003. 僕は幼馴染みが大嫌いだ

 僕には幼馴染みと呼べる友だちが二人いる。

 そのうちの一人は小説でもよくある定番中の定番、近所に住む女の子だ。

 定番であれば幼馴染みから恋愛に発展するのがセオリーであるのだろうけど僕の場合はこの幼馴染みは大嫌いだ。


 幼馴染みは『北白川きたしらかわまい』という。

 生まれる前から家族ぐるみのおつきあいだ。

 僕の父さんと母さんが結婚した時にこの街に引っ越し、今の家に住んだ。同じタイミングで北白川舞の家族も引っ越してきてめでたく“ご近所さん”となった。

 その後は舞が生まれ、僕が生まれ保育園・小学校・中学校と一緒に過ごしてきた。

 最初は僕と仲が良かった舞だったが、三歳から僕の家にやってきた義姉・麗夏に懐きそれ以降の小学校・中学校は麗夏の後ろで虐められていた僕を笑って見ていたんだ。

 どんなに助けを求めてもコソコソ陰に隠れて虐めてくる麗夏は僕を虐めていることをよく知っている舞だけを連れて虐めてくることが多かった。

 だから僕は北白川舞のことは信用できない。

 何度か舞は僕のことを嫌っているくせに何か言いたげな顔を見せる。

 でも僕は知らない、気づいていないフリをする。


 僕には全く分からないけど、気の弱い舞は麗夏に依存して楽して生きていこうとしているようにも見える。

 麗夏は麗夏で頼ってくる舞が良い気分にさせて麗夏は優越感に浸っているという感じだろうか。

 幼い頃は僕のおもちゃやお気に入りの絵本を奪い取るのは当たり前だった。

 麗夏が僕と一緒に暮らすようになったのは僕が交通事故に遭った後だから走れない僕は麗夏に突き飛ばされたり、足を引っ掛けられたり…。

 今は杖のような補助器具を使用していたのがいらない程度にはなった。

 最初は杖を持っていたので麗夏にはその杖を奪い取られたりした。

 その度に泣いて喚いて訴えた。

 その時も舞は麗夏の後ろで麗夏と一緒になって笑っていた。


 このオチは麗夏の母・清心きよこがやって来て泣いている僕が頬を叩かれた。


「うるさいっ!男が泣いてるんじゃないよ!全く…杖ぐらいで泣くことじゃないでしょ」


 理不尽にも怒られるのは僕だった。

 結局のところ杖を持っていれば麗夏に奪われることを繰り返すので僕は杖が必要なくても歩けるところまでリハビリに励み、何とか歩けるようになった。


 その後も杖がなくなっても僕を押し飛ばしたり、足を引っ掛けたりすることを止めなかった。

 それを見ていて笑っている舞には負の感情しかない。

 僕は幼馴染み・北白川舞に見捨てられたんだと思った。


 だから、僕は北白川舞のことは信用できないし大嫌いだ。

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