっていっぱい乗り物に乗って遊んだのぉー。楽しかったぁー」

「ふーん、麗夏ちゃんちの家族って何人なの?」

!」

 女性警察官は麗夏の間髪入れずに答えたその答えに少し驚いていた。






   聖夜と警察官


「何なんですか。私が何か悪いことをしましたか?」

 不機嫌な態度のまま部屋に入り、ガタガタと大きな音をさせてふんぞり返って椅子に座った。


「今まであなたたちは何処に行っていたのですか?」

「あ゛ぁ゛?何処だっていいだろ。あんたたちの迷惑になるようなことしてねぇから」

「迷惑…ですか…」

 男性警察官は目をつむって溜息をいた。


「それじゃぁ、子どもがたった一人で何故あの家に居たのですか?」

「そ、それは…」

「何ですか?」

 男性警察官は上目遣いに聖夜を睨み腕を組んだ。


「貴方たち三人は家に子どもを一人置き去りにした。これは紛れもない事実です。そして自分たちだけで楽しんでいる間にあの子はたった一人、家の中で強盗と鉢合わせしたんだぞ?!」

「ごう…と…う…?」

「そうです。しかも貴方たちは監護しなければならない十八歳未満の児童を長時間放置したとして処罰される法律がありますから」

「えっ?そんなものは知らない!私たちはアイツを躾のために…」

「躾のためって…そんな理由でしたのならこれは体罰・虐待ですから」

 言い訳がましく聖夜は弁解を始めたのを男性警察官は呆れた顔をして見ていた。






   清心きよこと警察官


「何で私たちが取り調べなんて受けなきゃならないのよ!子どもだっているんだから早く帰らせてよ!」

 自分の都合だけを押し付けるように話す清心だった。

 席に着いた女性警察官は目頭に指をあて、揉みながら話を始めた。


「この三日間、あなた方は何処にいらしたのですか?」

「そんなのあんたに答える必要なんかないでしょ?」

「亜月君を家に一人で居させたのは何故?」

「関係ないでしょ?!」

「関係なくはないですよ。亜月君が家に一人で居る時に強盗が押し入ったんですから」

「ふーん、だから?」

 清心は口角を上げ薄ら笑いを浮かべた。


「だから?じゃありません!あなた方は亜月君の親でしょう?」

「アイツの?私が?ふんっ!冗談じゃないわよ!あいつは私の子じゃないから」

 清心は『亜月』の名前が出ただけで女性警察官を睨み、嫌悪感を丸出しにしてきた。


「アイツは彼の…聖夜さん前の奥さんとの間にできた子ども。私には関係ないわ。だーかーらー、私に育てる義務なんかないわけ」

 女性警察官は深いため息をいた。






   聖夜と清心の事情聴取をした警察官たち


 一通りの事情聴取を終え、聖夜たちは家に帰された。

 別々に事情聴取をしていた警察官たちは部署に戻ってきた。


「何なんですか?あの親は!私、信じられません」

「まぁそうカリカリすんな…確かに親父の方は女の言いなりみたいだしな。実の息子なのに…」

「母親の方は自分は関係ない、自分の子どもじゃないから育てる義務はない…と」

「それじゃ何故あの子はあの家に居るんだ?“瀧野瀬家”が母方の親だろ?」

「そのことなんですけど、亜月君が三歳の頃に母親が亡くなって、祖父母が彼を引き取って育てようとしたようです。ですが父親が親権を何故か主張して押し切ったようです。その後すぐに不倫関係だった清心とその娘の麗夏が禿河とくがわの家にやって来て住むようになったようです。それからずっと義母と義姉に酷い扱いをされ続けていたみたいです」

「そして彼がたった一人で家に残された時に強盗…精神的に辛すぎるぞ…」

「えぇ、確かに…。彼の祖父の話では今彼は祖父母の家に居ますがその様子を聞いたところ、彼…亜月君は部屋に一人で居られないらしいですし、部屋の灯りを消して眠ることさえできない状態だと聞きました。可哀想に…」

「もう少し落ち着くまでこちらの聴取は無理だな…」

「…はい」

 警察官たちは現在の状態では何もできないことが悔しくて二人は黙り込んでしまった。




 そしてこの事件はとして片づけられ、この時

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