意味なき闘い
「何?」
「リュクレーヌ。キミはルーナエの為にボクと戦っていたみたいだけどね、彼の魂はとっくに僕に食べられているんだよ。フランに銃を託した直後にね」
フランとリュクレーヌの顔がみるみる青ざめる。
ルーナエはとっくの昔に、死んでいた?
それなら今までの戦いは──
「つまり、キミのやってきたことは意味が無かったんだよ!」
ファントムはリュクレーヌを指さしてげらげらと腹を抱えて笑い出す。
リュクレーヌは暫く呆然と立ち尽くし、その場にがくりと膝をついた。
「リュクレーヌ!」
慌ててフランがリュクレーヌの元に駆けつける。
自分の戦っていた意味を否定された。
ファントムに捕らえられていたルーナエの魂を救い出すのがリュクレーヌの目的だった。
ただ、その魂はとっくの昔に食らいつくされていた。
この事をファントムが明かさなかったのはルーナエの躰を人質にするためであった。
それに、マスカレイドラビリンスで会ったルーナエは自身の魂をバックアップだと言っていた。
だとしたら、全て辻褄が合う。ルーナエは死んでいたという事実に。
全てが分かって顔を上げた先にはフランの顔があった。
「……フラン」
リュクレーヌはぼんやりとフランを見つめる。
そして、そのまま耳元に顔を近づけ、ぽそりと何かを呟いた。
「……!」
その言葉を受け止めたフランは、はっとした表情を一度見せ、リュクレーヌの顔を見てこくりと頷いた。
そのまま、顔を上げ、今度はファントムの方を睨みつける。
「お前だけは、許さない!」
決意の下フランはファントムに銃口を向けた。
──当たれ、当たれ、当たれ当たれ当たれ!!!!
フランは躊躇なく銃弾を放つ。
けれどもその全ては掴まれ、弾かれ、命中しない。
人間と悪魔。力の差がありすぎる。到底敵わない。分かっている。
それでも、撃つしかないのだ。
銃弾は部屋のありとあらゆるものを破壊する。
その時だった土煙に紛れ、背後に回られた。そのまま強く蹴られる。
「あっ!」
フランは倒れこんだ拍子に銃を落としてしまった。
しまった。
これが無ければ──
だが、もう遅い。ファントムは後ろからフランに掴みかかる。そのままフランの耳元で
「終わりだ」
と低く囁いた。
リュクレーヌは咄嗟に銃を拾いに行く。これだけは渡すわけにはいかないと。
それを見て、首を傾げて、まぁいいやとファントムは嘲笑した。
「さぁ、リュクレーヌ!銃を渡せ!さもなければ、可愛い弟の次は可愛い助手を殺すからね?」
槍のようになった人差し指の爪を銃に見立ててフランのこめかみに当てる。
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