004. 視点:皆川 京介
中学校までの俺は生活態度も授業態度も悪かった。
目つきが悪かったこともあって自分が思っていた以上に周りからかなり嫌われていたようだ。
勉強嫌いで成績もあまり良くなかったから俺が行ける高校は限られていた。
それでも
高校に入学したら今までの態度を改めて勉強もしっかりやろうと決めていた。
そして念願の可愛い彼女を作るんだ!と心に決め、入学式に臨んだ。
入学式当日。
高等部の校舎前でクラス発表の掲示板があり、クラス確認をして教室へ向かった。
掲示板を見る限り、中学まで一緒だった奴らは同じクラスなのは二人ぐらいだったから俺の態度が中学までと変わっていても大丈夫だろう。
自分の座る席を確認しながら教室の中を見渡した。
おぉぉー!幸先いいんじゃないかぁー!
俺好みの女子がいるぜ…。
ちょうど俺の席の前に座る女子が可愛かった。
グレーの髪の毛が少し目元が隠れるように下を向いているが身体が細いし思いきり抱いたら骨が折れそうなくらい華奢だ。
でも…でも、いかにも守ってあげたい感じで…この子を彼女にしたいわー。
なんて思いながら席に着いた。
ただ残念なのは俺の席が彼女の後ろ…顔をしっかり見ることができない…ちょっとばかり悔しいぞ。
モヤモヤとした気持ちでどうやって彼女を口説こうかと思案していると教室に案内係の上級生二人が入ってきた。
二人の上級生がこれからの日程などの説明をしていたが俺は殆ど聞いていなかった。
でもこの後は体育館に移動して入学式をしてそれが終われば教室に戻って解散だろ?
別にどうだっていいことじゃん。
そんなことよりも彼女攻略の方法を考えたい…。
でももう暫くこうして彼女の後ろ姿、眺めていたいかなぁ…。
そんな風に考えていたけれどまだ彼女の名前も知らないから友だちにも慣れない…俺、どうしよう…。
京介は目の前にいる生徒のことばかりが頭いっぱいになりほかのことは何も考えられなかった。
入学式に向かうため、クラスごとに整列して体育館へと歩き出した。
案内係の上級生二人はクラスの先頭に立ち、少し距離のある廊下を足早に歩いた。
クラスメイトたちもそれに倣い、足早に歩いていく。
何故か俺の前の彼女から遅れ気味に歩いている。
じっくり彼女を観察していると少しぎこちない歩き方だった。
前の生徒たちとは少しずつ離れてきたのを感じた俺は思わず舌打ちをした。
「チッ!」
すぐ側を歩いていた彼女には俺の舌打ちが聞こえていたようで、後ろから見ても判るくらいに肩を上げてビクついていた。
俺は彼女を怖がらせてしまったようだ。
ビクついた彼女は余計に足を
転んだ拍子に倒れた。
それに気づいた上級生が彼女のもとに走り寄り彼女を起こした。
「ここから先このクラスは案内係一人で案内します。ほかの新入生の皆さんはその上級生の指示に従ってください。私はこの方を…」
その上級生が彼女の後ろについて歩いていた俺たちに言った。
「大丈夫ですか?立ち上がれますか?」
案内係の上級生は彼女に手を差し出し、ニッコリ笑っているのを俺は横目で見ながら体育館へと歩いた。
俺の後ろに並んでいた女子生徒たちが俺を睨みつけるようにしていた。
俺が彼女を転ばせたように見えたのかもしれない。
けれど俺は何もしていないから振り返り、女子生徒たちを睨み返してしまった。
そんな行動がいけなかったのかもしれない…次の日には俺は“悪い奴”となってクラス中に広まっていた。
このぶんじゃ学校中に広まってしまうのも時間の問題かも…。
そもそも彼女を俺のモノにしようと考えていた計画には穴があった。
いや、ありすぎたのだ。
例の彼女は…
男だった…。
何故気づかなったんだろう…。
俺ってどうしようもねぇ…。自分の好みだった彼女のことばかり考えていてそれ以外に何も考えられなくなった自分が恥ずかしすぎるよ。
で、結局俺は彼女…、いや彼に謝ることもできずに『
実際あいつは歩くのにもたつくし、体育の授業で服装はハーフパンツだから膝から下の傷痕が見えているのが気持ち悪くてアイツの顔を見る度にイラついた。
「
なんてことを言ってしまった。
「僕の名前は『はげがわ』じゃなくて『とくがわ』だから…」
自信なさげに小さな声で
そんなことはとっくに分かっているが
女の子じゃないけど何故かコイツは守ってやりたいと思わせる儚さがある。
でも俺はノーマルだ!健全な男なんだ!
この気持ちは何かの間違いだ。
悶々とした気持ちで
二年生になり、
もうこれ以上アイツに悪い印象を与えたくない。
けれどアイツを見るとどうしてもイラついてしまう。
これから二年生…どうしよう…はぁ…。
泣きたくなる…。
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