第2話 夢見る少年の心は無敵



 マイケル曰く、月面を移動する際に使う自家用車(という言い回しだったが、おそらく洒落のつもりなのだろう)に彼らが乗り込んでから、幾しばらく。


 けして速いとは言い難く、率直に言えばふざけているのかと思うぐらいにノロノロと走るその車を見やりながら……私は、特に何かをするわけでもなくローラーを走らせ、並走する。


 時折、マイケルが……というか、彼らから視線を向けられるのが分かる。と、同時に、彼らが酷く興奮しているのも……私は察知していた。というか、嫌でも分からされた。


 何せ、私から確認出来る、彼らの心臓の鼓動回数が最初に確認した時に比べて、明らかに高い。それは、彼らの興奮を如実に表しているのと同じである。


 酸素という有限の命綱に繋がれている今の彼らにとって、興奮状態を維持時するという行為はデメリット……つまり、自殺行為以外の何物でもない。



 なのに、彼らはそれを行っている……いや、続けている。


 それを止められないぐらいの関心を、私に抱かれている。



 ボナジェでなくとも、分かる。むしろ、これで分からないやつがいるのかと思うぐらいに彼らの興奮は留まることを知らず……さて、どうしたものかと私は幾度となく問い掛けを己に行う。


 ……彼らは、訓練なり何なりを受けているはずだ。彼らにとっては極限的な環境である月面にて、すぐに平静を取り戻す、彼らなりのコントロールの方法を。


 事実、先ほどの応対(という言い方も、何だが)の際、彼らは見事に己を律していた。誤解が生じて一触即発になり掛けたにはせよ、彼らは持ち直し、私と交友関係を築こうと努力をした。


 だから、私も彼らの努力に応えたいとは思っている。



 ……。


 ……。


 …………思っては、いるのだが。


 ちらり、と。少しは落ち着けという意味を込めて、彼らに視線を向ける。


 特に、深い意図は無い。ただ、ここは宇宙だ。宇宙服無しでは一分と星の外では生きられない人間であることを、忘れてはならない。



 たとえ、星の外に出てくるだけの資格を与えられた存在であっても。


 たとえ、彼らがその存在の中でエリートと呼ばれる個体であっても。



 その本質は、何処まで進んでも人間の域を越えられない。人間は、何処まで行っても人間にしか成れず、何処まで行っても人間でしかない。


 だから、落ち着けと促した。お前たちにとっては危険だから、興奮するなら、少なくとも今よりは安全性の高いホームとやらで存分に興奮しろと、私は視線で訴えた。


 ……だが、しかし。


 私の思惑を他所に、彼らの興奮は更に高まっているようだ。


 何せ、視線を向けるだけでいちいち反応を示し、軽く手を振る(主に、マイケルだが)やつまで……うむ、困った。



(宇宙服を着た状態でこれならば、アレを脱ぐことが出来るホームとやらに到着したら……)



 軽く予測してみるだけで、結果は容易に推測出来る。彼らに対して如何ほどの贔屓を注いだにせよ、しばしの間はまともな対話が出来なさそうだな……と、思った。


 だからこそ、先ほどから何度も何度も、とにかく落ち着けと促してはいるのだが……何度やっても、逆効果にしかならない。私の意図は、欠片も伝わってはいないようだ……あっ。



 ――制限を掛けている私のセンサーが、とある物質を捉えた。



 位置にして、彼らの進行方向(ルート)より21度ズレている。距離にして344メートル先にあるクレーターの、中央部。そこに埋もれている物質に、私は思わず視線を向ける。


 それは、宇宙全体からみれば掃いて捨てるほど有る、ありふれた物質である。しかし、辺境も辺境であるこの太陽系には……というか、この銀河においては、珍しい物質である。


 だから……興味を惹かれた私はローラーの回転速度を上げ、そのクレーターへと向かった。


 何やら背後で、『待て』とか『止まれ』とか、彼らの叫び声がセンサーを通じて聞こえた(一方的に傍受しているだけなのだが)が……気にせずクレーターへと飛び降り……ああ、コレだ。


 大きさにして、50cm程度の鉄の塊。それを確認した私は素早く反転してクレーターを登ると、先ほどよりも少しばかり離れた先で車を止めようとしている彼らの傍へと戻った。



『――っ、――っ!』



 途端、彼らが一斉に喚き出した。まあ、立場が逆なら騒ぐのも無理はないと思うので、私の方からどうこうするつもりはないが……正直、鬱陶しい。


 ただ、彼らも馬鹿ではない。私との交流も、全ては私の意志一つであるということは分かっている。だから、すぐに彼らは互いを落ち着かせ、静かになった。


 ……で、だ。


 そうなると、彼らの興味はいきなりこの場を離れた私へと向けられた。


 当然、どうしたのかという問い掛け(そうだろうと思う)が成されたが、私は答えなかった。だって、言葉が分からないから適切な返答が分からなかったからだ。


 なので、私は彼らの質問の一切を無視し、彼らが案内するホームへと黙って向かう事を選択した。





 ……。


 ……。


 …………そうして到着し、彼らが寝泊まりしているというホームの前までやってきたわけだが。



(ええ……何これ、こんな……ええ、こんな脆い材質で作った施設で寝泊まりしているのか?)



 正直、ホームを見て私は少し引いた。何て命知らずなやつらだと、率直に思った。


 何故なら、彼らがホームと呼んでいる居住施設とやらは……宇宙から飛来した隕石の直撃に、一発とて耐えられない作りになっていたからだ。


 まず、ホームは長方形の建物を幾つか繋ぎ合わせた形状をしている。おそらく、そういう形になったのは効率性……後から増築出来るようにという意図が見て取れる。


 そこは良い。連盟種族たちが時折発揮する気が狂った造形ではないだけで、私としては花丸を上げたいぐらいに評価が高い。


 ダークマターを吸収して自己増殖する生きた家や、臓器のように脈動するおぞましき色合いをした家でもなく、あるいは油断すると即座に重力場に囚われて粉々にされる頭のおかしい家でもない。


 この月面のように物静かで、メタリックカラー(そう、尾原太吉のデータには有った)な色合いの建物は、私としてはとても好みに合致した、素晴らしいホームだと思った。


 しかし、それ以外は減点だ。


 材質の名称等のデータが不足しているので詳細は不明だが、軽くスキャンしてだけでも分かる、強度が非常に薄っぺらい。それこそ、私の蹴り一発で蒸発してしまうぐらいに、だ。



 ……はっきり言って、脆すぎると思った。



 大気に覆われた地表ならばまだしも、大気の無い月面に設置するうえで、コレは不適切ではないだろうか。せめて、隕石の数千発は耐えられる物を作っておくべきでは……とも思った。


 よくもまあ、こんな頼りないモノで宇宙空間に出ようと考えたものだ。ボナジェである私が言うのもなんだが、もう少し命を大切にしろ……とも思った。



 ――だが、しかし。



 チラリと、彼らが乗って来た車……と。ホームより少しばかり離れた位置に鎮座している『宇宙船』と思わしき乗り物を見やった私は、ああ、とすぐに納得した。


 彼らはまだ、不適切だとか何だとかをそこまで深く考える段階ではない。つまり、それが出来るだけの力や技術をまだ、彼らは手にしていないのだ。


 おそらく、月に人や物を運ぶ為の技術はあるが、そこまで。持ち運ぶ物や材質、あるいは重量などを厳選しなければならない……といったところだろうか。



 ――それならば、まあ、分かる。これが、彼らの精一杯なのだ。



 だったら、私があーだこーだと批評を並べるのは筋違い……いや、余計な御世話というやつか……ところで、これは何処から入るのだろうか?


 パッと見た限りでは、よく分からないが……まあいい。勝手に入ったら怒られそうだし、大人しくしておこう。


 そう判断した私は、マイケルに呼ばれて(というか、促されて)併走を続けながら、ホームをぐるりと迂回するように走る。


 その途中、私の視線を引き付けたのは……ホームの周りに散らばっている様々な物質……いや、人工物であった。


 そう思う理由は、形状や材質から考えて、明らかに月面由来のモノではないからだ。付け加えるなら、連盟種族のモノでもなければ、私と同じボナジェが作ったモノでもない。


 仮にその二つであるならば、私に搭載されている各種センサーがフル稼働し、既に私は完全なる臨戦態勢……すなわち、『お遊び仕様』に武装を露わにしているからだ。


 それが無いということは……で、だ。


 そうして眺めている私を尻目に、マイケルたちは車を走らせ……ホームに併設している……そうだな、ホームの端に当たる、ドーム状(と、彼らの言葉で言うのだろう)の建物の傍で車を止めた。


 ……まだ、ホームの外。つまり、真空だ。


 私は平気でも、彼らは違う。何故、ここで車を降りるのだろうかと思っていると、マイケルたちは私へと何度も振り返りながら……ホームの側面へと辿り着くと、何かのスイッチを押した。


 途端――無音の中に響く(聞き取れたのは私だけだろうが)、機械の稼働音。見れば、側面のように見えていたシャッターが開かれた先には、宇宙服を着た3人が入っても十分に余裕を感じさせる空間が用意されていた。



(……ああ、なるほど。宇宙服を掃除する為の隔離室か)



 中に入るまでもなく、一目でその空間の用途が知れ……いや、まあ、内部の壁に設置されている装置をスキャンしただけなので、考える以前の問題だが……まあいいか。



(……ふむ、方法は掃除機で月面の砂を直接吸引するのか。重力制御の方法は、まだ確立されて……いや、技術的に難しいのかもしれないな)



 とりあえずは手持無沙汰なので(私は洗浄の必要が無いので)、彼らの作業を見物することにする。意外と、丁寧に掃除を続ける彼らの姿には見ごたえがあったから。


 どうしてそこまで念入りに……推測する限りではあるが、おそらくは月の砂が彼らにとっては……というか、おおよその生物に対して月の砂は有害だからだろう。


 何せ、ここの砂は一粒ひと粒が棘だらけだ。宇宙服の上からならば全く無害な程度の砂粒たちも、それが呼吸を通じて人体に入れば途端に姿を変える。


 おまけに、ここは重力が弱い。つまり、地球よりもはるかに砂粒が舞い上がり易く、それでいて気流が発生しないから風上へ向かうといった逃げ場が無い。


 故に、呼吸による吸引を防ぐ為に、彼らは念入りに掃除を……と。



『――っ、――っ』



 ぼんやりと彼らの仕事を眺めていると、唐突に彼ら……いや、何故か率先して前に出てきたマイケルが、掃除機の先端を私に向けて来た。



「……私も、か?」

『――っ、――っ』



 言葉は通じなくとも、特に驚きはしなかった。彼らの意図というか理由は推測出来ていたし、いくら何でも私だけが例外……というわけにはいかない事も、分かっているから。



「私は重力ユニットで異物を全て落としているのだが……やらないと駄目なのか?」

『――っ、――っ』

「……こうまで通じないというのも、些か不便だな」



 とはいえ、分かっていても面倒だと思う事は多々ある。「分かった、分かったからさっさとやってくれ」信号を送っても混乱を招くだけだと判断した私は……さて、と両手を広げた。


 すると、『ありがとう』マイケルが私にも分かる言葉を投げかけながら、私の身体へと掃除機を近づけ……ふむ、こういう感覚なのか。


 正直、くすぐったいという感覚も無ければ、吸われているという感覚も薄い。『右手を上げて』と指示をされたので、言われるがままに右腕を上げる。


 ……まあ、頼りない『尾原太吉』の知識とはいえ、さすがにその程度の英語を認識し、理解出来るだけのモノは有している。


 おかげで、本当に簡単な言葉は今の私にも理解が出来る。右腕を上げろとか、後ろを向けだとか、その程度だが……今は、その程度で――ん?



『――ごめんなさい!』



 されるがまま黙っている最中、唐突に謝られた。見れば、マイケル……ではなく、もう一人の……何だったか、ジョージとか名乗っていたやつだ。


 そいつが何故か、おろおろと申し訳なさそうな雰囲気(実際、私が見た限りでも似たような表情を浮かべている)を掃除機の先端を左右にぶらぶらさせている。



 ……もしかして、間違って掃除機以外の、別の装置を私に使ってしまったのだろうか。



 そう思ってスキャンをしてみるが、やはり、掃除機だ。間違っても、連盟種族が使うような、ボタン一つで星ひとつを貫通するレーザーなんてものも装着されてはいない。



 ……いったい、何が?



 状況が分からないのでマイケルを見やれば、彼も何処か困った様子でジョージに通信を行って……いや、本当に何なのだ、私が関知していない間に何が起こったのだ?


 どうして良いのか分からず黙って通信を続けている二人を見ていると……これまた唐突に、首筋に掃除機を宛がわれた。


 見れば、この中ではおそらく一番年老いていると思われる……カルロスであった。


 今度は何だと思っていると、カルロスは無言のままに掃除機を稼働させ……私の洗浄作業を再開した。



 右、左、頭、胸、腰、股、右、左、右、左……念入りに、かつ、手早く洗浄を終えてくれたカルロスが、『よし!』軽やかに片手を上げて私に向けた……ああ、これは。



 ……こうするのが正解なのだろうか。



 そう思って、宇宙服越しに、彼の手を軽く叩いた。途端、『イェェア!』いきなり機嫌を良くさせたカルロスと、それを見て騒ぎ出した二人を見て……私は、思う。



 ……何だこれ、と。



 よく分からないが、ある意味では連盟種族なみに感情の起伏が読めないぞと思いつつ……私は、彼らの良く分からない反応を眺める他なかった。






 ――ホームそのものの脆さから内装の脆さも想定していたが、やはり、推測の域を超えるモノは何一つなく、全ては私が想定していた通りでしかなかった。


 例えば、パッと目に留まった机や椅子。


 重い材質のモノは使えない(運べないだろう)だろうから、少しでも軽くて丈夫な材質を使っているのだろうが……やはり、脆い。


 他にも、身体を鍛える為と思われる装置もそうだし、ホーム内を張り巡らされている配線などもそうだ。


 悪いわけではないのだが……かなり、無理をしているように私には見えた。



 というのも、彼らはまだ宇宙に出たばかりの雛だ。



 すなわち、何時かは地上に戻る必要があり、それが何時になるかは不明だが、そう長くここには居られないということは、わざわざ調べずとも分かる事である。


 何せ、数分と生きられない月面に家を作り、そこで滞在できるように様々な創意工夫を積み重ねているのだ。宇宙に適応した進化を遂げたのならまだしも、彼らはそうではない。


 言うなれば、本来は居られない場所に、無理やり居られるようにしているような状況だ。それも、彼ら人類が持てる技術力を結集させたうえで、だ。


 これを、無理をしていると言わず、どう言い表せば良いのか……傲慢な考えなのだろうが、私はそう思わずにはいられなかった。



 ……。


 ……。


 …………で、だ。


 隔離室からホームの中へと入った私は外観通りというか、想像していた通りに狭く、ごちゃごちゃとしたその中で……私たちを出迎えた、この場では唯一の雌へと改めて視線を向けた。



『――、――、――っ』

『――っ! ――!』

『――、――』

『――! ――!』



 雌……いや、女と称するべきだろう。


 その彼女の風貌は、おそらくは人間たちの間では魅力的と判断される水準の域に達していると思われる、美しい女であった。


 先ほど……始めて対面した際に、彼女が私に向けた……好意的と称するかよく分からない反応を示した姿を、思い出す。


 金色の髪に、青い瞳。顔立ちや体系の良し悪しは良く分からないが、マイケルたちが彼女を目にした途端、ほんの僅かながら心音が高まったので、そうだと判断した。



 ……まあ、人間に限らず、生物が魅力的な雄や雌を前にして反応するのは、もはや本能のようなものだ。



 今の私にはよく分からないが、まあ、そんな美女が、何やらマイケルたちと言い争いをして……言い争いなのか、それとも、タダの会話か?



(……これは、どちらなのだ?)



 内心、首を傾げる。


 黙れとか、そういう言葉は聞こえないので、罵倒し合っているわけではなさそうだが……女が浮かべている表情は笑顔ではない。


 笑顔ではないならば、好意的な反応ではない。つまり、敵意を向けているも同じ……いや、しかし、敵意を受けているマイケルたちの表情は怒りでもなければ敵意でも……駄目だ、分からない。



 ――やはり、意思疎通が出来ないのは非常に面倒だ。



 なので、私は彼らから視線を外して……ホーム内を回る事にした。


 まあ、造形こそ私が知るソレらとは異なるものの、何が置かれている(あるいは、設置されている)のかは容易く想像出来るが……それはそれだ。


 せっかく来たのだし、見ないでここを去るのも……という程度の感覚で、さて何処から回ろうかとローラーを回転させた……途端。



 こつん、と。



 何かが、ローラーに当たった。気付かず、何かが当たった事に(機能を最小限に抑えているので)新鮮な気持ちになりつつも、当たった物体らしきそれに目をやる。


 それは――何なのかは不明だが、20センチ四方の、折り畳みされている装置(鉄板ではないのは、一目で分かった)であった。


 気になって開いてみれば……ああ、これは、アレだ。『尾原太吉』の記憶に有る、パソコンとかいう通信機器……だったかな?


 しかし……これは確か、あまり粗末に扱うと壊れてしまうモノではなかったか?


 それがどうして、こんな場所に置かれて……そういえばと振り返ってみれば、先ほどまでマイケルたちに怒鳴っていた女が、私へと視線を向けていた。



『――っ』



 何かを、口にした。


 だが、それが何なのかが私には分からない。


 向こうも、すぐに思い出した(マイケルたちから、説明を受けだだろう)のか、何とも言えない表情を浮かべた。



 ……が、彼女はそこで止まらなかった。



 困惑する私を他所に、彼女は半ば奪い取るような形で私が持っていたパソコンを手に取ると、それを傍の机へと置いて……パソコンが起動してすぐに、カチカチと操作を始めた。



 ……会話が通じないせいか、相手の行動がまるで読めない。



 何かしらの攻撃手段を準備しているようにも見えないが、こちらに対して何かをしようとしているのだけは、何となく察せられる。



(……? パソコンからの信号は感知出来ない……何処にも回線が繋がっていないようだが、何をしているのだ?)



 しかし、肝心要の『回線が繋がっていない』という意味不明な事実に、私は内心にて首を傾げた。


 連盟種族が使う、『もはや説明が不可能な摩訶不思議通信』ならば、私ですら感知出来ないのは納得出来るが……今の人類に、それが可能なのだろうか……ん?



『――こっち来て』



 ぼんやり眺めていると、何やら呼ばれた。


 いや、本当に何なのだろうかと首を傾げつつも、促されるがままパソコンの画面を覗き込み……あ、これ。



 ――これ、アレだ。辞書というやつだ。それも、多岐に渡っている。



 思わず、私は内心にて手を叩いた。私の頭脳ユニットの中で記録されている『尾原太吉』のデータベースに、眼前のソレと近しい映像(と、情報)が有った。


 さすがに全てが一緒というわけではないし、そもそも見た目がかなり違うが……おそらく、『尾原太吉』が記憶していたソレよりも後に作られた物か、あるいは高性能……まあ、どちらでもいいだろう。



 ――何であれ、コレからデータを抜き取ってしまえば後はもう簡単だから。



 そう判断した私は、何やら身振り手振りで説明をしようとしてくれていると思われる彼女を押し退ける。『――っ!』何やら驚いた様子の彼女を尻目に、後頭部より取り出して伸ばした端子の形状を適応させて……かちりと、接続した。



 ――途端、私の中に……いや、頭脳ユニットの中に、パソコンの中に納められている辞書データの全てが流れ込んでくる。



 手始めに、彼らが使用しているであろう言語(つまり、英語だ)の情報。一つ一つの単語から始まり、文法を始めとして過去から現在に至るまでの、膨大な文字の羅列。


 並びに、内蔵されている音声と思わしきデータも収集。それを手掛かりに、一つ一つの単語の発音と、その発音がどのような意味を持ち、その声がどのような意味を相手に与えるのかを推測し、組み立ててゆく。


 もちろん、取り込むデータは一つだけではない。彼らが使用している英語が終われば、今度は『尾原太吉』の記憶データベースより引っ張り出した『日本語』へと作業を移す。


 日本語の方は……正直、英語よりもずっと構築が楽だ。


 理由は単純に、『尾原太吉』が日常的に使用していた言語が『日本語』であったからだ。つまり、実際に使用されているサンプルデータが幾らでもある


 癖というやつなのか、それとも辞書に不備が有るのかは不明だが、二つ示す情報に違いが有る部分が幾つか見つかったが……まあ、気にする必要はないだろう。


 ……ついでに、完成され定められた手順に従って動く装置だけではない。その装置を動かす為の構造すらも私は読み取り、記録し、どのような手順を用いてこの辞書が稼働しているのかを調べてゆく。


 そうする理由は、特に無い。ただ、なんとなくという程度であり、目に付いたからという程度の感覚でしかなかった。



 ……。


 ……。


 …………所用時間、0.000013秒。差し込んだ端子を外して収納しながら、正直、かなり遅いなというか時間が掛かったなと思った。



 まあ……私は戦闘用に特化したボナジェだ。



 考えるだけで諸々がおかしい連盟種族の基準で考えると、こっちまで頭がおかしくなる。ボナジェとしては普通と思った方が良いのだろう。



「――認識を確認。私の言葉を認識出来るか?」



 そう結論を出して自分を納得させた私は、とりあえずは、と意識を切り替えて彼らに尋ねた――が。


 不思議な事に、彼らは誰一人私の問い掛けに返答しなかった。


 いったいどうしたのか、今にも眼球が飛び出さんばかりに大きく目を見開き、顎も外れそうなぐらいに開かれたまま、無言のままに私を見つめていた。



 ……。


 ……。


 …………これは、どういう反応なのだ?




 攻撃的な反応には見えないが……意図が分からず、私は内心にて首を傾げる。ボナジェである私でも、これぐらいなら簡単なのだが……ふむ。



 ……。


 ……。


 …………とりあえず、彼らからの反応を待つ。




 ……。


 ……。


 …………待つ。



 ……。


 ……。


 …………待つ。



 ……。


 ……。


 …………いや、さすがに遅いぞ。



 まるで連盟種族たちのように先の読めない彼らの仕草というか、反応は正直薄気味悪くも興味深いが、何時まで経っても何の反応も示さないのは飽きて……いや、待てよ。



「……もしかして、うっかり心臓を止めてしまったのか?」



 それなら、あり得る。うっかり心臓を止めてしまって身動きが出来なくなった――居た。そういう馬鹿な機能を付けられた『ボナジェ』の一体を見た覚えが私にはあった。



 当時……『お遊び』の相手として対面したそいつはまだ、精神的には幼生体であった。



 なので、心臓が止まった程度で死にはしないが、自力で心臓を再稼働させることが上手く出来ない。誰かに稼働させてもらうか、しばらく起動を繰り返して動き出すまで……というような状況に陥ってしまったのだ。


 おかげで、その時ばかりは楽だったが……正直、思い出したくはない記憶だ。


 何せ、精神が幼いとはいえ、身体はボナジェだ。程度の差こそあれ、ボナジェの身体はとにかく頑丈である。


 『お遊び』に耐えられるよう、様々な連盟種族たちが実に楽しんで作るのだから、その強度の一端も垣間見えよう。


 つまり、身体だけが大人になっている赤子をなぶり殺しにするようなものだ。幼生特有の突拍子な反撃には何度も面食らったが、それとは別に……と、そうじゃない。



(心臓の鼓動は……動いているようだが、擬態の可能性もある。『尾原太吉』の記憶にも、心臓が止まるのは良くないとデータが有るし……よし)



 掌に搭載されている機能の一部を作動。途端、何とも言えない熱気と共に、私の掌が……目に見えるぐらいにはっきりとした高速振動を始め――と。



「――ちょ、ちょっと待って、待ってちょうだい……あの、待って……!」



 後は、これで心臓を……と思った辺りで、当の彼らに反応が見られた……ああ、いや、これは我に返ったというやつなのだろう。


 見やれば、彼らは誰もが苦しそう……というよりは、精神を落ち着かせようとしているのか、胸に手を当てて何度も深呼吸をしている。



 ……いったい、何に動揺したのだろうか。



 何かの儀式なのか、彼らの中には胸の前で何度も……上下左右に片手を振っている姿も……何だろう、これは……ああ、祈りというやつか。


 軽く『尾原太吉』の記録を探ってみれば、答えはすぐに出た。


 ソレには、人間の中には宗教と呼ばれるモノがあって、それに祈りを捧げることで精神の均衡を図ろうとする者がいると有る。


 残念なことに、『尾原太吉』にはそのようなモノとは縁が無かったようだ。


 なので、彼らが行っている祈りという所作が、どのような形で精神に影響を与えているのかは私には分からず、彼らが落ち着くのを黙って待つ他無かった。



「もう、いいか?」

「……ええ、ごめんなさい。驚かせてしまったわね」

「驚くというよりは、困惑という言葉が正解に近い」

「……本当に、言葉を学習したのね。それも、あの一瞬で」

「正確には、0.000013秒だ」

「……あらそう、ありがとう」



 ――で、だ。


 時間にして、2分11・32秒後。ようやく平静を取り戻したらしい彼らの中で、代表する形で前に出た先ほどの女が私に話しかけてきた。


 だから、率直に答えた。悪意は全く無く、それ以外の他意も無い。


 ただ、彼女の思い違いというか不正確な情報を訂正しただけなのだが、どうも彼女はそう受け取らなかったようで……何だろうか、先ほどとは少しばかり異なる視線を……ああ、分かった。



 ――彼女は、私に対して恐怖に近い感情を抱いたのだ。



 けれども、それは仕方のないことだ。連盟種族が作り出した(あるいは、改造か?)ボナジェの能力は、非常に高い。連盟種族からすれば木っ端もいいとこの性能しか有していなくとも、だ。


 それこそ、1体で星一つを……それも、星々を自由に行き来できる程の『力』を得た種族をも容易く制圧出来るぐらいに……というか、連盟種族が異常過ぎるだけ……いや、そこはいい。



 とにかく――だ。



 彼女が私に対して潜在的な忌避感というか、危機感を抱いた理由は、客観的に考えても当然の事でしかない……というのが、私の正直な結論であった。



「……それで、お前たちは私にどうしてほしいのだ?」



 とはいえ、ようやく、だ。


 彼女たちの恐れは別として、これで意思疎通が可能となった。なので、私は改めて彼女たちに……いや、正確には、私をここまで連れてきたマイケルへと視線を向けた。



「…………っ!!!???」



 向けた……だけなのだが。



「――っ!!?? ――!!???」



 何故かは知らないが……当のマイケルは私の目から見ても明らかに不審な動きしかしていなかった。彼らの言葉で言い表すのであれば、『挙動不審』というやつだろう。


 笑顔を浮かべたかと思えば慌てたように辺りを見回し、かと思えば、いきなり両手を擦り合わせる。と、思ったら、今度は落ち着きなくその場をぐるぐる回り出したり……何だこれは、何の意味が?



 ――呼吸の回数が先ほどよりも上昇傾向……心拍の鼓動回数が他者より多い……発汗に加え、体温も少しばかり高い……?



 とりあえずスキャンをしてみて分かった事は、マイケルが過度の興奮状態にある……ということであった。


 ……脳波から相手の思考を読み取る装置が私には組み込まれていない(アレは壊れやすいから嫌いだ)からなのだが、それでも、相手が一般的な生物である以上は、それが無くても十分なのであった。



「落ち着け、マイケル。それ以上の心拍数の上昇は心身に負担を与える」

「ひぃ!? ぼ、僕の名前を……!!」

「落ち着け、マイケル。お前が私に名乗っただろう、知っていて当然だ」

「ぼ、僕の名前、なま、ななな、名前、なまなま、名前……!!!!」

「落ち着け、まい……いや、本当に落ち着け」



 ただ、この時ばかりは有った方が良かったなあ……と思ったのは、私だけの秘密ではある……と。



「――ごめんなさい。彼ってば、貴方に話し掛けられて舞い上がっているのよ。悪気は全くないから、許してやってちょうだい」



 どうしたものかと考えていると、女が「私の名は、リーベル・デヴィン。どうも、よろしく」……いや、リーベルと名乗った彼女が、私に向かって手を差し出して……何だこれ?



「……ああ、これ? 私たちの間で行われているコミュニケーションの一つで、握手ってやつよ。要は、貴女とは敵対しませんよ……ってことね」



 ――なるほど。



 言われて、頭脳ユニットより引っ張り出した情報と照らし合わせ……納得する。『尾原太吉』にとっては馴染みの薄い方法のようだが、ソレを当然の方法として育っている者もいる……と。


 とりあえず……促されるがままリーベルと握手をする――なるほど、これぐらいの圧力が掛かるわけか。



(少なくとも、この圧力より弱めにすれば、相手に無益な損傷を与える可能性は無くなるだろう)



 握り締められる指先から感じ取れる圧力を基本にして、サンプルデータを収集……やはり、想定していた以上に脆い身体をして……と。



「……まるで乳房のように柔らかい手をしているのね」


 ――いったい、どういう構造なのかしら?



 ポツリと呟かれたリーベルの視線は、組み合った私の指先というか、手というか……その感想に、私の注意が引き付けられる。しかし、彼女にとっては本当にただの感想でしかないのだろう。


 サンプルデータの補強の為に詳しく聞きたかったが、その前に手を外されてしまった……『尾原太吉』のデータに、こういった事を無理やり継続すると逆効果と有ったから、まあ……仕方がない。


 少しばかり残念に思っている私を他所に、タイミングを見計らっていたのだろう。マイケルを始めとして(まあ、当人はまだ興奮状態であったが)、他の二人も、改めて私に自己紹介をした。



 細胞の衰えから見てこの中では一番年上である金髪の白人(と、データには有る)、顎ヒゲが目立っている男……カルロス。


 挙動不審ではあるが敵意は無く、好意的だろうと思われる態度を示している、肌が黒い(データには『黒人』と有った)男……マイケル。


 二人に比べて一番の大柄かつ長身、加えて細胞も若々しく、心拍数などから、おそらくは一番冷静な、マイケルと同じく白人の男……ジョージ。


 そして、先ほど私に自己紹介をしたリーベルと名乗った女……合計、4名。



 少し前には他に3人居たらしいが、定められた活動限界時間(降り注ぐ放射線が関係しているようだ)に達した為に地球に戻ったらしく、今は補充要因が来るまでこの人数で回している……とのことであった。



 ……。


 ……。


 …………そんな彼らの話を聞き終えた私はふと、黙ってこちらを見つめ続けている彼らに首を傾げ……ああ、違う。



 そうか、これはアレだ……私の自己紹介を待っているのか。



 ……連盟種族のやつらはいちいち言葉を介さず、一瞬で頭脳ユニット内の全データを読み取っていくやつらばかりだから……うっかりしていた。



「……私に名は無い。とはいえ、それでは不便だろうからティナと呼べ。ティナは、私たちの間では『8』を意味する言葉だ」



 とりあえず、ここで沈黙を保つ理由は何一つ無い。『尾原太吉』の記録と、今しがたの彼らの自己紹介の方法を元に、私は……彼らに倣って、自己紹介を始めた。



「……『8』とは、数字の8(エイト)、一つ(ワン)、二つ(ツー)、三つ(スリー)と続いて、八つ(エイト)という意味での、8かい?」

「ああ、そうだ、その『8』の認識で構わない。もっと正確に言い直すのであれば、8番(ナンバー・エイト)という意味で、私たちの間では、それをティナと呼ぶ」



 当然、拙いであろう私の自己紹介に彼らは……いや、正確には、この中では一番年上であるカルロスが首を傾げながら尋ねてきた。



「ナンバー……その、あんたの――じゃない。君の、そう、君の文化圏では、自らの事をそのように呼ぶのか?」


 ……?



 言わんとしている事が分からず、私は内心にて首を傾げ――ああ、なるほど、そうか、こいつらは誤解しているのか。


 順繰りに彼らの表情を見やれば、すぐに分かった。『尾原太吉』の記憶から推測するまでもない。彼らは、番号をそのまま名前にするという考え方を不適切だと捉えているのだ。


 まあ、彼らの気持ちも察する……という言い方も何だが、彼らからすれば、『1番』だとか『5番』だとか、物みたいな名前にするのは間違いであり、何かしらの悪意なり何なりが関与していると考えるのは不自然なことではない。


 ……ただ、まあ。



「他のやつらは知らないが、私はそうだ。というより、私たち『ボナジェ』を番号で呼ぶのはなんら不自然な事ではない」

「……ボナジェ? すまない、どういう意味だ……ですか?」

「いちいち畏まる必要はない。意味は、お前たちの言葉で当てはめるとするなら、『駒』だ。あるいは、使い捨ての兵士とでも思ってくれたらいい」

「――え?」



 いくら何でも、質問に対して返答をしただけで顔色を変えられるのは……こう、私の察する能力では対応出来そうにないかも……と思ってしまった。



 ……いや、だって、そうだろう?



 私は、投げかけられた質問に対し、適切な返答を行ったつもりだ。


 最初の誤解が有ったとはいえ、もうそれは解決した。そう、もうそれは過ぎ去ったことで、現時点で彼らの警戒心を煽るような発言をした覚えは全くない。


 なのに、彼らは顔色を変えた。心拍も跳ね上がり、呼吸も一瞬ばかり止まり、スキャンするまでもなく彼らが私の発言に動揺したのが分かるぐらいであった。



 ――いったい、何に反応したのだろうか?





「――そ、兵士(ソルジャー)?」





 ……。


 ……。


 …………ああ、なるほど。



 恐る恐るといった様子で尋ねてきたカルロス(他の者たちも、同様の態度であった)の姿に、私は納得し……少しばかりの間を置いてから、「それは、物の例えだ」そうではない、と首を横に振った。



「正確には、私は『遊戯の駒』であり、こういう形をした道具だ。兵士と称したのは、私の役割が、その遊戯における兵士の役割を多く担っているからだ」

「……道具?」



 ちらり、と。彼らの視線が私の全身を行き来する。好奇心……と、警戒心。


 後は……分からん、どうにも複雑な感情が彼らの中で渦巻いているように思える。



「……言葉より、目で見た方が、色々と理解も早いだろう」



 このまま問答を繰り返すばかりでは埒が明かない。


 先ほどから微妙に繰り返される内容に面倒臭さを覚えた私は、自らの胸部……をパカリと割り開く。ヒュッと目を見開く彼らを他所に、私は露わになった動力源を彼らへと見せびらかすようにしてみせた。



 ――私の胸部中央の内部に収められている動力源。通称、『バニシング』と呼ばれるソレの外観は、光が渦巻いて形作っている光球である。



 色は、おそらく彼らは青色だと認識するだろう。大きさは縦横5センチほどで、重さは5gほど。熱はほとんど発しておらず、人の脆弱な肉眼でも直視する事が可能である。


 接触も、可能だ。耐久力は、彼らが所有しているであろう兵力の全てを結集したとしても、傷一つ与えることは出来ないだろう……なにせ、私たち『ボナジェ』の攻撃にもビクともしないのだから。



「お前たちが私をどのような存在であると捉えているのかは定かではないが、私はコレだ。こういう存在であり、お前たちのように血肉で構成されているわけではない」



 余計な妄想を一切挟ませない、現実。


 彼らと私との間に築かれた認識の齟齬の壁は、どうにも私が想定している以上に大き過ぎるし、高すぎる。これでは、何時まで経っても対話が進まない。



 ……互いに言語を認識出来るようになれば認識の齟齬も少なくなるだろうと思っていたが、どうも考えが甘かったようだ。



 だからこそ、私は露わにする。言葉では、無駄な時間が掛かり過ぎるから。彼らはどうも、私を生命体の一種であると勝手に思い込んでいる節があるのも、理由の一つ。


 だからこそ、示すのだ。私が、血肉の通った生き物ではないということを。


 彼らが私に対して抱くかもしれない(あるいは、既にそう思っている)全ての期待を一蹴する意味も込めて、私自身が、彼らの想像するような生命体でないことを示してやることにした。




 ……。


 ……。


 …………そう、そのつもりであった。おそらくは、彼らは私に対する反応を変えるものだと思っていた……のだが。



「――FoooooooWooooo!!!!!!」



 さすがに……『ボナジェ』である私ですらも、マイケルがいきなり奇声をあげて、そのまま鼻血を噴いて悶絶するとは……想定出来なかった。


 そのうえ、興奮極まったそのマイケルが、鼻息荒く『バニシング』をべたべた触るとは……そんな展開、予測しろというのが無理な話だろう。



 ――本当に、申し訳ない。



 他の3人に取り押さえられたマイケルが悶絶しているのを尻目に、必死になって謝り続ける3人を目にしながら……私は、思う。



 ……コイツは、恐怖心というものが無いのか?



 そう、私は思わずにはいられなかった。



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