やっぱりここだった

理由や手掛かりがなくても、彼なら絶対に迎えに来ると。

ファントムはそんなフランを見て、けたけたと壊れた様に嗤った。


「いいや、来ないね。彼はさっきも言ったようにルーナエの為に戦っている。ボクのやる事を受け入れるだろう。果たしてキミを助けに来るかな?」


「さぁ、どうかな?」


フランが嗤ったその気だった。目の前でガシャンと割れるような大きな音が暗い空間に響く。

割れた音の方を見ると、闇だけのはずだった空間に光が差していた。そこから腕が伸びている。

伸びた腕が空間の割れ目からぐんぐん伸びる。腕はフランのシャツを掴んで、ぐいと引っ張った。

外の世界へと引きずり出される。


「ここは……たしか、ルーナエさんの部屋?」


ようやく光の空間へと投げ出されて月明かりに照らされてフランのシャツを掴んだ人物の顔が見える。


「フラン!」


やっぱり、リュクレーヌだ。

ほらね?と言うようにフランはファントムの方を見た。


「どうして、ここが!」


「盗聴器だよ。会話を聞いてな。思い出の品が沢山出てきた。だから実家のどこかだと思ったが、フランは見ず知らずの場所だった」


実家にはフランも行った。調査もした。それなのに知らない場所と言うのは不思議だと思った。


「それでもって真っ暗。となればルーナエのこの鏡の中としか思えなかったんだよ」


真っ暗で何もない空間。そんな空間が現実世界にあるのか。そう思ったリュクレーヌが目星をつけたのはファントムのかつての住処、鏡の中。見事、的中していた。


「はは……はははは!すごいねぇ!」


ファントムはリュクレーヌの推理を絶賛した。


──この期に及んでそんな余裕があるのか?


リュクレーヌはスチームパンク銃を勿論持って来ている。銃で撃たれたら終わりなのに。


「でも、君たちの魂胆は分かっている。僕を撃とうとしているんだろ?じゃあ僕は撃たれなければいいだけだ」


だが、ファントムの方も馬鹿ではない。

躰を乗っ取っているルーナエの意図を知らないはずがない。

あのスチームパンク銃に撃たれた者がどうなるかくらいは知っていた。


「くそ……やっぱりルーナエの考えはバレていたか」


「どうせ、君たちは死ぬ。断言するよ。さぁ、かかっておいで」


ファントムが、くい、と挑発すうように手招きをする。

どちらが死んでも終わりが来る。

最期の死闘が始まった。

 


照準が定まらない。

いや、いつも通り戦えているはずだ。


それなのに──


「ほらほら!どうしたの!撃つのが怖い?」


標的の逃げる速度が速すぎる。せっかく合わせた照準もすぐにブレる。

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