最強の傭兵、異世界で最弱へと転落するがもう一度最強を目指す。

にわとり。

最弱の傭兵


「危ない‼」

俺は、咄嗟に走り出していた。少女を救うために…。

少女を庇った俺の耳に聞こえてきたのは一つの鋭い発砲音だった。

「…っぐ」


「ケッ、まんまと引っ掛かりやがったなぁ。最強さんよお」


目の前に立っていた一人の男が放った弾丸は俺の背中へと命中し、その場に倒れ込んだ。


「関係のない一般市民を守ってどうする?意味のないことをするなよ」


「ま、もう関係ないか。…死ね」

次の瞬間俺は、頭を打ち抜かれて、死んだ。


もともと狙われていた身だ。いずれこうなるとは分かっていた。……けれど、俺がもっと強ければ死ぬことは無かったのかもしれない。あの娘を救えたかもしれない。

クソッ、こんなところで……

悔しい、もっと自分に力があれば………



___________


「…ん?ここは?」

ぼやけた視界から目が覚め、身体をゆっくりと起こした。見慣れない場所だった。綺麗なシャンデリアが暖かく部屋を照らしていてとても心地いい。

そしてどうやら俺はベッドの上ですやすやと眠りに落ちていたらしい。

どういうことだ?確かにあのとき撃たれて死んだはずじゃ…


「あ、起きた?ビックリしたよ!急に道に倒れてるんだもん!」

ベッドから立ち上がろうと腰を上げた瞬間、勢い良くバタンとドアが開かれ一人の整った顔のした女が入ってきた。しかもそれだけじゃない。あろうことか女の耳には猫のような耳と尻尾が生えていた。…は?さっきからなにがどうなってる!?

「……えっと、君は?」

動揺がバレないように冷静に聞いた。


「あぁ、ごめん。まだ名乗って無かったね、私はミーネ、ミーネ・アストラ。キミの名前は?」


「俺はクロー。クロー・エスパーダだ。よろしくな」




「え?記憶がない!?そりゃ困ったなあ。キミ、ステータスカードは持ってる?」

俺は色々探られるとまずいと思い記憶が無いと嘘を吐いた。助けて貰った手前申し訳ないとは思うがまずは、情報収集が先だ。

「……何だ、それ?」


「えっとね、ステータスカードっていうのは、その人のスキルやそのほか俊敏性、筋力、魔力など様々なものを記したカードのことだよ」


それは一度も聞いたことのないものだった。おそらくはこの世界のものなのだろうが、そんなものどこにも…あれ?

何も持っていないのを確認しようと服のポケットに手を突っ込んでみると、それらしき物があったので、俺はそれをミーネに手渡した。

「コレ、まだ更新されてないね…。あ、そうだ!ちょうどいいしちょっと付いて来てよ」


そういうとミーネは部屋を出て行ってしまった。

「あ、お、おい!」

俺は訳も分からず、とりあえずミーネについていくのだった。




「さ、着いたよ」


「説明求む」

ミーネに連れて来られてやってきたのはバカでかい見慣れない建物だった。…いやまぁ、ここに来るまで見慣れないものしかなかったんだけどね?半身人間半身獣のヤツがいたり、はたまた全身獣だし、羽生えてたりまさにおとぎ話に出てくるものだらけだった。


「ここはギルド。たくさんの人がここでステータスカードの更新やクエストの受注をしたりしている、いわば町の中枢さ。クローもよく通う事になるだろうから覚えておくといいよ」


「クエスト?あのゲームとかで依頼を達成すると報酬が貰えるってやつか?」

俺が首をかしげながら聞くとミーネはうん、と頷いた。


「げーむってのはよく分からないけれどだいたいそんな感じ」

しまった、つい口走ってしまった。気を付けないと。


「こんにちは、ミーネさん。今日はどういったご用件でしょうか?」

ミーネは受付らしき人にあいさつをするとこう言った。

「私の新しい仲間のステータスを見てもらえるかな?」


「……へ?」

何言ってんだこいつ、俺がいつ仲間になるって言った?いや、受付の人も何感動してんだよ!?「やっと仲間が出来たんですね」じゃねえから。俺の意思全くもって皆無だから。てか仲間居なかったのかよ!?


「ささ、そこのお方どうぞこちらに」

うわあ、凄い満面の笑みで手招きしてくる…断れねえ。


「どうも、クロー・エスパーダです」


「初めまして、クローさん。私はギルド受付担当のネルです。気軽にネルと呼んで下さい。早速ですがステータスカードをお借りしてよろしいでしょうか?」


「あぁ、はいどうぞ」


「では、しばらくお待ちください」

俺が先ほどのカードを渡すとネルはせっせとギルドの奥の方へと消えていった。

ちなみにミーネはというと、そんな俺のやりとりを見てニマニマしていた。一発殴ってやりたい気分だがまあいい。そんなことよりも自分のステータスがどれくらいなのか早く知りたかった。もしかしたらこっちの世界でも最強かもしれないし。


「終わり…ました」

それからちょっとしてネルが戻ってきた。その表情はさっきとは打って変わり暗く沈んだものだった。何かあったのだろうか。

「あの~俺のステータス、どうでした?」

おそるおそる聞くとネルはバツが悪そうな顔をしながらこう、告げた。


「それが…私が見てきた中で最弱でした」


「はい?」

その言葉に耳を疑った。おいおい、冗談だろ?だって今まで最強の傭兵なんていわれてたんだからさ。…え?本当に?最弱?この俺が?


おい神様どうなってんだよ!!

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