ブルームーン④
「えぇ!いい作品です。最後は少し悲しいですけどね」
「俺も読んだよ」
「本当ですか!」
少年は目を輝かせながら喜んだ。
海外の古い本だ、友人に同じ趣味の者が居ないのだろう。
「でも、本物のリュクレーヌはもっと二枚目だろ」
「……そうですね、リュクレーヌは帽子や靴で身長盛っていたり」
「そうそう」
「十二月分の、最後のお給料残さずに出て行っちゃったし」
「そうだな」
「フランが生きている間に一度も会いに来てくれなかったし」
「全くだ……作者の顔が見てみた……ん?」
ようやくリュクレーヌは気づく。
少年が語っているリュクレーヌは、この世でフランしか知りえない情報であるという事を。
リュクレーヌは目を見開き少年の方を見る。
──お前はフランか?
と問うように。
すると、少年──フランは「やっと気づいた?」ともう一度笑い、マスクを下にずらして口元を見せた。
「久しぶり、リュクレーヌ」
「フラン……」
約束通り、互いにブルームーンのハロウィンに再会を果たした。
本来は喜ぶべきことだ。だが、リュクレーヌには残した疑問が大量にある。
「待て。どうして。フランはもうとっくに亡くなっているはずだろ?なんで日本に少年の姿でいる?生まれ変わりだとしてもフランの記憶があるのか?記憶と言えば、そもそもどうして消したはずの記憶があったん──」
「落ち着いて。全部、マスカレイドラビリンスのおかげなんだよ」
フランは懐かしい魔術の名前を告げる。
「どういう……事だ?」
「マスカレイドラビリンスの効力は、不変と永遠の魂だったでしょ?」
「あぁ……あっ!」
リュクレーヌは気付いた。フランの魂が不変で、永遠のものであるという事、つまり──
「まず、リュクレーヌはルーナエさんに頼んでみんなの記憶……というより魂だね。魂を操作して記憶を消した。でも、僕は不変の魂があったからその術は効力が無かった」
記憶操作の魔術は魂を変化させるものだ。マスカレイドラビリンスによって不変の魂を持つフランやリュクレーヌは効力を示さない。
「やがて僕は寿命で死んで、生まれ変わって今はこうして日本の高校生。でも、永遠の魂をもっているから、魂そのものはフランのまま。最初から前世の記憶をそのまま引き継いでいるんだ。だから、僕のやっていたレストランに親戚だと偽ってエアメールを送る事が出来たんだよね」
そして、永遠の魂でフランの魂として転生し、ロンドンにエアメールを送った。
それだけだった。
リュクレーヌは呆気にとられる。
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