悪人達



「それで、君も酷いもんだよ。ルーメン。あぁ、今はリュクレーヌだっけ?どっちでもいいや。キミは存在自体が悪だ。」


ファントムは指をリュクレーヌに突き付けた。


「キミの弟は、兄であるキミに嫉妬してマスカを作ったんだよ?自分がルーメンになるためにね。それはつまり、キミさえいなければルーナエは僕と契約する事なかったのにね。マスカという存在の元凶はキミなんだよ?」


「なっ……」


「ほんっとに、この世の人間たちはみんな屑だらけでボクは嬉しいよ」


「お前!」


「あぁ、キミはもう人間じゃなかったね。失礼。でもね、人間なんてみんな屑。それを自分の物差しで正しいって言い張るやつはもっと愚かだと思うんだ。この教祖様みたいにね?」


何度か足でいたぶっていたため原型をとどめていないミーナの頭部をファントムは蹴り飛ばした。


「だから僕は、この教祖様と逆の事を考えている。屑だけの世界を作り上げたいんだ」


背後にいたゴーレム──マスカが動き出す。手から光線のようなものを、地上の逃げ遅れた信者に向けぐるりと放った。


「つまり、正しい人間は要らない。」


放たれた光線は爆発し、その場にいた信者は跡形もなくなってしまった。

──このままでは、皆殺しだ


ただでさえ、ゴーレムと言う名前のマスカを増やされてアマラ軍は壊滅状態。


狼狽えるリュクレーヌに対して、フランがずいっと前に出た。そして、ファントムの方を強く睨みつけた


「さっきから聞いていれば……正しいとか悪いとか……人の行動ってそんな簡単に白黒分ける事ができるの?」


「何?どうしたの。あぁ、キミかい?キミはそうだな」


「正しいとか、正しくないとか……誰にも決められない事だろ!僕らは皆、命がけで戦っている、生きているんだ!それを、結果論で正しいか悪いか仕分けて何が楽しいんだよ!」


フランはファントムの言葉を遮って怒りをぶつけた。


「それなら、今の自分の心のままに……最後は自分の心を信じることしか出来なくなるに決まっているだろ!」


「でも、キミは自分を信じた結果が、あの都市伝説なんだよね」


「え?」


「よかったね。大人が馬鹿でキミに聞き耳を持たないままでいてくれて。ボクの存在がもっと早く知られてたら、もっと早くこんな状況になっていた。そうなれば人類は滅亡していたかもね。……それに、ボクはキミが僕に対してどう思っているかも知っているんだ」


「……?」


心当たりがない事を言われてフランの表情はみるみるうちに曇っていく。


「あぁ、スッキリした。うん。たくさん収穫もあったし、僕は帰るとするよ」


「あっ、待て!」


隙を見たファントムは上空の雲の中へと溶ける様に、去っていった。

──僕が、ファントムをどう思っているか?


分からない事を言われたまま、フランはその場に暫く立ち尽くした。

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