第1話 空中帝国②


「体調不良ですか?」

いつものように、屋上でご飯をたべながら今日の朝のことを笹子に話した。

「それは心配ですね」

笹子は焦るようにそう答えた。

「うん。大丈夫かなぁ・・・・」

治史はそう、呟きながら空を見上げた。空が近いせいか第2帝国の空は真っ青に感じる。本日は雲ひとつなく、外で食事をするには少しだけ暑かった。

睦月のことを思い出すと同時に、昨日彼に言われたことを思い出して、頬が熱くなった。この気持ちは、笹子も同じなのだろうか?訪ねてみい気持ちが、急激に膨れ上がり口を開いた。

「ねぇ、さっちゃんあのさ・・・・・」

笹子が首をかしげる。

「えっと・・・さっちゃん、俺はさっちゃんのこと・・・えっと、好き・・・・なんだ!」

その言葉に彼女は目を丸くしたが、すぐに頬を赤く染めた。

「すごく嬉しいです。私も・・・・・・」

その言葉は続かないうちに笹子は、はっとしたように俯いた。

「いえ・・・・・ダメです。法が許しません。それに、私は薫さんが好きです。治史くんも睦月さんのことが好きですから」

治史は同じことを昨日、自分ももんもんと思っていて、同じことを笹子が感じてくれたことが嬉しかった。だから、昨日感じた疑問を笹子にも問うてみた。

「ねぇ、さっちゃん。さっちゃんの俺に対する好きと薫さんに対する好きって同じ?」

笹子はその言葉に少しだけ考えてる様に首をかしげた。そして、口を開こうとした時、屋上の唯一のドアが開く音がした。









「おい、貴様ら何を話しているんだ?」

開かれた扉の奥には声を震わせながら、目を見開いてびりびりと威圧感を出す薫の姿があった。

「えっ?か、か、薫、さん?」

治史は焦ったように手足をじたばたとさせた。薫はそのまま、無言で治史に近づき、身長差があるにも関わらず胸倉をつかみ持ち上げた。治史はそのまま、持ち上げられて、睨みつける薫の顔を間近で見ることになった。

「貴様、笹子は僕のものだとわかっていて手をだしたのか?」

薫からの殺気に耐えられなくて、治史は何か言うにも声が出せなくなっていた。

「薫!ちょっと待て!」

再び、扉の方から声がした。治史は遠くなっている耳に小さくその睦月の声を聞き取った。笹子もはっとしたように薫の肩に手を置いた。

「やめて下さい!薫さん!治史くんが悪いわけじゃないんです!」

笹子がそう言ってすぐに、薫の動きはぴたりと止まった。

「笹子。貴様こいつの味方をするのか?」

ひやりと背筋が感じるくらいの冷たい声を薫は出した。笹子はびくりと肩を揺らしたが肩から手を離すことはしなかった。

笹子の手を振りほどいて、掴んでいた治史の頬に向かって思いっきり右手の拳で殴りかかった。「きゃあ」と笹子が悲鳴を上げるのと、睦月が「ナオ!」と呼ぶ声が重なった。

薫は睦月の胸倉から手を離すと、すぐに笹子の腕を引き大股でドアの方へ歩き出した。笹子は制止を促す声を何度も薫にかけていたが、薫は聞く耳も持たないように引きずるように屋上から降りる階段に近づいていく。

治史はフェンスに寄り掛かって、俯いていた。唇の端から血が出ているようだった。睦月は治史のところに駆け寄ろうとして、薫と目が合い身体がすくんでしまった。

「あの男には、それ相応の裁きが下ると思え」

薫は、睦月に向かってそう呟き扉の向こうへと消えていった。睦月は扉の閉まる音を聞いて、すぐに治史のところへ駆けだした。

「ナオ!」

顔をあげた治史の切れた唇に触れる。ポケットからハンカチを取り出して拭ってやるが、治史はぼーと遠く見ていて何の反応も見せなかった。

「おい!ナオ!しっかりしろ!頭とか打ってねぇよな」

睦月は、殴られた方と逆の頬を軽くたたいたが、治史は何も反応を見せなかった。とりあえず、ハンカチを水でぬらしてきて頬を冷やしてやろうと思い、立ち上がろうとしたが出来なかった。治史が睦月の腕を掴んだからだ。

ぎゅっと強い力で腕を握られる。握られた手の甲に何か温かいものが落ちてきたと思って治史の方を見るとぽろぽろと泣いていた。

「うっ・・・・ひっく・・・・ねぇ・・・・・何で?・・・なんでだめなの?」

ぼろほろと泣く治史の頭を撫でてやりたいと思ったが、両腕とも掴まれていてそれは出来なかった。

「好き・・・・・なの。本当に・・・・好きなんだよ」

えぐっえぐっと、嗚咽を漏らしながら言葉をゆっくりと紡いでいく治史に睦月は「うん」「そうだね」と相槌を打った。

「ねぇ、俺・・・・おかしいの?でも・・・・・さっちゃんのこと好きなんだよ。一緒にいるとね、ふわふわして、暖かいの。手をつなぐとね、すごく嬉しいのに、ドキドキしてなんだか恥ずかしいの」

まだ、瞳からは涙がぽろぽろ零れているのに、治史は今日までの二人の記憶を思い出して幸せそうにふわふわと笑った。睦月はその様子を見て唇をくっと噛んだ。

「でも・・・・だめなの?」

再び表情をなくす治史に睦月は意を決して口を開いた。

「ナオ・・・。ダメなんだ。ナオがおかしいわけじゃねぇよ。でもその気持ちはあの子に対してもっちゃいけないんだ」

少したれ目がちの瞳をじっと見ながら話す睦月の腕を治史はさらにきつく握った。睦月は痛みを感じて顔を歪めた。

「やだよ!だって、俺はさっちゃんのこと好きなんだもん!」

腕を掴んでいた手が今度は肩を掴んだ。両肩をぐいっと引っ張られて顔を近づけられる。切れた唇と赤くはなった頬が痛々しい。

「ダメだ!ナオ、あのな。薫は本気だ。これ以上、あの子に近づいたら本当に政府に処刑される」

睦月は強い力で握られ赤くなった手で治史の手を掴んだ。こんなに泣いているのに治史の腕は少し冷たかった。

「でもっ」

「ナオ!!異性愛はばれたらどんな奴でも死刑だ!死ぬんだぞ!頼むから、あの子のことは忘れてくれっ」

今度は睦月の方が治史の腕を掴んだ。泣きそうな顔でそう言う。掴む腕は少し熱かった。






「忘れてくれ」。なんて、なんで睦月はこんなに簡単に言うのだろうか。忘れられるはずがないのに・・・・。わかってもらえない。ずっと一緒にいて、誰よりも大切で「大好き」だと思っていた。でも、そのことだって否定された。

治史は頭の中でぐるぐると睦月に対する八つ当たりが回っていた。

「・・・・ってよ」

睦月が、聞き取れなかった言葉に気をとられていると、治史はその身体をフェンスの方へ放り投げた。痛っ、と顔を歪める彼の肩を掴んで、まだ止まらない涙だけはそのままになるべく落ち着いた声でいった。

「なら、むーちゃんが俺の恋人になってよ」

睦月は目をこれでもかというくらい見開いて、息を短くはいた。

「ねぇ!俺は本当にむーちゃんのこと大好きだったんだよ!大好きで大切なんだよ!なのにむーちゃんは気のせいだって・・・・。さっちゃんのこと好きなのも忘れろって!なんで、俺の気持ち分かんないでそんなこと言うの!??俺はね・・・・俺ね、死んだっていいんだよ!だって俺、さっちゃんでも、むーちゃんでもない人好きになれないっ!・・・・・・・うっ・・・・うっ」

睦月が泣きながら俯く顔を覗きこもうとしていた。なんてずるいのだろうと思う。治史自身も笹子に対する気持ちと睦月に対する気持ちのズレをなんとなくわかっていた。でも、本当に笹子に会えず、睦月にも愛を「気のせい」と言われていたら生きていけないと思ったのだ。きっと、睦月なら許してくれるという甘えもあったのだろう。

睦月の肩は震えていた。何かに耐えるように唇を開いては噛んでいた。

「むーちゃん」

治史の問いかけに彼はゆっくりと首をふった。

「・・・・・・・・ごめん」

何かに恐怖するように小さな声でそう呟いた睦月に居た堪れなくなって、治史は掴んでいた手を離した。

「なんで?なんで?・・・・・っ!むーちゃんの馬鹿っ!」

そう、大声で怒鳴り付け、がむしゃらに屋上から出ていくための扉へと走った。「ナオ!」と後ろから睦月の声がしたが気にせず扉に手をかけた。



「ナオ!待て!俺はっ・・・・っ!」

ドアの向こうに入って扉をしめようとした時、突然睦月の声が止まり、ガシャンとフェンスに何かがぶつかる音がした。続けて、がっとコンクリートに何かがぶつかる音がした。

初めての喧嘩に、何を考えればいいのか分からずにとにかくこの場からいなくなりたいと思っていた治史だが、その音にゆっくりと振り向いた。

目に入ったのはフェンスに手をかけ、地面に倒れかけながら肩で息をしている睦月の姿だった。

「む、むーちゃん!!」

治史は血の気が引くというのはこういうことだと身をもって実感した。睦月が苦しんでいる姿や弱っている姿なんて初めて見たのだ。

何も考えずに駆けよって、膝をつきよく睦月がしてくれるように背中を撫でた。

ひゅー、ひゅーとうまく肺に息が入っていない音がしている。先ほどから熱い熱いと思っていた睦月の身体に、初めて熱があったのだと気がついた。

(そうだよ。朝、体調悪いっておばさんが言ってたんだ)

「つっ・・・・げほげほ」

せき込んだ睦月に治史は、どうしていいのか分からなくなって、折角引いていた涙がまたぽろぽろ出てきた。そのまま何も出来ずに、ぐずぐずと泣きだしていた。

「っつ・・・・ナオ?・・・・戻って・・・きたのかよ?」

睦月が苦しそうに顔を歪めながら、切れ切れの息に言葉を乗せた。

「むーちゃん!」

治史が泣きながら膝をついて睦月の身体を支えようとすると、ぽんぽん、と頭が撫でられた。

「・・・・・泣くなよ」

ぽふっと頭に手を乗せられ、にっこりと笑われる。まだ苦しいのか、眉がハの字になっている。治史がその様子に呆然としていると、睦月は身体の力を抜いて、治史の腕の中に全体重をかけた。

「悪りぃ・・・ちょっと・・・・休ませて」

そう言ってぐったりする睦月に、治史は息を飲んでかたかたと震えた。怖くて、怖くて仕方がなかった。睦月の弱っている姿を見るのがはじめてなのも、突然倒れてしまったことも、未だに浅い息を苦しそうにしていることも、全部全部怖かった。でも、そんなことより何より、息が上手く吸えないほどの恐怖を感じたことは・・・・・

「大丈夫・・・・・・じゃないの?」

震える声は、真っ青な空に届かずに消えていった。

小さなころからいつだって、治史を庇って怪我をしてきた睦月は、その怪我を見て大泣きする治史に「俺は大丈夫だから」と言って、頭を撫でてくれた。どう見ても大丈夫じゃなくても、強がって「大丈夫だ!」と言う。急に、背筋がぞくりとした。治史の「結婚して!」に笑顔を見せてくれなくなったのはいつからだった?もし、全部繋がっていたら・・・・。その先の答え何て考えたくなくて、治史は睦月を背負い屋上から降りる階段を落ちるようにかけ下りた。




夢を見た。小さい頃の夢。とても怖い夢。でも、どんな怖いことがあってもあの頃は睦月が必ず助けに来てくれた。

たしかあれは、まだ教養コースの基礎部にいた頃だ。先代の巫女が生きていて、盛大な祭典が開かれた。その年は、第2帝国では珍しく他国から取り寄せたものが露店に並んでいた。毎年そうするように、その年も睦月と一緒に出店を回った。あの年は、珍しいものがいっぱいあって、つい目移りしているうちに睦月が隣にいないことに気がついた。そして、迷子になって大声で睦月の名前を呼んでも返事がないことが怖くて蹲って大泣きしてしまった。そして、確か・・・・。




夢なのか思い出なのかわからないまどろみの中で、頭が撫でられているような感覚がした。それが気持ちよくて治史はゆっくりと目を開けた。いつの間にか泣き疲れて寝てしまったようで、保健室内はもう夕闇に埋め尽くされていた。

あの後、治史は意識のない睦月を保健室に連れて行った。ちゃんとした魔法医のところへ連れて行こうとしたが、意識を取り戻したらしい睦月が「治まるから休ませて」と止めた。何言か校内魔法医と話、「寝れば大丈夫です」と呟き眠ってしまった。治史は睦月がいなくなってしまうのではないかと、怖くてずっとその温かい腕を掴んでいた。そして、いつの間にか泣き疲れて寝てしまったようで、保健室内はもう夕闇に埋め尽くされていた。

頭を撫でているのは、睦月の温かい手で、彼は左手を掴んでいる治史の手を気にしながら上半身だけ起き上がっていた。そして、治史が起きたことに気付いてほっとしたように笑って

「ナオ」

と名前を呼んだ。それを見て、治史はなんとも言えない気持ちになって睦月にぎゅうっと抱きついた。 抱きしめた身体が温かくて、手だけ掴んでいても迷子になってしまうと思い、ずっと強い力で抱き締めた。涙がどんどん出てきて、名前を呼ぶ睦月の声に首を振り続けていると、背中をぽんぽんとゆっくりとしたリズムで撫でてくれた。

「・・・・ねぇ、ねぇ、むーちゃん」

治史の睦月を抱きしめる力はどんどん強くなっていったが、睦月は表情を変えずに治史の背中を撫でつづけた。

「なんだよ?」

睦月の声に治史は一度首を振った。睦月は耳を傾けるように治史の頭に自分の頭をこつんと当てた。

「大丈夫じゃ・・・・ないの?」

か細い声でそう言い、治史はまた嗚咽を交えて泣きだしてしまった。口にしたことによってそれが事実になってしまった気がしてしまったのだ。

睦月は唇を噛み締めて一度目を瞑った。それからゆっくりと言った。

「何で、そう思うんだよ?」

治史は「大丈夫じゃない」を肯定されたのかと思い睦月が潰れるんじゃないかというくらいに力を込めた 。

「痛えよ!いい加減離せ!」

「だって、むーちゃん、大丈夫って言わないんだもん!」

しくしくと泣いている治史に睦月は深いため息をついた後に唾を飲んだ。

「・・・・・ちょっと、具合悪かっただけだよ」

そこまで言って一度息を吐いた。

「大丈夫・・・・だから」

そう言って、睦月は昔のようににっこりと笑った。治史はその言葉に恐々と顔を上げた。

「本当?」

今度は間髪入れずに「ああ」という言葉が帰ってきた。

治史はじっと睦月の顔を見た後に「よかった」と呟いてようやく睦月を解放した。

治史の体が離れスペースができたので、睦月は手を伸ばし湿布の貼られた頬に触れた。

「ナオこそ大丈夫か?」

その言葉に治史は、睦月のことでいっぱいだった頭に先程の出来事を思い出して頭を思いっきり横に振った。

「ううん!むーちゃん・・・・俺・・。えっと」

うつ向いてぐずぐずと声が小さくなっていく治史の頭を睦月はぽふっと叩いた。

「ごめん。今までナオの気持ち否定して。それから薫のこと止められなくて。ここまで運んでくれてありがとな」

治史はその言葉に勢いよく顔を上げた。

「ううん!俺のがごめん。えっと・・・・背中痛かったよ・・・・ね?」

恐る恐る聞く治史に睦月は苦笑した。

「ちょっとは手加減しろよな、ナオ・・・」

「うう!ごめん・・・」

頭が撫でられたまま「許してやるよ」と言われる。

治史はその言葉にほっとしながら。でも、言わなきゃいけないことがあると、もごもごしていると、今度は睦月が治史の肩に手をおき耳元に顔を寄せた。

「ナオ、お前は本気であの子のこと好きなのか?」

治史はその言葉に顔を真っ赤にしてじたばたと手足を揺らした。

「うん。大好きだよ!だめだってわかってるんだよ。でもすごく好きなの。えっとね・・・・・むーちゃん・・・あのね」

治史も睦月を真似て彼の耳元で呟いた。また、泣きそうに鼻を啜りながらもにょもにょと口ごもる彼に睦月はため息混じりに苦笑した。

「うん。大丈夫だから。もう否定しねえから。お前らが幸せになれる方法、一緒に考えよう」

治史はその言葉に息を飲んで睦月の顔を見た。睦月は夕闇のなか真剣な顔で治史の方を見つめていた。

睦月の「大丈夫」はいつも甘い。治史が辛いときには必ず助けてくれるのから。











ーーーーーーーーーーーーーーーー







「笹子・・・・」

薫は壁に背をつけてそのままずるずると座り込んだ。右手で頭を抱える。

(何をしているんだ?僕は・・?)

笹子を住んでいる教会の奥にある塔の一室に連れ帰った。同時に神父たちに呼び出されたため、部屋に鍵をかけて出ていった。

どうせ祭典の準備を抜け出したことに対する小言だろうと思ったが彼らの言葉は違った。

「あなたの恋人の一人は男と関係をもっている。異端者だ。すぐに死刑を」

息を飲んだ。愛しい人の軽率な行動がどうしようもないほど恨めしくて、そもそも自分自身が彼女を泣かすようなことをしなければと後悔した。騒ぎ立てる神父どもが腹立たしくて薫は低い声で彼らを律した。

「ふざけるな!僕の笹子はあの男に拐かされただけだ!裁くべきはあの男だけだ!」

神父たちの声は余計に大きくなった。

「しかし次期巫女様。それでも彼女は汚れて・・・」

「汚れている?彼女を傷つけるようなことを言うなら、貴様を僕は許さない」

神父は食い下がろうとして、薫に睨まれやめた。

「笹子に手を出したんだ。その男を連れてこい!僕が祭典の折りに自ら刑を下そう」

瞳を見開いて怒りをにじみ出させるように言う薫に神父たちは息を飲んだ。近くにいた女騎士が声をかけられる。

「つれてこい」

女騎士が扉から出ていくのを見て薫は塔の上へと続く階段に足をかけた。神父たちが声をかけてきたが全て無視をした。階段の最終段に魔法をかけて誰もこられないようにした。

(しかたなかったんだ)

そう心に言い聞かせながら、それでももし笹子に自分が治史を殺す命を出したなんて知られたらひどく恨まれるのだろうと思うと怖くてしかたがなくなった。

「薫さん?」

ふと、壁の向こうから笹子の声が聞こえて薫はすぐにドアを開けた。笹子は部屋を出ていった時と同じようにベッドの上からこちらを見上げていた。

「薫さん?顔色がすごく悪いです」

そう言いながら頬にかけられた手を薫はつかんでそのまま笹子の体を引き寄せた。

「笹子はあの男が好きなのか?」

耳元で囁かれて笹子はびくりと肩を揺らした。その行動に薫は苛立ち、

「許さない。僕の側からは離れさせない!絶対にだ!」

と叫んで彼女をベッドに押し倒した。そしてその左足に魔法でできた枷をはめた。彼女が抗議の声をあげる前に部屋を出ていき、壁にずるずると寄りかかる。

そして冒頭に戻る。

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