きっと君なら来てくれる
ただ、フランは悪口を言っているだけじゃなかった。
「けど、それは僕が僕で僕として傍に居なきゃならないことでしょ?ルーナエさんになる必要は無いというか、むしろ逆効果のような気がする」
自分の意思。自分が自分としてやらなければならない事だと言う。弟ルーナエでなく、助手フラン・コンセルタとしてリュクレーヌの傍にいる事こそが、フランの望みだった。
「それに、僕には僕の戦う理由がある。マスカに囚われた魂を救うっていうね。これはマスカになっちゃったら出来なくなるでしょ?」
そもそも、マスカになってしまったらアマラとしての資格を失ってしまう。
それだけはフランにとってあってはならなかった。
フランには、アマラとして最後までマスカに立ち向かわなければならない。
その義務を放棄するなど、できない。
ルーナエの方を見て自身の意思と想いを強く、断言する。その強すぎる瞳に今度はルーナエが少しだけたじろいだ。
「わ、分かったよ……マスカになる気は無いんだね。そうか……」
ルーナエが視線を逸らす。
するとフランは「あぁ、そうだもう一つ」とまだ言いたいことがあるように付け足そうとしていた。
「こんな事をさ、ルーナエさんが提案する訳ないんだよね。僕をアマラで居させたくない奴のする事にしか思えない」
「……」
「ねぇ?ルーナエさん……いや、ファントム!」
正体なんて隠しても無駄だと言うように、フランは人差し指をルーナエ──いや、ファントムの方へと差し、断言した。
まるで、リュクレーヌがマスカを見破った時の動作と同じように。
ファントムは、やれやれと首を横に振ると、深いため息をついた。
ゆっくりとした動作の後、俯いたまま、ファントムの瞳だけがぎょろりとフランの方へと向く。
「気づいていたの?」
「勿論。その上で乗ったんだよ」
フランはニヤリと笑いながら言う。
これはフランの作戦だった。ファントムに弾丸を当てればいいだけの戦闘をする上でなら周りに人数が少ない方が圧倒的に楽だ。
とは言え、肝心のスチームパンク銃は手元に無いが。
ファントムは謎に余裕綽々なフランを見て、嫌悪感を覚えたのか、もう一度ため息を吐き出した。
「……バレたなら仕方ないね。まぁいいや。キミをこのままここに閉じ込めておけばいい」
一度両手を合わせ、パンと言う音を立て、その後両手を広がる。
そもそもここがどこか分からない。無限に広がる闇。手掛かりなど何もなかった。
それでも、それでもきっと──
「……リュクレーヌが絶対に来てくれる」
確信していた。
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