怪文書

口一 二三四

怪文書

おとうさんおかあさんへ


おとうさんおかあさんわたしがいなくなってさみしいおもいしてるのかな

してたらごめんなさい

でもだいじょうぶだよ

わたしはしあわせなばしょでくらしてます

むかしよんでもらったえほんにあったゆめのくににはやさしいおねえちゃんやたのもしいおにいちゃんがいます

そこでわたしはおひめさまになってみんなとくらしています

おひめさまのしごとはたいへんです

あさはしらないおじさんがおこしにきてくれます

おじさんはわたしのからだをやさしくなでてくれます

つぎにほっぺたをなめてきます

なんでそんなことをするのかきくとおじさんは「きれいなおはだになるからだよ」といってわたしもそうなんだとおもいました

おじさんがわたしのからだをなめおえるとこんどはふくをぬがしてくれます

そこからはおにいちゃんやおねえちゃんもへやにはいってきていっしょになってわたしのふくをぬがしてくれます

さんにんがかりではだかにされたわたしはきれいなふくをきるまえにさんにんにだきしめられます

おねえさんはやわらかくておにいさんはやさしくておじさんはくさいです

きがえがおわるとわたしはよういされたいすにすわってみんなといっしょにおしゃべりをします

わたしとおにいさんとおねえさんとおじさんのよにんだけのおうこくです

ほんとうはもっとたくさんいたけどおにいさんとおじさんがころしてしまいました

わたしが「なんでころすの?」ときくとおにいさんは「きみのためだよ」といいおじさんは「きみのためだよ」といいました

わたしはそっかじゃあしかたないねとそのころされてしまったものをさわったりかたづけるてつだいをしました

よにんだけのおうこくにはかべがあってひかりがよくはいるばしょでした

わたしはそこからそとをみてここがどこかしろうとしたけどおねえさんがわたしのめをくりぬいていたのでなにもみえませんでした

まっくらでなにもみえないわたしにおねえさんは「きみのためだよ」といってくれたのでわたしもそれならしかたないねとわらいました

おうこくにいぬがまよいこんできました

いぬはとてもおおきくてわたしはかまれそうになったけどかわりにおにいさんがかまれてそのままうごかなくなりました

うごかないおにいさんをいぬはひきずっていきました

ずるずるずるずるひきずるとてがまだうごいててもしかしたらいきてたかもしれません

そのあとおじさんがいぬをたいじしにいくといってでていきました

そのままおじさんはかえってきませんでした

わたしはおねえさんにてをひかれておうこくからとおいとおいばしょへにげていきました

にげるとちゅうにおきにいりのりぼんをおとしたことにきがつきました

わたしはおねえさんにりぼんをとりにいきたいといいましたが「もうておくれだ」とおねえさんはわたしのてをはなしてくれませんでした

わたしはどうしてもわたしはどうしてもわたしはどうしてもりぼんがたいせつだったからおねえさんがねているあいだにおおきないしをおねえさんのあたまにおとしました

おねえさんのあたまがすいかみたいにわれてあかいものがびしゃってなったのがとてもきれいだとおもいました

わたしはおねえさんがうごかなったことがかなしてわんわんないてしまいました

それからりぼんのことをおもいだいてさがしにいくことにしました

きたみちをもどってずっとずっとあるきました

めがないからわたしはじめんにほっぺたをすりつけてあるいていきました

じめんのざらざらはおじさんがわたしにほっぺたをつけてきたときよりもざらざらしていやでした

でもりぼんがたいせつだからわたしはがまんしてさがしました

りぼんはおかあさんがかってくれたものだとおもっていました

でもそれはおとうさんがおかあさんじゃないおんなのひとにあげようとしてたものでした

わたしはなんでもしっていたからおとうさんがそのおんなのひとにあげないようかってにもらっていました

おとうさんごめんなさい

おかあさんごめんなさい

ごめんなさいがしたくてわたしはりぼんをさがしました

りぼんがどこにあるのかじめんにほっぺたをつけていもむしみたいにしていたらいぬがいるのにきがつかなくてわたしはかまれてしまいました

いたいいたいとなきましたがだれもきてくれませんでした

おにいさんもおねえさんもおじさんもしんであとはわたしだけでした

いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい

なきさけぶわたしのこえをきいていぬがわらいました

とてもこわいこえをききながらわたしはしんでしまいました

くさいにおいとおちばのにおいがしました

がさがさがさがさおとがしました

つめたいなにかがほっぺたにあたりました


そこにわたしはいます

おとうさんおかあさんはやくみつけてください



 とある地方都市で起こった誘拐事件。

 発生から三ヶ月後に犯人と思われる人物が『娘からの手紙』として家族に送った怪文書。

 奇妙奇天烈な文章は家族に嫌悪を、取り上げた週刊誌の記事により見る者に気色悪さを与えた。


 あれから十年。

 誘拐された女の子は未だ見つかっていない。

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