クロー・エスパーダ《最弱》

そう意気消沈という言葉が今の状況に当てはまるのだろうか。

俺こと、クロー・エスパーダはちょっと前まで最強の傭兵として地球で名をはせた人間……だったのだが。そんな俺は言いようの無い絶望感に打ちひしがれていた。


「…まぁまぁ、クロー。そんなこともあるって」


「そんなことで済むのか?このステータスは」


「あー、ごめん。済まないかも…」

だよな。そりゃ俺のステータス”最弱”だもん。

ついでに説明しておくと、筋力、守備力、俊敏性、魔法力、スキルといった感じの5種類のステータスがあって最高がSランクなのだが、俺は全部最低のオールE。

中でもスキルは、人によって変わるらしいのだが俺のスキルはそもそも解読が出来なかったらしい…。もはや、乾いた笑いしか出ない。

そんな俺をミーネはなんとも言えない表情で慰めてくれたのだった…。



ということで一旦、ギルドを抜けた俺はミーネに町の案内をしてもらっていた。


「ここは、ソリッドタウン。インティア王国の中心に位置する町だよ。ほかにもフルーツなんかが有名でよく食べられてるね」


「なるほどな、ちなみに移動手段は?」


「ほとんどの人が馬車なんかを使うけど、自分のスキルで移動する人も居るみたい」

へえ、そんな便利なスキルもあるわけか。でもまぁ、そんなに困ることは無さそうだな。じゃあ、あとは…

「ここに居る人たちは?」


「大雑把に言うとだけどすべての国民は家族ファミリーというくくりでまとめられてはいる。ただ、キミもさっきから見ている通り多種多様な種族が存在していてね、鳥族、獣族といったようにお互いの中が悪い種族も居るんだ。まあ、危害を加えなければ仲良くしてくれるから、大丈夫だよ」

割りと上手くまとめられてるんだな。

と、俺が感心していた次の瞬間、



「誰か!!助けてくれぇ!」

そんな市民の叫び声とともに空気を裂くような咆哮が鼓膜を震わせた。

「…何だあいつ!?」

見るとその方向には体長7メートルはあるであろう巨大なウサギが通路を破壊しながらこちらへと迫って来ていた。


「あれは、《捕食兎イーターラビット!!どうしてここに!?」

ミーネは血相を変えとても焦った様子だった。

周りの皆も叫びながら逃げているのをみるに、異常事態なのは間違いない。

さて、まず確認することは…


「ミーネ!お前ヤツを倒せないのか!?」


「倒せない事はないけど、周りを巻き込んじゃう。うかつには戦えない!」


それもそうか…どうする?俺はまるで戦力にならないだろうし。

そんなことを考えているうちにもウサギは止まってくれない。こうなったら…


「ミーネ!防御に関するスキルや魔法を持ってるなら、それを皆に使え!それと、俊敏性に関係するものを俺に!!避難はそっちに任せる!」


「分かったけどキミは!?どうするつもり!?」


「俺はヤツを引き付ける!いいから早く!」


「あーもう、分かったよ!【絶対障壁】《クリティカル・プロテクト》!

【俊足付加】《ソニックブースト》!」

ミーネの足元に魔法陣が現れたと思いきや、不意に足が軽くなった感じがした。

周りの人達には円状の結界が張られていた。これなら…いけるか?

「良い?絶対無理はしないで!私が来るまで持ちこたえて!」


「分かってる!」

そういって俺達は一斉に走り出した。俺は、ウサギ野郎の前へ飛び出し足元にあった石を顔面へと投げつけた。すると、ウサギ野郎はぎょろりとこちらを睨み、吠えた。

「ウァアガァアー!!」

久しぶりだな…この身体全身がヒリつく感覚。冷たい殺気に包まれるような覇気。

俺はフッとニヤつき、引き付けるように横の路地裏へと駆け出す。

……よし、付いてきた。とりあえずコイツを町から離すことが今の俺に出来ることだ。どれだけ弱くても役目はある。…てかどんな馬鹿力だ!周りの建物をぶっこわしながら来るんじゃねえ!

すぐさま足を左に切り返し、また別の道へと進む。だが運悪く建物の破片が顔を掠めた。

「チッ、…クソ」

まずいな…逃げ続けても埒が明かない。そう思い道を抜けた先は、塀で囲まれていて行き止まりだった。不幸中の幸いかスペースは広い、やるならここか…。


俺は勢い良く向き直り、対峙する。



「さァ、やってやるよ!」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強の傭兵、異世界で最弱へと転落するがもう一度最強を目指す。 にわとり。 @hiro3smile

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ