師走の収穫

 


 

それから、宿を出て、馬車に乗り込み、事務所へと戻った。

早朝の外気も撫でるものから刺すものへと変わっていったことが分かるほど冷たくなっていた。十二月となっていた。

二人は十二月の二日の午前中に事務所へと到着し、調査を終了した。


帰って早々、リュクレーヌはソファに流れ込むように長くなる。フランは証拠品の入ったカバンをリュクレーヌ傍に、旅行鞄を生活スペースの方へと持っていく


「いやぁ、長い旅だった」


「お疲れ様」


フランが声をかける。リュクレーヌは証拠品の鞄に気づいて、早速中身を漁った。

寝転びながら、ルーナエの部屋にあったものたちを眺める。


「収穫は、日記と本。うん。まぁまぁなんじゃないか」


柔らかい笑顔で満足そうに頷いた。

フランは電話の方へと向かう。受話器を取り、ダイアルを回そうとしている手前だった。


「ブラーチさんにはもう連絡する?」


「そうだな、アイツも忙しいだろうし、早い事アポをとっておこう」


ブラーチに電話をすると、ちょうど時間があったらしく、すぐにでも向かうと返事をくれた。

有難い事だ。三十分くらい待つと、彼は白衣を纏い、事務所の敷居をくぐる。

リュクレーヌはブラーチを歓迎し、早速『悪魔の腸』をはじめとした魔術関係の学術書を手渡す。

ドスンと、重力がブラーチの腕にかかる。


「これが本。主に分からないところは魔術のところだな。ちゃんと分からないところをメモしてあるから、解析してくれ」


「あぁ、分かった。それにしてもルーナエはやけに珍しい本を持っていたんだな」


「あいつ、マニアックだから」


リュクレーヌが笑いながら言う。

ブラーチは手渡された証拠品の学術書を、一旦ローテーブルに置いて、一冊を手に取りパラパラとめくる。

十ページに一度か二度くらい、紙を千切って作られた小さなメモが挟まっている。


「ここ分からない」「どういう事?」「???」など抽象的ではあるが、どの部分が分からないのかは理解できるメモだった。

ブラーチは本を閉じ、ローテーブルの上の山に返した。


「少し時間はかかるがいいか?」


「どれくらい?」


「この量なら一週間くらいだな。念のため、信憑性があるものか、理論的に確認したい」


例え、学術書であっても、正しい情報であるかは検証したい。正に、石橋を叩いて渡るといったようにブラーチの検証は徹底的なものだ。


「なるほど。分かったよ。よろしくな」


となれば、こちらも安心して彼に本を預けることが出来る。

ブラーチは持っていた診察鞄の中に受け取った本を押し込んで、病院へと帰っていった。

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