悪魔を消す方法
二人があれ程探していたファントムを倒す方法とは案外身近なものだった。リュクレーヌは鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をする。
「なんて、単純な……」
「だからこそ、ファントムはフランの魂を狙った。彼をマスカにする気だ。ちなみに自分に憑依できる仮面なんてとっくにないからね」
「アレはハッタリだったのか!何のために」
「フランの魂を食べてしまえばスチームパンク銃の所有権は誰にも移らない。フランを殺してもフランの魂を継ぐ来世のフランが所有権を持つことになるだろう。殺すよりも確実に、マスカにして彼の魂を葬りたいんだよ」
つまり、ファントムとしては、フランの魂が邪魔で堪らなかった。銃の所有権を持っているうちに消化して無かったことにしてしまいたいだろう。
だから、六月にフランを襲撃した際、彼を殺すことなくファントムはリュクレーヌとの手を切らせる事に注力した。
フランの傍に不死身のリュクレーヌが居ないとなれば、フランの魂を狙うのも容易になると踏んだのだ。
「だから、ファントムはフランを殺さなかったのか……いや、まてよ?フランもマスカレイドラビリンスに中てられているなら不老不死に──」
「残念ながらそれはちがう。強制乖離や魂が肉体に囚われる等の効力は銃弾に撃たれたファントムかマスカにしか効かないんだ。確かな証拠もある。ここに来た時にフランは魂だけがここに来た。兄さんと同じように肉体と精神が離れない状態になっていたら体ごとここにきているよ。」
副作用だけでは魂が不老不死にはならないようだ。
フランが以前ここに来た時には魂だけが来た。
これは既に肉体と魂が離れる──つまり死ぬことが可能である事を示している。
「じゃあ、俺は今肉体ごとここに居るってことか?」
「そうだよ。さて、僕の話はここまで。早くフランを見つけなきゃね」
最重要項目はフランがファントムをあの銃で撃ち、マスカレイドラビリンスの魔術をかければ全てが終わる。
その為にはまず、フランをファントムから救い出さなければいけない。マスカにされてしまう前に。
「出口は簡単。この崖から飛び降りればいい」
「分かった」
ルーナエは最低限の事を話した後に、この迷宮の脱出法を伝える。
リュクレーヌはこくりと頷くと青のインバネスコートをなびかせて背を向けた。
その様子を見て、ルーナエは心のどこかに魚の小骨でも刺さったような気持ちになる。
──このまま、兄さんを返して良いのか?
リュクレーヌが急がなければいけないことは分かっている。それでも──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます