最期の一言
この爪が皮膚を貫けば、フランの命は無いだろう。
ルーナエという人質が居なくなったのであれば新たな人質を作ればいい。人間の命は儚い。
それ故に価値がある。だからこそファントムにとっては取引の道具に持ってこいであった。
「……っ!フラン」
「くっ……そ、リュクレーヌ!僕の事は良い!銃を渡したら駄目だ!」
暫し、リュクレーヌは歯ぎしりをして悩む。銃を渡してしまえば、もうファントムを倒す術が無くなってしまう。
「ほらほら?どうするの?あ、それとも助手の事はどうでもいい?」
ファントムが煽りながらフランの皮膚に爪を立てる。
フランは「ひっ」と小さな悲鳴を漏らした。金色の髪にうっすらと紅の血がにじむ。
「待て!」
見ていられない。リュクレーヌは制止した。
そのまま手に握っていた銃を見せる。
「フランを解放するなら……仕方ない」
一歩、また一歩ファントムに近づく。ファントムは銃に腕を伸ばし。受け取る。
「素直だね。いい子だ」
取引は成功。──と思っていた。
「だが、馬鹿だ」
ファントムはそう言うと、今度は受け取った銃をフランに突き付けた。
「汚いぞ!フランを解放する約束じゃ」
「解放するなんて言ってないだろう?僕はねこの子を生かしてはおけない」
ファントムにとって銃の所有者であるフランは脅威だ。こうなったらとっとと始末してしまった方が良い。そう判断したのだ。
「……最期に」
「ん?何だ?」
フランの声にファントムが反応する。
「ファントム、どうせ僕は死ぬんだよね?それなら最期に一言だけ喋らせてよ」
「ほう……いいよ!どうせ死ぬんだ。一言くらい冥土の土産にどうぞ」
銃を突き付けて抵抗できないままの状態でフランに猶予を与える。
フランは「ありがとう……」と言った後、
すっと息を吸い、ファントムの方へ虚ろな笑顔を向けてこう言った。
「君にその銃の所有権を渡すよ、ファントム」
最期の言葉を言った直後、ファントムが持っていた銃が光り出す。
閃光は部屋中を包み込む。目が、開けられないほどに眩しい。
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